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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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メヌエット



 ヴァルの状態異常で回復したエルフェリーンたちが部屋から起きて来るとクロたちは急いでパンを焼きアイテムボックスから焼きたてのオムレツを提供し、竜王たちも新居へと現れ一緒に朝食を取りこれからの予定を確認する。


「僕は食後にメリリのお姉さんを呼びに行くからね~」


「メリリさんのお姉さんをですか?」


「うん、本当は夕方のうちに連れてこようかと思ったけど、メリリに会うか聞いてからじゃないと筋が通せないだろ。竜王なんてのがいっぱいいて、すっかり忘れてね~メリリは会うと約束してくれたからね~」


 食後のお茶を飲みながら皆に伝えるエルフェリーン。

 メリリは生まれながら肌の色や目の色が違い忌子として国を追われた過去があり、その後は冒険者として活躍し、今は亡きカイザール帝国の貴族に雇われラルフとロザリアからその貴族の不正を正すために自ら伯爵を捕らえ、巨大イナゴ討伐に流れで参加し、今に至っている。


「メリリさんは大丈夫なのですか?」


 クロがお茶のおかわりを入れながら心配そうにメリリへ視線を向け、メリリは微笑みを浮かべながら口を開く。


「うふふ、今の私がどれだけ幸せか伝えるだけで大丈夫だと思います。昨晩もそうですがここでの食事は大変美味ですし、この炬燵という心まで温めて下さる居場所を姉に自慢したいと思います」


 炬燵のテーブル部分を優しく撫でながら口にするメリリに、話の話題はそこなのかと思いながらも王女でありながら国に捨てられたという事実を知っていたクロはなんとも言えない表情を浮かべる。


「うむ、炬燵は良い物だのう。外は雪が降っているというのに足と腰が温かく保てるわい」


「ドラン殿の言う通りだな。この炬燵という居場所は寒い地域の民を心から癒す可能性を秘めている。まあ、俺が守護する国は火山帯だから必要ないが、人化すると寒さを感じるから炬燵の重要性は理解できるぞ」


「火を使わずに温かさを逃がさないよう布で覆い足を温めるとは発想が面白いです。上をテーブルにすることで食事もスムーズにできますね」


「出たくなくなるのが問題だけど心地の良い居場所というのは理解できるわ。ここに座っていたら自然と眠くなっちゃうわね」


「キュウキュウ~」


 白夜の言葉に隣で座る白亜が甘えた鳴き声を出し、優しくその頭を撫でる。


「ですが、炬燵の凄さはそこだけではありません! 炬燵は家族とのコミュニケーションが取れるのはもちろんですが、麻雀やカードゲームなどをするのにも適しており決闘の場としても、」


「おい、そこ、嘘を教えるな! 仲良くカードゲームをする場として使いなさい。昼食はカツカレーを用意しているが嘘つきにはカツ抜きだからな」


 立ち上がり拳を上げ力説していたアイリーンはその手をスッと下げ反論をすることはなく炬燵へと戻る。


「マージャン? カードゲームはいくつか知っているがマージャンとはどんなものなのだ?」


「麻雀は奥深いゲームだぜ~牌と呼ばれる数字や絵が描かれたものを使って役を作り、点数を競うゲームさ。エルカジールは麻雀した事あったかな?」


「ん? 私は初めて聞いたよ。やり方さえ覚えれば誰にも負けない自信はあるね!」


「あら、それなら私たちもやり方を覚えるから一緒にやりましょうよ」


「キュウキュウ~」


「麻雀は高く積むのが楽しいのだ!」


 複雑なルールを覚えるのを諦めたキャロットと白亜に取って麻雀牌は積み木でしかなく、炬燵を掃除する際に欠けた牌が数個見つかるのも多くその殆どは首まで炬燵に入るメリリが発見する。


「ルールはアイリーンがいれば大丈夫だろうから、師匠はメリリさんお姉さんを迎えに行きましょうね」


 炬燵テーブルを裏返し麻雀マットに率先してしていたエルフェリーンに釘を刺すクロ。あからさまに不満な表情を浮かべるが炬燵から出て約束を果たすべく天魔の杖をアイテムボックスから取り出すエルフェリーン。


「じゃあ、迎えに行ってくるぜ~クロはお茶の用意をお願いね~」


 手をひらひらさせ転移の門へ入るエルフェリーンに会釈で応えるクロなのであった。







 アイリーンが牌の説明を竜王たちにしていると玄関から現れるエルフェリーン。その後ろには澄ました顔をしながらも怒っていますという意思が籠った瞳をクロに向けるメルフェルンに、メイド服という服装と褐色の健康的な肌にショートボブのメリリに似た顔立ちの女性が最後に入り一礼する。


「この子がメリリのお姉さんでメヌエット・フォン・サマムーン。双子のお姉さんでいいんだっけ?」


「はい、メイリーリンを、メリリを保護して下さり感謝いたします」


 深々と一礼するメヌエットに

 クロたちも軽く頭を下げ、メリリはといえば炬燵に入り視線を向け同じように一礼すると視線を麻雀牌へと向けツモる。


「うふふ、ツモです。リーチ、一発、ツモ、七対子、ドラ四、裏二、三倍満、六千、一万二千です」


「がぁーっ!? 東二局で箱ったっ! ああ、もうっ!」


「東一局でワシに振り込んだのに、無駄にカンをしたのが悪かったのう」


「親さえくれば天鳳で上がれるのに……」


 卓を囲んでいたメリリとドランと聖女にビスチェはビスチェの持ち点がなくなり終わりを迎え、いつの間にか近くに寄り麻雀卓を見つめるメヌエット。


「姉さんも麻雀に興味がありますか?」


「ええ、何やら楽しそうなゲームをなさっているので……」


「今回はドランさまが一着で、私が二着です。聖女さまが親になる前にビスチェさまの点棒がなくなりましたので、」


「もう一勝負よっ!」


 二人の話を遮り人差し指を立てて再戦を希望するビスチェ。


「いやいや、その前に姉妹で話し合うことがあるだろ。ビスチェも熱くなったら必ず負けるんだから一度落ち着いて薬草畑を見てきたらどうだ」


 その言葉を発したクロへ殺意の籠った視線を向けるが、「そうね」と一言だけ口にして立ち上がると上着を手に取り外へと向かう。空いた炬燵には「失礼します」とメヌエットが足を入れ温かい炬燵を初体験し「これは素晴らしいものですね」と口にする。


「炬燵はメリリさんも気に入っていますよ」


 そう言いながらお茶を用意するクロ。


「うふふ、我々ラミアに寒い冬は天敵です。この炬燵さえあれば長い冬も安全に越せるというものです」


「それには同意です。雪というものを初めて見ました……転移という伝説の魔法を目にし、更に雪や極寒を体験させてもらい驚きが続いております」


「うふふ、なら、もっと驚くような事を教えますねぇ。あちらで麻雀の講習を受けている方々は七大竜王の方々です。失礼がないようにして下さいね」


 ギギギと首だけを動かしアイリーンに麻雀のやり方を教わる竜王たちへ視線を向け、白夜に手を振られたメヌエットはぎこちなく手を振り返す。


「昨晩は一緒にお酒を飲み楽しみましたが噂を聞くよりもずっと常識ある方々です。私としては連炎さんの方が……」


 ジト目を向けられお茶を口にしていた連炎が噴き出しそうになるのを堪えの見込み、きっとあの人も七大竜王に連なる者なのだろうと理解する。


「教えながら打ちますので一局やってみますか?」


「ええ、ルールを覚えるのはやってみるのが一番です」


「それなら我が後ろについて教えるのじゃ」


 ロザリアがメヌエットの隣に座り麻雀が開始され、聖女タトーラが賽を振りその出目に訝し気な視線を向ける一同。


「あっ、ツモです……あの、その、すみません……」


 牌が配られたと同時に上がる聖女タトーラの天和に頭上から光のシャワーが振り注ぐのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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