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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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カツカレーと神からのオーダー



「ん……カレーは最強……」


「ライスで食べるのが良いよな。あむあむ……」


 クランとフランがカレーを口にし満足気な表情を浮かべ、キャロットは既に三杯ほどおかわりをしたのだが空の皿を手にキッチンカウンターへ走り笑顔で「おかわりなのだ!」と元気に宣言する。


「複雑な味わいは他の料理も合ったがカレーは別格ね」


「俺もここまで完成度の高い料理を食べたのは初めてだ……人化していなければここまで大胆かつ繊細な味を感じることはできない……カレーとは最強だ……」


「バブリーンたちが自慢していたカレーが、これほどだとは……」


「上に乗っているカツと呼ばれるサクサクした衣をまとった肉も美味しいです。この黒いソースと呼ばれる形容しがたい味もカレーと混ざり奥深さが増し、これを食べてしまうと竜で食事をしようとは思えなくなります……」


「竜の姿で食事をする時は生のまま齧りつくだけでしたから……人族がこれほどまでに複雑な味を作り出すとは恐れ入る……」


 七大竜王たちもカツカレーを食べ驚愕しながらもおかわりを続け、キッチンでは足りなくなったフライを七味たちが新たに揚げ始め、クロは足らなくなったライスと福神漬けを魔力創造で創造する。


「ねえ、メイリーリンはいつもこのような美味しい料理を食べているのですか?」


 二杯目のカレーを口にするメヌエットの言葉にメリリは微笑みを浮かべる。


「姉さん、私はメリリです。その名は捨てたのでメリリと呼んで下さい」


「そ、そうね……クロさまが作る料理はいつもこれ程までに美味しい料理を作るのかしら?」


「うふふ、クロさまの作る料理はどれも美味しいですねぇ。特にカレーなどの煮込み料理は美味しいです。他にもローストビーフと呼ばれる低温調理した肉料理や魚を生で食すことができる料理などは珍しさもありますが、頬がロケ落ちるかと思うぐらいに美味しかったですよ。揚げたての天ぷらなども美味しいですし、なりよりケーキやプリンにチョコレートパフェは至高ですねぇ」


 うっとりとした表情で以前食べた料理を思い出すメリリに、メヌエットは一部引っ掛かる部分があったのか疑問を口にする。


「魚を生で食すと言いましたか?」


「うふふ、クロさまは魚を生で食す方法を知っておられ、安全に食べる為にアイリーンさまの浄化魔法を使いお腹が痛くならない方法を取っているのです。生の魚は姉さんが思っている数百倍は美味ですよ。神々すらも虜にしたそうですから」


「神々すらも……」


 カレーを食べる手を止めたメヌエットは麻雀終わりに聖女タトーラが神託という名の注文を神々から受け、リビングの隅に設置された祭壇にカツカレーを捧げ光に包まれ消える光景を目にし、それが真実なのだろうと察する。


「メヌエットよ、クロは料理だけではなく酒も作っておるのじゃぞ」


 ロザリアと組み麻雀をしていた事もあってかフランクに話し掛けるロザリア。メヌエットも麻雀の楽しさを丁寧に教えてくれたロザリアを信用しているのか微笑み浮かべる。


「お酒まで作る事が出来るのですか?」


「うむ、クロは米を使いどぶろくと呼ばれる酒は仄かに甘く飲みやすいのじゃ。まあ、ウイスキーやブランデーも香り高く美味いのじゃがな」


「ワシはクロに日本酒と呼ばれるコメの酒の作り方を教わり、神が水田を貸し与えて下さったのう。ゴブリンたちの村で米を作り、その米から酒を作り神々に奉納しておる。残った命は米と酒造りに生涯を費やすことに決めておるぞ」


 ドランの言葉に竜王たちからも視線を集め、神から貸し与えたという単語に興味を持ったのだろう。


「ドラン殿がいう酒は済んだ水のごとく透明な酒だな。甘みと辛みがありながらもスッキリと喉の奥に消える美味い酒出会ったぞ」


「どの料理にも良く合って美味しかったわね」


「昨晩も生の魚にオイルを掛けた料理を提供して頂きましたが、ドラン殿のお酒が良く合いました」


 竜王たちからの評価にドランが静かに目を閉じ感動していると空気の読めないキュロットが口を開く。


「あら、生のお魚には白ワインも良く合って美味しかったわ。きっとこのカレーにも良く合って美味しいはずよ」


 その言葉に一瞬眉をピクリと動かすドランだったが、今食べているカレーに日本酒は合わないと口を開かずに奥歯を噛み締める。


「僕はカレーにはキンキンに冷やしたビールの方が合うと思うぜ~少し辛みのあるカレーにシュワシュワとしたビールは最高だと思う」


「私もビールの方が合うと思うな。でもほら、この白く甘い飲み物良く合うよ。クロが態々カレーに合う飲み物まで出してくれたんだよ」


 エルフェリーンとエルカジールはビールの方が合うと口にし、竜王たちは昨日飲んだ味と喉ごしを思い出し思案する。


「うふふ、ラッシーですね。ヨーグルトと呼ばれる乳を発酵させて作った物に砂糖や果汁を入れて作ります。前にお手伝いして作り方は覚えています」


 会話の流れが変わりキュロットに眉間に深い皺が入り、エルフェリーンとエルカジールも流れ的にクロがビールを出してくれると期待していたのかガクンと肩を落とす。


「昨晩あれだけ飲んだのですから昼から飲むのはやめておきましょうよ。夕食には先ほど話していた生の魚を使った料理や天ぷらを出しますから、今はカツカレーを食べて我慢して下さい」


 クロに釘を刺され更にガクンと肩を落とす三人。ルビーもこっそりとウイスキーの瓶をアイテムバックから取り出そうとしていたがその手を止める。


「それはアレか? 寿司という料理が食べられるのか?」


 水流から期待に満ちた瞳を向けられお刺身を出そうと思っていたクロは一瞬戸惑うも、「そうですね」と口にし、カツカレーのおかわりに動いた聖女タトーラはキッチンカウンターまであと少しの場所で光が降り注ぎ、膝を折って手を合わせる。


「はい、わかりました。はい、必ず……クロさま、オーダー入りました!」


「オーダーって、アイリーンが仕込んだな」


 神からの神託が毎日のように下りる聖女タトーラにアイリーンが入れ知恵をしたと気が付き視線を向けるクロ。アイリーンはカレーを吹き出しそうになるが目の前に座る竜王たちに粗相があってはならないと両手で口を押えて堪え飲み込む。


「ふぅ……危なく聖女さまに窒息死させられるところでした……」


「それは自業自得だろ……はぁ、ん? なあ、鼻からカレーが出てるぞ」


 クロの指摘にアイリーンは慌てて自身に浄化魔法を掛け、顔を赤くしながら最後の乙女心を振り絞る。


「鼻からカレーは出ませんよ~えっと、クロ先輩は神託の内容を聞いてきた方が良いと思いますよ~」


 話題を逸らすべく膝を付いて祈りの姿勢を取る聖女タトーラを指差すアイリーン。クロは「それもそうだな」と口にして聖女の下へと向かい、床に置いた皿を手に取るとカツカレーのおかわりを盛りキッチンカウンターへと置く。


「おかわりを盛りましたよ」


「ありがとうございます。オーダーなのですが、特上の寿司と天ぷらはエビやキス? を使った物を用意せよとのことです。それとカレーにはレモンサワーかハイボールが合うと神託を受けました」


 そう口にしながらカツカレーのおかわりを受け取りリビングへと戻る聖女タトーラ。クロはその報告を受け夕食のメニューが決定し、今夜も飲み会になるのかと若干呆れながらもリビングから聞こえる声に耳を傾けるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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