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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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メヌエットに麻雀を教えよう



 聖女が二巡連続で天和をあがり全員からジト目を向けられ代わりにカリフェルが入り、牌の積み方とツモリ方だけ教わったメヌエットはロザリアと共に賽を振る。


 親が決まり、ドラ表示牌を開け、手持ちの牌を取りながら配牌を並べ終えるとロザリアが耳打ちしながら数字と字牌を教え、牌を捨てるドラン。


「ドランが捨てた牌は字牌の中でも方角を示す牌なのじゃ。メヌエット殿は南家なので南という牌を三つ集めるだけでひとつの役となるのじゃが」


「次は私がツモってくればいいのですね」


「うむ」


 牌をツモり引いて来た牌を入れて連番を作り不要な牌を切るメヌエット。


「そうじゃな。こことここが入れば良いのじゃが」


「三つ集めるか、連続の数字を作るかすれば良いのですね」


「うむ、先ほど聖女の手配をよく見ておったのじゃな。最後のひとつになったらリーチを掛けると良いのじゃ。麻雀は役がないとあがれないのじゃが、リーチは特別な役で先に話したように千点棒を場に置きあがれば戻ってきて、更にドラの裏を捲り点数が上がる可能性もあるのじゃ。

 初心者は役を覚えるのが大変なのじゃが、リーチを掛ければまず役があるので安心じゃな。ああ、それと捨てた牌で他者から上がるのは禁止なのじゃ」


「確かフリテンですわね」


 妖艶な笑みを浮かべ牌を捨てるカリフェル。メリリは終始笑顔で牌をツモり捨てて行く。ドランは視界に入る竜王たちの麻雀講習をチラチラ見ながらも捨て牌の確認を怠らない。


「これは運の要素が強そうですね。ここに入ればと思うのにその先の牌や、必要ない字牌が集まります」


「うむ、その必要の無い牌だけを集めた役もあるのじゃ。麻雀は運の要素が大きいのは先ほど聖女が見せたようにあり過ぎても楽しめないのじゃが……」


 二連続で天和をあがった聖女タトーラは炬燵席を離れキュアーゼやシャロンたちと一緒にキッチンカウンターで作業をするクロやフランにクランを見つめお茶を楽しんでいる。


「うふふ、やっと来ましたねぇ。リーチです」


 微笑みを浮かべ場に千点棒を置くメリリ。三名の視線が集まり捨て牌から当たり牌を推理するのだが、捨て牌の多くは字牌でリーチ前の数字ぐらいしか参考にならないだろう。


「一発で振り込みたくはないからのう」


 そう言いながらツモり自身の手を崩して牌を捨てる安全を図るドラン。


「アレも手じゃな。リーチを掛けた一巡で当たれば一発という役が付くのじゃ。リーチを掛けたら裏ドラものる可能性もある事を考えれば、一手遅くなっても安全を優先すべきじゃな」


 牌をツモり確認するメヌエットだが安全な牌はひとつもなく、ロザリアに視線を向けるが好きな牌を切ればいいじゃないといった表情を浮かべ、迷いながらも浮いている牌を捨てメリリに視線を向ける。


「ふぅ……何だか緊張しますね……」


「ふふ、その緊張感があるうちは楽しめるわよ。安牌を増やしてくれて助かるわ」


 そういいながらツモった牌をツモ切りするカリフェル。


「うふふ、一発ツモです。リーチ、一発、ツモ、三色、満貫です」


 メリリが一発ツモであがり笑みを浮かべ点棒を受け取り麻雀の流れを覚えるメヌエット。ドランは親だったこともあり他よりも高い点数を支払い、子であるメヌエットとカリフェルも二千点を払い親が移動する。


「次はメヌエット殿が親なのじゃ。親はあがれば点数が多くなるが、今のように子のツモなら支払いが多くなるのじゃ。それと親に限っては連続であがり親を継続させることも可能なのじゃ」


「それはつまり、親で点数を稼ぐことができれば勝つ可能性が高くなるということですね」


「うむ、聖女のように親の時に連続であがるのは重要なのじゃ」


 牌を裏返し皆で混ぜ牌を積み、賽を振るメヌエット。牌をツモり手配を確認して牌を切る。手配自体は安手に見えたが字風の東が二枚あり、更にドラ表示牌が北でドラが東という東が一枚揃うだけで、ダブ東、ドラ3という満額確定という熱い手牌であった。


「あら、怖いわね……」


 ドラ表示牌が北という時点でカリフェルはその危険性に気が付き早上がりを決め、手元にある発で泣く準備に入り、メリリもその危険性を感じながらツモり手元にある東は最後まで捨てずに済ませようと思案する。


「ワシだけ点数が下がったのう……」


 自慢の髭を弄りながら牌をツモるとニヤリと口角を上げるドラン。


「カンじゃ」


 その言葉に視線が集まり二萬がドランの右に移動され、更にドラ表示牌が増えたことで絶句する一同。ドラ表示牌には一萬が現れ、カンしたすべてがドラという熱い展開に表情を崩すドラン。


「これは面白くなったのう」


「うむ、ドラン殿に振り込めば満貫が確定するのじゃ……ここは素早く上がりたいのじゃが……」


 まだ一巡だというのに熱い展開を見せる卓にアイリーンが気が付き唇に手を当て指差し竜王たちに視線を走らせ、竜王たちもアイリーンからの視線とサインに黙って頷き視線を向ける。


(見て下さい。親のメヌエットさんの手配はあと二巡で聴牌テンパイです。東がなければダブ東ドラ3。ドランさんはカンしたドラが4枚あるので、こちらも満貫です。恐らくですがカリフェルさんとメリリさんがいては東が泣ける状態ではないと思うので、ここからはメヌエットさんが東を引けるか、ドランさんが先に上がるかの勝負になりそうですね~それにカリフェルの手は……)


 アイリーンが竜王たちに糸で文字を浮かべ説明し熱い展開の卓へ視線を集めるのだが、リビングへ漂い始めたカレーの香りにキャロットと白亜が反応し声を上げる。


「カレーの香りなのだ!」


「キュウキュウ~」


「おお、バブリーンたちが自慢していたカレーの匂いなのか。複雑な香りが胃を刺激する」


「本当に人化していると匂いも敏感になって胃が動くのを感じますね」


「クロ先輩のカレーはどれも美味しいので楽しみにして下さいね~」


 漂うカレーの香りに竜王たちも反応しているとビスチェが畑から戻り体を振るえさせ炬燵へと入り、それに気が付いたメルフェルンが温かいお茶を持ち届ける。


「ありがと、お昼はカレーね……メヌエットさんはもう麻雀を覚えたの?」


「ロザリアさまが横に付き指導しながら始めたようです。いま面白い展開ですよ」


「面白い? あら、ドランのドラカン……ドランのドラカン……ぷぷ」


 ひとりウケるビスチェにメルフェルンは冷たい視線を向けるが、それを耳にしたカリフェルも静かに肩を揺らし、ドランが牌を切りながら何とも言えない表情を浮かべ、メヌエットが牌をツモりロザリアの眉がピクリと上がる。


「リーチ!」


千点棒を場に置き宣言するメヌエット。


「あら怖いわ。親のリーチに勝負しようとは思わないわね」


 安牌を切りその場を凌ぐカリフェル。メリリも同様に安牌で凌ごうと考えつつツモるが、手牌は聴牌し、手牌にはピンズの一通と発が二枚にピンズ両面待ちという勝負手。あがれればホンイツが確定し、リーチを掛ければ裏ドラも期待できる場面。ただ、東が危険牌であり、発も場に一枚も出ていない終盤ということもあり眉間にしわが寄るメリリ。


 先ほど満貫をあがり点数が浮いていますが親の姉さんがあがればマイナス一万二千点……ドランさまにあがられても暗槓アンカンなので満貫は確定。最悪は跳満もありえる。ここは安手だろうカリフェルさまに振り込み場を流すという手も……

 捨て牌から考えて姉さんは東と何かの対子待ち。ドランさまは萬子の中盤と後半、私にピンズが集まっている事を考えるとカリフェルさまにはソウズが集まるはず……

 ここで何を切るかによって、この勝負が決まる気がしますねぇ……


 メリリが手に取った牌を捨て声が上がる。


「ロン!」「ロン!」


「はぁぁぁぁぁぁ!? だ、ダブロンとかっ!」


 二人の牌が倒され、東待ちのメルフェルンが笑みを浮かべあがり。国士無双、東待ちのカリフェルも口角を上げ、麻雀卓にぐったりと倒れるメリリ。


「見事に箱ったのう……」


 顎髭に手を当て呟くドランなのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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