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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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亜神とカオス



「結局のところ神さまになったとして、何かしなきゃいけない事とか義務とかってあるのですか?」


 クロの疑問にエルフェリーンは首を傾げ、片膝を付いているヴァルは黙って空気に溶け消え、竜王たちも腕を組んだり顎に手を当てたりと考え込む。


「私は神ではないが海の以上に気が付いた時はすぐに娘たちと鎮静に向かうな。誰かさんが列島を起伏させ大津波を起こした際にはバブリーンたちが大層苦労したらしいがな」


 海流がジト目をエルフェリーンに向ける。


「それは僕が原因じゃないからね! アレはエルファーレが魔力暴走するクロを助けるために流した魔力を……ああ、あれは僕も原因があったね。クロが錬金釜として作用し助けるためにシャロンとメルフェルンがドレインをしながらパイプ役を買って出てくれ、その余剰魔力を受けたエルファーレが魔力を使った結果だね……僕がもっと気を付けていればクロや仲間が危険な事に巻き込まれなかったね……」


 エルフェリーンの姉妹であるエルファーレが住む島での出来事を思い出しシュンと反省の色を見せるエルフェリーン。クロたちもその当時を思い出したのか各々に口に出し、島々が繋がり陸続きになった南の島やそこに住む褐色エルフやフェンリルを思い浮かべる。


「あの時はシャロンの性別が変わって大変だったよな……」


「そ、それは……でも、貴重な体験でした……」


 頬を赤らめるシャロン。男性化したメルフェルンは何故かドヤ顔である。


「メルフェルンちゃんが凛々しくなったのは面白かったわね~」


「ええ、あのメルフェルンならお婿に迎えても良いと思えたわ」


 カリフェルとキュアーゼから視線を向けられたメルフェルンはゾクリと体を震わせ近くでソファーに身を預けているメリリの後ろへとそそくさを移動し隠れ、アイリーンが口を開く。


「あの時のシャロンちゃんは凄く可愛かったですね~ん? クロ先輩が神さまになったらそういう事もできるのですかね? ほら、神さまって何でもありですよね?」


 アイリーンの言葉に訝しげな瞳を向けるクロ。エルフェリーンや竜王たちも首を傾げる。


「そうだ! 直接聞けばいいじゃないですか!」


「ああ、女神シールドか」


 アイリーンのクロは女神シールドを展開すると竜王たちからは感嘆の声が上がり、すぐに吹き出しが現れ文字が躍る。


(少し見ていたけど、もうバレちゃったのね。亜神への昇進おめでとう)


 吹き出しに浮かぶ文字にクロの眉間にしわが寄り、女神ベステルを模したシールドの絵が笑顔へと変わり吹き出しを更新する。


(亜神への進化について説明するわね。亜神は現地神とも呼ばれる存在で……

 その前に神という存在を説明するわ。神とは人でありながら多くの奇跡を起こして人を救ったり、神々に奉仕したり、世界を変えるほどの偉業を行ったものが神として死後も存在を許された者。最近ではダンジョン農耕神がそれに該当するわね。エルフェリーンが開発した流行り病の特効薬なんかも該当するわ)


「ん? それって、もし僕が死んだら神さまになるって事かな?」


(ええ、その資格は十分にあるわ。でも、貴女の場合はハイエルフという特殊な種族だからね。下手な神よりも優秀だし、寿命も神よりも長いわよ。それに殺そうと思っても殺せる存在の方が少ないわ)


 両手の平を上げてやれやれという顔をする女神ベステルの肖像画に竜王たちは肩を揺らす。


「確かにな。エルフェリーンを滅する事ができるのは白夜ぐらいか?」


「竜王と呼ばれているがエルフェリーンを倒すイメージが一切湧かないですね」


「逆に解体されて素材にされるのがオチだな……」


「私だって勝てるか可能性があるってだけで戦いたくはないわよ。それにエルフェリーンを敵に回したらここにいる者たちも敵になるわ。連炎ちゃんがやられたように精霊王の力を使われたら私だって……」


 白夜がクロへ目を細め視線を向け、隣に座る白亜が鳴き声を上げる白夜の腕を引く。


「キュウキュウ!」


「ふふ、大丈夫よ。敵にはならないと言っているでしょ。どうせなら仲良くしてクロには白亜のお婿さんになってもらいましょうね~」


「キュウキュウ~」


 尻尾を振り喜ぶ白亜に、クロはどうしたものかと視線を女神シールドに向ける。


(あら、いい事じゃない。クロが亜神になったし、寿命は魔力と比例するから千年以上は地上で生きるでしょ。その後には神として天界で好き勝手やればいいと思うわよ)


 しれっと文字にする女神ベステル。ただ、その文字が躍るとエルフェリーンはクロへとダイブする。


「うわっ!? し、師匠!!」


「えへへへ、クロとはあと千年も一緒にいられるぜ~これからはもっとクロに甘えて楽しい生活をするぜ~」


 頬をほんのり赤くしながらクロに抱き付くエルフェリーン。クロは戸惑いながらも目の前に飛んできた文字に顔を引き攣らせる。


≪ロリコン先輩……≫


 その文字を手で掴み丸め近くの暖炉へと飛ばすが外れ、走り出した小雪が口でキャッチして暖炉へとペッと吐き捨てる。


(そうそう、話が逸れたからいうけど、亜神になったクロは異種族との交配も可能になったわよ。エルフだろうが、ドワーフだろうが、サキュバスだろうが、アラクネだろうが子供を作る事が可能だからね~もちろん、ハイエルフもね~)


 その文字に目を輝かせるエルフェリーン。他の者たちも視線をクロに向け、向けられたクロは更に顔の引き攣りが加速する。


「クロ! 良かったね!」


 抱き付いていたエルフェリーンから満面の笑みでそう口にされ、クロは引き攣らせていた顔がエルフェリーンの笑顔に釣られたのか軟らかい表情へと変わり、白亜がクロの背に抱き付き鳴き声を上げる。


「ほら、ビスチェも行かないとエルフ枠がクランに取られるわよ」


「なっ!? ママは何てこというのよ!」


「ん……任せる……」


「任せるじゃないっ!?」


 ソファーから立ち上がったクランを後ろから羽交い絞めにするビスチェ。


「クロ先輩と結婚したら生涯ウイスキー飲み放題ですね……アリです!」


 ルビーはルビーらしくウイスキーに釣られクロとの結婚生活を思い浮かべる。


「うむ、クロと結婚すればブランデーも飲み放題じゃの!」


「うふふ、お酒だけではなくお料理もですねぇ」


「クロさまが亜神へと至り多くの種族を導くのですね……何と尊いのでしょう……」


 ロザリアはルビーと同じく酒に引かれ、メリリはお腹が目立つほど食べた後なのに食欲を開花させ、聖女タトーラは祈りの姿勢でクロを見つめる。


「ほらほら、シャロンくんも頑張って下さい!」


「そうよ。シャロンはサキュバス枠でクロ争奪戦に参加しないとね~一人で家出してまでクロに会いに来た程でしょ」


「で、でも……」


「亜神になったクロなら前みたいにシャロンを女性にもできるかもしれないわね。ふふふふふ、それならメルフェルンも男性にしてもらえば……」


 アイリーンとカリフェルから背中を押されたシャロンが顔を真っ赤にして俯き、キュアーゼはメルフェルンの男性モードを思い出して顔をニヤつかせ、メルフェルンはといえばソファーの裏に座り込みガタガタと震える。


「エルフェリーンがいいのなら私もいいよね!」


「むっ! エルカジールと僕とは全然違うからね~クロは絶対に僕を選ぶぜ~」


「何をっ! 私の方が絶対に良い女だよ! ほら、顔立ちだって私の方がお姉さんだ!」


「何を言っているのかな! 僕の方が絶対的にお姉さんだ! 胸だって大きいもん!」


 エルフェリーンとエルカジールの罵り合いに、どちらも同じ顔で同じ身長で同じ体型だろうと意見が一致する傍観者たち。


 クロからエルフェリーンが離れたこともあり、そこへ飛び込む小雪。へっへと息を漏らし尻尾を振る姿にカオスになってきたリビングでの癒しを求め、白く手触りの良い毛並みを撫でるのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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