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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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部屋の構想とチャーハン



 数日をかけ基礎となる硬化岩を切り揃えたエルフェリーンは魔力回復の為にいつもよりも睡眠時間が長く、心配するクロとアイリーン。ビスチェとルビーにはよくある事らしく特に心配した様子を見せない。


「魔力を使い過ぎて半年ほど寝ていた長老を何度か見た事があるもの」


「私たちドワーフは種族的にあまり魔力が多くないですから……叔父さんは魔力炉の火が落ちてしまった時などは絶望したような表情で魔力を込めて、数時間は寝落ちしますから……」


 二人の話に魔力という不思議な力に異世界だなと思うクロとアイリーン。


「師匠だから二時間程度の仮眠で復活するのよ。そもそも、硬化岩を使わなくても基礎として使える石はあるわ。でも、そこはほら、師匠の拘りなんでしょうね」


「ふわぁぁぁ、そうだね。僕の拘りだよ~硬化岩は魔力干渉に敏感な石だからね。異変があればすぐに色が変わり地脈のずれにも反応するんだ。微細すぎる魔力には反応しないけど、床下に何かしらの生物が隠れていればその魔力に反応して居場所がわかるからね~。隠れる時は床下以外にした方がいいぜ~」


 ソファーから起き上がったエルフェリーンが大きな欠伸をしながら硬化岩を使うメリットを説明しながら笑う。


「明日からは地面を均して硬化岩を柱の場所に設置するからね。ああ、下水も繋げないとか」


「私はクロのマジックボックスに入れた木の水分を抜くわね。水分が入っているとサイズが変わるし、立てた後に変形するから確りと水分を抜くわ」


「私は細かい所の設計を続けますが、水回りに使うタイルや洗面台などは王都で購入するのですか?」


 ルビーがほぼ書き終わった設計図をテーブルに広げ、クロは立ち上がりキッチンへと向かいエルフェリーンが起きたらすぐに食べられるように用意していたスープに火を入れ、あらかじめ切っておいた食材と冷めたライスを炒め始める。


「そうだね。お風呂場のデザインは、」


≪ハイハイ! 私がデザインしたいです! ヒノキのお風呂も好きですが、可愛いモザイクタイルを張った洋風な感じも好きですし、石を張り詰めた露天風呂風やジャングル風呂とかもいいですね!≫


 クロがキッチンにいるので言葉の意味が通じずに頭を傾げる三名。


「うん、まあ、アイリーンに任せるよ」


≪やった! 相談に乗ってくださいね!≫


「はい、任せてください! 出来るだけ具体的にお願いしますね」


≪もちろんです!≫


 二人が笑い合いエルフェリーンとビスチェもその様子を見てほほ笑む。


≪そうすると私はルビーさんと話し合いで、ビスチェさんが木を乾燥させたら切りますね! 薪を使って練習した成果を見せます!≫


 魔力で生成した強度のある糸に小さな結び目を付け高速で動かし、薪を三枚卸しどや顔をするアイリーンを見ていたクロは中華鍋を煽りながらくすりと笑う。


「なんだか美味しそうな匂いがしてきたね。ニンニクと焦がし醤油かな?」


 エルフェリーンの言葉に鼻をスンスン動かす二人と、風通しのよい窓際で舟を漕いでいた白亜が顔を上げ辺りをキョロキョロと見渡す。


「キュウキュウ」


 クロを発見した白亜は窓際から飛び降りると小さな足を動かしキッチンへと向かい、キッチンにある背もたれのない椅子によじ登りクロの振るう中華鍋と首の動きをリンクさせた。


「本当に白亜ちゃんはクロさんが好きですね~」


「この香りに反応するのは理解できるわ!」


「うんうん、暴力的なまでの香りは胃を刺激するぜ~」


≪ニンニクと焦がし醤油にごま油の香りです! ゴロゴロとチャーシューを入れてほしいです!≫


 四人の会話がチャーハンへと向かうのは仕方のないことだろう。


「師匠、チャーハンとワカメスープです」


 エルフェリーンの前に置かれたチャーハンとワカメスープに、有り合わせの葉野菜に胡麻ドレッシングとラー油を数滴垂らしたピリ辛サラダに視線が集中する。


「これはどれも美味しそうだね~いただくね。はふはふ、美味い! 白米よりも僕はチャーハンが大好きだよ~ご飯に味がついているのが最高だね! あむあむ」


 チャーハンを口にして表情を溶かすエルフェリーンの姿にクロは無言で頷くが、服の袖をクイクイと引っ張られ振り向くと私の分はと言いたげな顔をするビスチェ。アイリーンとルビーからの視線も向けられており、白亜に至ってはテーブルに上りエルフェリーンの前で大きく口を開けている。


「お前らはさっき食べたでしょうが……はぁ、少しだけ作るから白亜も師匠の分を貰うなよ」


「キュウ~キュウ~」


 クロに顔を向けて尻尾を振る白亜。三名の乙女たちも満足げな表情で頷く。


 クロがキッチンへと戻りチャーハンを作り始めると、乙女たちは話を戻して家について話し始める。


「現状で決まっているのは吹き抜けで二階建て。屋根裏を広く取るので三階建てぐらいの大きさで二回には各自の部屋があり、キッチンは広くてカウンターを設置する。トイレはいいとして、お風呂はアイリーンさんの希望を優先して作ります。錬金室の横に鍛冶場を作り消音の魔法陣を入れ、お客さんが宿泊できる部屋を二部屋用意する。と、こんな感じの設計になりますね。ああ。暖炉を入れ忘れました」


 テーブルに広げた設計図を指さしながら説明するルビーに、チャーハンを口に入れ頷くエルフェリーン。二人もチャーハンを見つめながら頷き、白亜はせめて匂いだけでも楽しみたいのか口を閉じ鼻の穴を広げる。


「この家は倉庫として使えるように補強して要らない一回の天井を外しましょう。これからは暑さが厳しくなるし、女の子を外でゴリゴリさせられないわ」


「ありがとうございます。木陰でも今は涼しいですが、地下室のあるこちらの方が涼しいです」


≪地下の空気が上に登り、上の空気が地下へ下がるような仕組みがあれば涼しく過ごせますね≫


 アイリーンの言葉に目を見開くエルフェリーンはチャーハンを食べる手を止め飲み込むと口を開く。


「空気の循環……そうか! 前にクロが出してくれた団扇を使って風が流れる仕組みを作れば!」


≪それなら扇風機の方が便利ですよ。プロペラを使ってクルクル~≫


 魔力で生成した糸で三枚羽根のプロペラを作り宙に浮かせ回転させるとクルクルと回りエルフェリーンの顔にそよ風が吹き付ける。


「こ、これは大発明だよ!? この波打った形が空気を押しているよ! これを使えば下の冷たい空気を上に送れるし、逆に回せばその逆もできる! プロペラを入れた管を通せば各部屋に暖炉を置かなくても暖かい空気が送れるってことだよ! プロペラの回転を魔道具で動かせば……」


 エルフェリーンが腕を組み黙り込み思案し始めると、小皿にこんもりと持ったチャーハンが登場し歓喜を上げる乙女たちと白亜。


「暖炉から熱風を送るなら床暖も欲しいな」


 クロの言葉にチャーハンを口に入れたアイリーンが魔力で文字を生成し浮かせる。


≪床暖いいですね! 真冬でも床でゴロゴロしたいです!≫


「アイリーンがいつもいる場所は天井だろ?」


≪それでもゴロゴロしたい時があるんです~≫


 チャーハンを咀嚼しながらも会話ができるアイリーンと、クロは口を開け待っている白亜に冷ましながらチャーハンを餌付けする。


「クロ! 美味しいわ! おかわり!」


 小さな器を渡すビスチェと、申し訳なさそうな顔で「お、お願いします……」と申し出るルビー。


≪私も食べたいです! キムチチャーハンや高菜チャーハンにあんかけチャーハンとかも食べたいです!≫


 乙女たちの食欲に火がつき苦笑いを浮かべるクロ。


 第二第三のプニプニ王女が生まれる日は近いのかもしれない。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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