思い出すエルフェリーンとエルカジール
日も落ち盛り上がりを見せる七大竜王の歓迎会はキョルシーと白亜が眠り、二次会の雰囲気を迎えていた。
シャロンはキョルシーを連れ二階の部屋へと白亜を抱っこするキャロットと向かい、それをフォローするキュアーゼとグワラ。ビスチェとフランとクランも七大竜王という存在に緊張していたのか眠気を覚え先に二階へと移動し、残った者は炬燵やリビングのソファーやキッチンカウンターでお酒を片手にクロの料理を楽しんでいる。
「ワインも美味いがビールとういうのか。この軟らかい鉄の器に入ったビールが最高に美味いぞ。喉を通るシュワシュワとした感覚がやめられん。もちろんドラン殿の作った酒も美味かったぞ」
「私はこのガツンとしながらも香り高いウイスキーが好みだわ。このチーズと良く合うわ~」
「甘めな酒がどれも美味しく感じるな。バブリーンやエルファーレから酒の情報は受けていないが、果実を使った酒はどれも美味い!」
「自分はこの輝くワインとピンク色したワインが好みです。黒く厚い雲から落ちる雷のような色合いも美しい……」
「皆が勧めるお酒も美味しいけど私はクロが作ったというどぶろくというお酒が美味しいわね。不思議な風味と甘さのある味が好みだわ。これはどの料理にも合うし、さっき食べた生のお魚にも合って作り方を教えて欲しいぐらいよ」
七大竜王が自身の口に合った酒を炬燵に入りながら語り合い、白夜はクロが作るどぶろくが好みだったようで既にひと樽飲み干している。他の竜王たちも酒豪なようで多くの瓶や缶が空き、それを集める聖女タトーラと小雪。
「クロの酒や料理にも驚いたが、この軟らかい鉄の入れ物も不思議だ。これほど薄くやわらかに作り酒を保管するとは恐れ入る」
「それに軽いです。普通の鉄とは違う合金なのでしょう」
「酒を入れてもサビていないし、鉄臭さがないのがいいわね」
アルミ缶を手に水流や夜光に雷華が話し合い今まで見たことのない鉄の容器を話し合い、それを聞いていたほろ酔い気分のアイリーンが口を開く。
「それはアルミ缶ですね~アルミは軽くて丈夫でサビないので液体や料理を入れて長期保存できるんですよ~レトルト食品とかもアルミを使っていると思いますよ~」
「レトルト食品?」
水流が代表して口にすると追加のお酒を運んできたクロがその場で魔力創造をしレトルトのカレーを創造する。
「おお、それが魔力創造なのだな」
「魔力を使って物を作り出すレアスキル……」
「ふふ、まるで神の使う創造と同じですね……」
レトルトカレーを炬燵の上に置くとクロからレトルトカレーへ視線を向け、手に取って確認する竜王たち。鼻をスンスンとさせ匂いが漏れていない事を確認し、液体が入っているがサビがない事などを確認していると、炎帝がその封を開けてカレーの香りが漂いスプーンを入れ口に運ぶ。
「これも美味い! 冷たいが複雑な香りのスープ? の中に小さな肉や野菜が煮込まれているぞ!」
炎帝が開封したレトルトのパックからカレーの香りが漂い、各自で開封してスプーンを入れ口に運ぶ竜王たち。
「それは温めて食べるレトルト料理なのですが……冷めていると重く感じませんか?」
「確かにドロリとしているが、これはこれで美味いぞ! この複雑な味はビールと良く合う!」
「多少の辛みはあるが果実を使っているのか甘いですね」
「スパイスを多く使っているのか複雑な香りをしています」
「これはカレーという料理ではないか?」
海流が口にした言葉にアイリーンが「正解です!」と両手を上げて叫び、今日は珍しく酔っているなと思うクロ。
「念話でバブリーンたちから散々美味しいと自慢されたが、思っていたよりもだな……」
「それはレトルトカレーだからですね~美味しいレトルトカレーもありますが、カレーはクロ先輩が作る方が何倍も美味しいですよ~」
「何倍もは言い過ぎだろう」
「いえ、クロ先輩のカレーはお母さんが作ったくれたカレーよりも美味しいです!」
「クロのカレーは美味しいのは確かね。あれほど多くのスパイスを使って味がまとまるのは凄い事よ」
「うむ、口に入れた瞬間、鼻に抜ける香りと辛さには驚いたのじゃ。カツを乗せて食べるのも美味しいのじゃ」
アイリーンにキュロットとロザリアもクロのカレーを褒め始め明日はカレーをリクエストされるなと思っていると、「なら明日はカレーだね~」と口にするエルフェリーン。
「ギギギギギ」
七味たちが手にトレーを掲げ現れ大皿にはカットされた果物が並んでいるのだが、剥いた皮で山々や川に海などを表現し目を奪われる七大竜王たち。ドランやロザリアにアイリーンもその果物の盛り付けには驚きの視線を向ける。
「おお、凄い完成度だな」
「ギギギギギ」
(皮を剝いて捨てるだけだともったいないので絵として表現した)
一味からの念話に「そうかもしれないが、これだともったいなくて手が出せないかもな」と笑って答えるクロ。
「その通りですね。紅葉した山々のように美しいです」
「うむ、水面に映る紅葉をオレンジの皮で再現しておるのじゃな」
「葡萄でグラデーションを付けた海とは面白いのう」
「確かに手が出しづらいわね」
皆で七味たちが作り上げた絵画のようなフルーツ盛り合わせを見つめているとエルフェリーンとエルファーレが互いに頷き合い、フォークを手にしてメロンとリンゴを互いに刺し口に運ぶ。
「うん、とても美味しいぜ~」
「こっちの果実はシャクシャクとして歯応えがいいよ」
二人の行動に目を見開き驚く七大竜王だったがキュロットも同じようにフォークで口に入れ表情を溶かし、ドランやロザリアもそれに続く。
「うむ、やはりこの葡萄は別格なのじゃ」
「こっちのマンゴーと呼ばれる果物も蕩けるような味わいじゃわい」
キラキラと輝いて見える果肉を口にして表情を溶かす姿に、白夜が手を出し他の竜王たちも手を出し口に入れ驚きの表情を浮かべ盛り合わせが消えて行く。
「こんなにも美味しい果物があるとは……」
「こっちのは食べたことある味がするが味が濃く感じるぞ!」
「これ程甘くするには何か特別な方法があるのかもしれませんね」
「うふふ、どの果物も美味しいですねぇ。炬燵でミカンもいいですが蕩けるような味わいのマンゴーやメロンもとても美味しいですねぇ」
果実を前に驚いている竜王たちに混じってメリリが口を開き、すっかり忘れていたエルフェリーンとエルカジールは互いに視線を向け合い苦笑いを浮かべる。
「七大竜王なんてのがいるから、すっかり忘れていたよ~」
「そうだね。イレギュラーがあって忘れちゃってたね」
二人の言葉に何かあったのか視線を向けるクロ。メリリは洋ナシを口に入れ左手を頬に当て微笑む。
「今日はメリリに会いたいという人をサキュバニアのお城に待たせていたんだった」
その言葉に洋ナシを飲み込みエルフェリーンへと視線を向け口を開くメリリ。
「それはお見合いでしょうか? お見合いなのですね?」
グイ、グイグイとエルフェリーンに詰め寄るメリリ。エルフェリーンはお酒も入りいつもよりもグイグイ来るメリリに、助けを求めるべくエルカジールへと視線を向けるが目を閉じてイチゴを口に入れ味わう姿に唖然とするのであった。
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