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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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便利な生活




 エルフェリーンの転移魔法で帰宅したナナイとラライを見送り、クロたちは店番をしながらこれから建てる家について話し合っていた。


「基礎は僕が丈夫な石を用意するぜ~この辺りの地下には硬い石が埋まっているからそれを掘り起こして使う。柱や床や壁に使う木はナナイに調達を任せたから、窓ガラスは今ある物を使って足りないものはルビーに任せるね」


「はい、ガラス作りの基礎知識はありますが、たぶん王都で買った方が確実です!」


「自信満々に言うなよ……」


「いえ、できない事はできないと言うべきです。それよりも、釘が足りますか?」


「釘は木で作った方が錆びないしお勧めよ。ほら、ダンジョンで使った金槌を使って木に穴を開けるの。それに合うサイズの木を打ち込めば釘と同じよ」


「前はドランが設計図を引いてくれたけど、ルビーは設計図引けるかな?」


「そうですね……無理ではないと思いますが、複雑な間取りとかでないのならできると思います」


 ルビーは腕を組み不安な表情で応えると、クロはペンと紙に物差しをアイテムボックスから出しテーブルに広げる。


「これを使って書いてくれ。このL字の物差しを使うと書きやすいからな」


「ありがとうございます。こんなに上等な紙を使ってもいいのですか? それにペンもはじめて見る形ですね。インクもお願いします」


「ああ、インクは必要ない奴だな。真ん中の黒い所が芯で、ほらこうやって書けるから」


≪鉛筆とか懐かしいですねぇ。美術以外では殆ど見なくなりましたよ≫


 鉛筆を一本手に取り眺めるアイリーン。ルビーはクロが手にした鉛筆を見つめ黒く線が引かれた事に驚く。


「インクが必要ないペンとか凄いです! 便利です! これは確実にヒット商品になりますよ!」


「そうか? 鉛筆は師匠やビスチェにも渡しているし、オーガやゴブリンの村でも使っているぞ」


「知らなかった……もしかして私が知らないだけで他の工房ではインクなしのペンを使っているのでしょうか?」


 ワナワナと震えるルビーにエルフェリーンが口を開く。


「それはクロがプレゼントしたからだね。ものを書くのに便利だし、文字を教えるのに使うように配ったんだよ。文字が使えれば鳥を使った文通や、文字だけを送る魔術なんてものあるからね。緊急の時とか便利なんだよ」


「なるほど……クロさんの魔力創造の凄さが解りますね……」


「うんうん、クロが一家に一台いれば便利だよ。そんなクロはどんな部屋がいいのかな?」


 エルフェリーンに話を振られ紙に落書きをしていたクロは今朝から考えていた事を口にする。


「部屋は床が丈夫ならそれでいいとして、キッチンを広くしてカウンターが欲しい。ほら、バーテンとか憧れるだろ。他にはオーブンをもう少し大きくして、地下の冷暗所を階段にして、冷蔵庫も大きなものに代えてほしいかな。後は皿が出しやすい食器棚と……水道があれば……」


 クロがいうように水道などの設備はなく大きな水瓶にビスチェが魔法で水を追加し使っており、蛇口のようなものはなく木製の蓋を開け柄杓で組み上げて使っているのだ。


≪クロ先輩の魔力創造で蛇口を作って取り付けるのは?≫


「その手があったか! ほらほら、これが蛇口だ! これを水瓶に取り付けてシンクの横に置けるようにして欲しい!」


 蛇口を魔力創造で作り出したクロはそれをエルフェリーンに見せ説明する。


「これは便利かもしれませんね。いつでも好きなだけ水が勝手に出て来ると考えれば使えると思います」


「そうかしら? 水なんてこうやって魔力を使えば簡単に……そっか、クロが使うからか……」


「そうだね。生活魔法ぐらいの水量だと料理には足りないよね」


 生活魔法はある程度魔術が行使できる者なら使え、魔術の基礎である。その魔術の基礎である生活魔法で水を出す事ができる量は一度にコップ一杯ほどであり、料理に使用するには少なく魔力量を考えると効率が悪い。ビスチェが使う精霊魔法ならコップ数百杯を一度に行使でき水瓶も簡単に満杯になるのである。


「魔力創造で水を出すのはダメなのですか?」


「ああ、それも可能なんだが米を研いだり、味噌汁を作ったり、洗い物をするとすぐに魔力枯渇になるからな。料理は以外と水を多く使うんだよ」


「私はあまり料理をしないので……」


 軽く凹むルビーにクロは笑いながら口を開く。


「アイテムボックスに水を汲んで置いてもいいんだが、水を入れた瓶が重くてな」


「よし、蛇口は採用だね。この蛇口はワイン樽とかにも使えるのかな? 使えるとしたら便利になるだろ」


「酒場に売り捌けば喜ぶかもね~」


≪オーガたちも喜びそうですね~≫


 以前、オーガの村の酒盛りでナナイがワイン樽の上を破壊して開けている姿を思い出したアイリーン。


「そうだな。今度持って行こうな」


「他にも便利なアイテムを隠してそうね~」


 蛇口をアイテムボックスに入れたクロにジト目を向けるビスチェに困った顔をしながらピーラーとテフロン加工されたフライパンに、チョッパーを魔力創造すると目を輝かせる女性たち。


「これは何というアイテムなんだい?」


「これはフライパンよね?」


「これはいったい? 刃が付いていますが……ああ、解りましたよ! 敵の頭をスライスする武器ですね!」


「何それ怖い!! ルビーが持っているのは野菜の皮を剥く便利な道具です。師匠が持っているのは野菜を細かく切る道具です」


 怖い事をいうルビーに正解を伝えると四方から観察しはじめ、同じくエルフェリーンも蓋を開けて仕組みを観察する。


「私が持っているフライパンもただのフライパンじゃないわよね! そうね……投げたら帰って来るとか?」


「フライパンに何を求めているんだよ……それは焦げ付かないフライパンです。目玉焼きとかはがれにくい時あるだろ。それがないんだよ」


「ええ、それって普段からフライパンの手入れを確りすれば済む話でしょ」


「確かにそうだが、熱する前に卵を割り入れてもくっつかないんだからな。高音で熱したフライパンだと白身のまわりがカリカリになるだろ。だが、弱火でじっくりと焼き上げた目玉焼きはまわりの白身も硬くならずに半熟で焼けます! もちろん、炒め物や玉子焼きに餃子とかもくっ付きません!」


「へぇ~便利なのね……私的には投げて帰って来るフライパンがいいわ!」


「…………………………」


≪何だか通販番組みたいですね!≫


 アイリーンが嬉しそうに糸で文字を描き、クロはアイテムボックスから大根をルビーに渡し、エルフェリーンには魔力創造したキュウリを一本持たせる。


「ほうほう、これは便利ですよ! 皮が楽しく剥けます!」


「野菜も粉々になったね! でも、こんなに粉々にする料理なんてあるのかな?」


「粉々にしたキュウリならサルサにできますね。トマトと玉ねぎにレモンを搾ったソースにして焼いた肉にかけたり、トルティーヤに乗せて食べたりですね。たまには餃子もいいかもな~キュウリは入れませんが小さく切る手間は省けますね」


「見て下さい! 料理が苦手な私にもこんなに上手く剥けましたよ! これは爆発的に売れる気がします!」


 これから建てる家の事を話し合っていたのに、いつの間にかクロが暮らしていた日本の便利グッツへと脱線する会議。お腹が空くまでこの話し合いは続くのだった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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