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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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硬化岩とミサイル



 屋敷より少し離れた草原で天魔の杖を掲げたエルフェリーンを見つめるクロとビスチェにルビー。アイリーンは罠に反応があり今頃は狩りの真最中だろう。


「ほら見なさい、天魔の杖を使って地面深くに魔力干渉しているわ。この辺りは竜脈の影響が強いから植物の力が強いのよ。若木のうちに私とクロが抜いてまわるから大きく成長しないけど、それをしなかったら数十年で森へと変わるほど力が漲っているわ。

 その大地の奥深くに師匠の魔力を浸透させて丁度いい大きさ岩を探しているのね。解りやすく言えば砂に手を突っ込んで石を探し回っているのよ。

 魔力の揺らぎが止まったわ。ここからは引き上げるわよ」


 天魔の杖を地面に触れさせるとエルフェリーンの姿は大人へと次第に身長が伸びて行き、女神を思わせるほどの金色の光を放つ姿へと変わると、足場一部が盛り上がりエルフェリーンもその足場ごと上へと持ち上がり五メートルほどの大きな丘が出現する。


「凄いですね! 地形が変わりましたよ!」


「ああ、小さな山ができたな……」


「草に覆われているけどまわりの土を剥がせば岩ね。この辺りの地下に多くある硬化岩よ。魔力に反応して色や硬度が変質するんだけど、師匠の魔力と反応しているからどんな色をしている楽しみね! 強い魔力に反応すれば金よりも煌びやかに変質すると言われているのよ!」


 ビスチェの解説を耳に入れているとエルフェリーンの姿はいつもの少女へと戻り丘の上に座り込み、慌ててクロたちが走り寄る。


「いや~疲れたね~」


「大丈夫ですか?」


 そう言いながらシールドを階段の様に変化させたクロが上り手を差し出すと、嬉しそうな笑顔を向けてその手を掴むエルフェリーン。


「えへへ、少し大きな石を探して掘り起こしたから疲れたぜ~クロ、おんぶ!」


「はいはい、ちゃんと捕まって下さいね」


 シールドの階段を下りはじめると、下ではビスチェがナイフを使い根が入り混じる土を払うと絶句する。


「凄い! 七色に輝いて見えますね!」


 ルビーの声に足を速めるクロはビスチェの横に辿り着くと、七色の光を漏らす岩肌に目を奪われる。


「この岩は魔力に応じて輝きを変えるからね。一部のエルフの里では宝石に加工され魔力を注ぎ御神体として祭っているところもあるんだぜ~ああ、あとは冒険者ギルドの魔力測定に使われたりもするね~」


「こんなに綺麗に輝くのは師匠の魔力が凄いから?」


「えへへ、そうだね。僕の魔力は神に近い事もあるからかな。ビスチェが魔力を通せば金色ぐらいには輝くと思うよ」


 エルフェリーンの言葉にクロとルビーは感心し、ビスチェはギギギと首を動かし「私じゃまだ無理よ……」と珍しく謙虚な事をいい肩を落とす。


「そうかな~あの頃よりも魔力量は増えているから行けると思うけどなぁ~。それよりも今は疲れたよ~クロ、クロ、何か食べたいよ~」


 背中から聞こえてくるお腹の音にクロは用意していたスティック型のチョコを開封すると背中へと向け手を伸ばし、お礼を言って受け取るエルフェリーンはポリポリと食べ始める。


「キュウキュウ」


 それを見た白亜が羨ましがりクロの頭へと着地し大きく口を開け、エルフェリーンはチョコでコーディングされたお菓子を口にいれる。


「頼むから頭の上で食べるのはやめような。師匠も頭の上にいる白亜に餌を与えないで下さいよ~ほら、頭にパラパラ食べカスが……」


「あはははは、多少はしょうがないよ~白亜だって気を付けて食べてはいるけどドラゴンの歯はギザギザで食べ溢しやすいからね~ほら、おかわりだよ」


「キュウキュウ~」


 嬉しそうにおかわりを食べ、クロの頭にもおかわりの食べカスが降り注ぐと何とも言えない顔になる。


「クロ先輩、私も欲しいです! 私も欲しいです!」


「ほいほい、箱を開けて中のギザギザに力を入れて開けるんだぞ」


 ルビーのお願いに魔力創造で応えるクロは新しい物を創造し手渡すと、笑顔で受け取りお礼を言うと落ち込んでいるビスチェに半分渡すと二人で食べ始める。


「硬化岩の魔力は次の日には抜けているから、このまま放置して帰ろうか。アイリーンも家で解体をしているかもしれないよ」


「そうね! 師匠と魔力量を比べる事自体がまだ早いわね! 早く家に帰って解体を手伝いましょう! あむあむ、おいちぃ~」


「ふふふ、ビスチェ先輩が子供みたいに、おいちぃ~って、ふふふ」


「ビスチェもたまには可愛い所があるよな……ん? キラキラが……おい、やめろ! 精霊魔法はシャレにならん! シールド!」


 顔を真っ赤に染めたビスチェのまわりには精霊が魔力を受け取り活性化したのかキラキラと光り風の渦が頭上に集まり、クロは慌てて全方位にシールドを張るとビスチェの瞳が輝き荒れ狂う風の渦に、吹き飛ばされるクロと背中に乗るエルフェリーンに頭の乗っていた白亜。

 風の渦に巻き込まれエルフェリーンと白亜は楽しそうな声を上げ、クロは絶叫しながらも新たなシールドで尾翼を作りシールドを安定させ一息吐くが目の前に迫る屋敷の姿にある種の絶望が頭を過る。


「このままじゃ屋敷に衝突する! おっ!? アイリーン!」


 眼下には解体作業をしたいてアイリーンがこちらへ向けて動き出す姿が見え、一瞬光り輝くと下半身を蜘蛛に変えて素早く屋敷に対して平行に駆け抜け、屋根からシールドミサイルと化したクロたちに糸を飛ばし空間に巨大な蜘蛛の巣を形成させる。が、勢いは落ちずにクロはシールドを強化し、白亜はクロの頭にしがみ付き、エルフェリーンはクロを含めた三名に耐久力を上げる魔術を重ね掛けした所で屋敷へと突っ込んだ。


≪何やら魔法を掛けていたし大丈夫かな? 心配だけど……≫


 下半身を人型に戻したアイリーンは後ろから走って来るビスチェとルビーが目に入り屋根の上から手を振ると、今度は半壊し風通りの良くなったクロの部屋から声が聞こえ耳を澄ますアイリーン。


「クロ! 白亜! 大丈夫かい?」


「きゅるるるる~」


 風通しが良くなった事もあり埃が流れエルフェリーンとアイリーンの視線が合い、二人は無言で頷くと床の抜けたクロの部屋から下を覗き込む。すると、鳴き声を上げる白亜を抱きしめ横になっているクロの姿が視界に入り、すぐに飛び降りると玄関のドアが開き走って来るビスチェとルビー。


「クロ!」「クロ先輩!」「きゅる~」


 ビスチェとエルフェリーンにルビーの声が重なり慌てて駆け寄ったビスチェは、横向きに倒れるクロの肩を揺すり意識がない事に絶句する。


「アイリーンは回復魔法! ルビーは安全確保! シールド!」


 エルフェリーンが指示をだし、天魔の杖を手に持つと四方と天井を支えるシールドを作り出し、ルビーは安全確保と言われたが何をしていいか解らずアタフタし、アイリーンは最大級の回復魔法を唱え始める。


≪エクスヒール≫


 アイリーンの回復魔法の影響でクロの体が輝き出すと、ビスチェは涙で視界が悪く目を覚ますクロに気が付かずその体を抱きしめる。


 あれ? 何だか温かくて……柔らかい?


 目を覚ましたクロの目の前には緑一色であり、これは目を覚ますとヤバイ奴だと本能で感じ取ったクロは気絶したふりを続けるが、間に挟まれた白亜には一瞬目を開けたクロに気が付いており、圧迫される状況下で脱出する為の一番簡単な方法を取る。


 ガブリ。


「痛った~~~~~~~~~」


 クロのお腹に噛みつく白亜。瞬時にその怪我はアイリーンの回復魔法中であり治るのだが、一瞬の痛みに声を上げて体を逸らしたクロは涙するビスチェと目が合い、更に涙の量を加速させるビスチェに、精霊魔法で吹き飛ばされた事など忘れて胸に顔を埋めていた事に対する罪悪感が募るクロ。


「何だか解らんがごめん!」


 その場で土下座するクロに呆気に取られる女性たち。


 白亜だけは仁王立ちで腰に手を当て何度も頷くのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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