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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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白夜と朝食



 翌朝になり多くのおにぎりとお味噌汁に葉野菜のお浸しや玉子焼きやウインナーをキッチンカウンターに並べ、ビッフェスタイルにセッティングし終えるクロ。暖炉の火を確認し薪を追加しながら昨日の事を考えていた。


 師匠……エルフェリーン……名前で呼ぶのがこんなにも恥ずかしいとは高校生かよ! はぁ……惚れた弱みとはではいわないが、ああも真直ぐ自分を見つめられると照れるな……

 それに、僕以外も娶れとか……

 俺自身、モテたとかの経験はないし、行為を向けてくれているだろうという認識は多少なりともあるが、どうしろと………………シャロンとか男同士だし……白亜はまだ小さいから良いとしても、クランが積極的に嫁になるとか口にしているし、ルビーだってウイスキー飲み放題=結婚とか……計算式が安直すぎる……


 暖炉の前に屈み一人思考の海に飛び込んでいるクロ。その後ろでは階段から降りてきたキャロットと白亜に白夜がクロに声を掛けるが聞こえていないのか暖炉を見つめ続け、白夜に抱っこされていた白亜が飛び出しクロの背中へと抱き着く。


「うおっ!?」


 白亜が抱き付いた勢いそのままに前転しそうになり両手を付いて堪え、暖炉へのダイブを阻止して横に転がったクロは背中からお腹へと移動し甘えた鳴き声を上げる白亜のドアップに「危ないから暖炉の前で飛び付くのはダメだぞ」と注意し、それを見ながら肩を揺らすキャロットと白夜。


「白亜さまは何度もおはようと声を掛けたのだ!」


「そうよ~今のは無視したクロが悪いわね~白亜は暖炉の火ぐらいじゃ火傷しないし、亜神になったクロも……大丈夫じゃないかしら?」


「疑問形で暖炉にダイブさせようとするのはやめて下さい。朝食はビッフェ形式で料理を皿に取って好きなだけ食べて下さい。ああ、でも、昼食の屋台料理は珍しいものが食べられると思うので食べ過ぎには注意ですからね」


 お腹に乗せた白亜が落ちないように身を起こしたクロは白亜を床に置くと鳴き声を上げて走り去り、キャロットと白夜もお腹が空いているのかクロの説明を聞きながら既にキッチンカウンターに並ぶ朝食へ足を向けている。


「亜神になったら暖炉ぐらいの火とかが無効になる耐性でも付くのかね……」


 立ち上がり暖を炉見つめ呟くクロ。もちろん試したりはしないが、火傷の恐れがないと思うと揚げ物や蒸し料理などを積極的にできるなとひとり納得し、白亜たちのお味噌汁の用意をしにキッチンへ足を向ける。


「おにぎりが食べ放題なのだ!」


「キュウキュウ~」


「あら、そうなの。なら私もサケという魚が入ったおにぎりにしようかしら」


 ビッフェコーナーにはこの世界の文字で簡単な説明書きされたプレートがあり、おにぎりは鮭やイクラに昆布やツナマヨにチキンライスや混ぜご飯などがずらりと並ぶ。

 玉子焼きもカットされ、その横には大量のウインナーがこんがりと焼かれ、小鉢にはほうれん草や小松菜を使ったおひたしと胡麻和え、キンピラに浅漬けなどの小鉢などもラップで蓋がされている。


「お味噌汁も出しますので食べて下さいね」


「わかったのだ!」


「キュウキュウ~」


「あら嬉しいわね」


 おにぎりを山のように皿に乗せたキャロットが炬燵に向かい、白亜もトレーに玉子焼きとウインナーにおにぎりを二つ乗せ炬燵を目指し、白夜はおにぎり五つと玉子焼きをピラミッドのように積み上げ小鉢全種類を乗せた移動する。

 その後を追うように豆腐とネギとワカメのお味噌汁を持ち追い掛けるクロ。


「いただきますなのだ~」


「キュウキュウ~」


「ふふ、いただきますとは懐かしいわね」


 両手を合わせて叫ぶキャロットと白亜に白夜が微笑みを浮かべ、クロはお味噌汁と炬燵テーブルの上に乗せながら口を開く。


「白夜さんはこの世界ではない場所から来たと聞きましたが、どんな世界から来たのですか?」


「ん? ええ、そうね。クロがいた世界の神をしていたわ」


「自分がいた世界ですか? それって地球の?」


「ええ、日本の小さな島国で祭られていた竜神ね。私がこの世界に来る頃には島に人が住まなくなり寂しい日々が続いてね。そんな時にこの世界の女神ベステルさまから誘われたのよ」


「神さまが神さまをスカウトしたのですね」


「ええ、そうね。誰もいない島を守るのも寂しかったからこっちの世界へ渡り世界を創造する所から見てきたわ。自然環境を整え、最初の七人を作り、そこからエルフや獣人に人族を作り、発展する世界はとても美しかったわ。生き物も多種多様な変化を生み出して今の世界になったわね」


 昔を懐かしむように話す白夜はそう言い終えるとお味噌汁を口にし、味が懐かしかったのか薄っすら涙を浮かべる。


「食べているのにすみません」


「いえ、いいのよ。白亜がお世話になっているし、お婿さんになってくれるのでしょう?」


「キュウキュウ~」


「白亜さまはクロを離さないといっているのだ。私もクロのお嫁さんになるのだ! おにぎりが美味しいのだ!」


 言うだけ言っておにぎりを頬張るキャロットに白夜が笑い白亜も嬉しいのか鳴き声を上げ、クロはと言えば顔を引き攣らせる。


「あれあれ? キャロットさんもお嫁さん候補なのですか? クロ先輩のモテ期が止まりませんね~」


「ん……私もお嫁……ふわゎぁぁぁ」


「誰でも手を出すエロ魔人ね……」


「あら、ママとしてはビスチェも参加すれば良いと思うわよ」


「………………………むぅ」


 アイリーンたちが階段から現れキャロットの叫びを聞いていたのかジト目を向け、キュロットの言葉に頬を膨らませるビスチェ。クランはまだ眠いのか大きな欠伸をしながら洗面所へと向かい、アイリーンはビッフェ形式の朝食に気が付き「食べ放題ですね!」とテンションを上げる。


「これっておにぎりよね? 中身の具が書いてあるのは良いわね!」


「ママもはしゃがないでよ! 私が恥ずかしいわ!」


「あら、恥ずかしいのはクロの前だからでしょ! ほらほら、お勧めはどの具なのかしら」


「むぅ……」


「私のお勧めは鮭ですね~ツナマヨとかも美味しいですよ~」


 母に弄られ頬を膨らませるビスチェに代わりアイリーンがお勧めを口にしておにぎりを皿に乗せ、その横に玉子焼きとウインナーを添える。アドバイスを聞き鮭のおにぎりを取ったキュロットはアイリーンと同じように盛り付け炬燵へ向かい、ビスチェも適当に取りながらキッチンでお味噌汁を人数分用意しているクロに視線を合わせ更に頬を膨らませる。


「ん……玉子焼きの色が綺麗……」


 洗面所から戻ったクランも同じように盛り付け炬燵へ向かい、階段から下りて来る足音に視線を向けロザリアやドランにルビー。シャロンとキョルシーの姿があり会釈をして炬燵に急ぎ、クロもお味噌汁をビスチェたちに運び新たに現れたロザリアたちの分を用意しに速足で動き出す。


「自分で取る形式とは珍しいのじゃ」


「うむ、これなら嫌いな料理を選ばずに済むのう……」


「玉子焼きは甘いのです?」


「クロさんが作る玉子焼きは甘みもあって美味しいからね。キョルシーはどのおにぎりにするかな?」


「うんとね。うんとね……いっぱいあって迷っちゃいます!」


「昨日気に入っていたツナマヨのおにぎりもあるからな~」


 キッチンからクロのアドバイスが入りキョルシーは目を輝かせてトングを持ちツナマヨを選び皿に乗せ、シャロンは上手に皿に乗せられたことを褒め、ロザリアとドランは孫を見るような目を向け微笑む。


「昆布のおにぎりに、グワラさんにタトーラさんもおはようございます」


「はい、おはようございます」


「すみません! 急いでおにぎりと玉子焼きにウインナーを奉納させて下さい!」


 ゆっくりと階段から降りてきたグワラを抜かしおにぎりコーナーへ走る聖女タトーラ。クロもお味噌汁も奉納すべく神々用にお味噌汁を用意する。


「朝から騒々しいぜ~わぁ~おにぎりがいっぱいだね~」


 階段からゆっくりと降りてきたエルフェリーンはおにぎりコーナーが視界に入り目を輝かせ、その姿にお味噌汁をトレーに乗せながら微笑みを浮かべるクロへ視線を向けるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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