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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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巨大な雪だるま



 キャロットが大きな雪玉を転がし、その上で玉乗りのように足を進めキャッキャと喜ぶ白亜。更にそれをハラハラと見つめるグワラ。後方では連炎がもっと大きな雪玉を転がし古龍の力の差を見せたいのだろう。


「いや~凄いですね~見上げるほどの雪玉とか……」


「自重の重さで壊れないのが不思議だよな……」


 雪玉の大きさは小さい方でも5メートル、大きい方も15メートルはあるだろうか、ちょっとしたアパートサイズの雪玉が完成した。雪玉を元の姿に戻った連炎が慎重に持ち上げ下でドランとキャロットが押さえ乗せる。


「大きなバケツが要りますね~」


「業務用のバケツでも小さいく見えるな……」


「クロ先輩の魔力創造なら創造する大きさとかイメージで変えられたりしませんか? 私は糸の長さや強度をある程度イメージしますし、粘着性を求めたり伸縮性を出したりイメージでしますけど」


「イメージか……そうだな、やってみる。あの雪だるまに乗せるのなら赤いバケツで、大きさもこれぐらいか?」


 いつもの魔力創造とは違い確りとそのサイズをイメージするクロ、魔法陣からは一般家庭のお風呂よりも大きな赤いバケツが現れ目を輝かせるアイリーン。


「できるじゃないですか! これって大きなケーキや無駄に大きいお寿司とか食べられますよ!」


「ケーキは想像できるがお寿司をそのまま大きくしてもきっと美味しくないぞ」


「そうですかね? 巨大なお寿司に抱き付いて食べたら美味しいと思いますが……」


「寿司は芸術作品と一緒で米には空気を入れて口の中で解れるとかあるだろ。米粒自体が拳のように大きかったらそれこそ食べづらいし、酢飯だけでお腹いっぱいになるな。ワサビの場所とか罰ゲームだと思うぞ」


「うっ……それは嫌かも……でも、特大お子様ランチとか食べて見たいですね~身長よりも大きなエビフライやクッションになるようなハンバーグとか」


「ハンバーグなのだ!」


「キュウキュウ!」


 アイリーンの発言を耳にしたキャロットと白亜がクロへと振り向き目を輝かせ、頭部を乗せ終えた連炎が魔力創造した巨大なバケツを頭部に乗せる。


「ハンバーグは今晩な。それよりも雪だるまの顔と手にマフラーとボタンを作らないとだな」


「ボタンは鍋の蓋とかを付けるのじゃ。金や銀のボタンに見えて綺麗に見えるのじゃ」


 ロザリアが手にしているのはおしるこを作った時の鍋の蓋で、それも有りだなとクロはアイテムボックスから鍋を取り出しキャロットと白亜に渡す。


「目はどうしましょうか。個人的には左右で色違いの方がカッコイイと思うのですが」


「アイリーンが厨二病なのは理解してるが普通でいいだろ」


「普通といいますが、ロザリアさんや私の瞳は赤いですし、ビスチェさんは緑ですし、エルフェリーンさまは金色ですよ。黒い瞳のクロ先輩の方が少数派では?」


 その言葉に腕組みをしながら確かにと思うクロ。瞳の色は種族によって色が異なる事が多く、エルフは緑、ヴァンパイアは赤、サキュバスはピンクや薄い紫をしている事が多い。キャロットやドランはオレンジ色の瞳をしており、連炎はそれよりも赤く虹彩は炎のように燃え動いて見える。


「そうだな……金と赤にするか?」


「無難な決定ですね~エルフェリーンさまと私たちに配慮したのですね~」


 図星を突かれながらも黄色と赤色のフリスビーを魔力創造するクロ。ドラゴンの姿をしている連炎の腕に乗りボタン代わりの鍋の蓋を取り付けたキャロットと白亜。クロはシールドを螺旋階段のように展開し上へと登り、アイリーンに目の位置を指示されながら取り付け、巨大な赤いマフラーを魔力創造すると連炎が爪に引っ掛けないよう注意しながら雪だるまの首に掛ける。


「最後は手ですが、あの大きさの雪ダルマに合うサイズだと木の枝ではなく木その物を刺さなくては不格好ですよね……」


「うむ、それだと刺した瞬間に雪ダルマが崩れる危険もあるのじゃ」


「手はなしでも良いと思うぞ。これだけ大きな雪だるまだし崩れたら可哀想だろう」


 クロが地上に戻り改めて巨大な雪だるまを見つめる。その大きさはドランが魔化したサイズよりも大きく、屋敷で休んでいた乙女たちも完成に気が付いたのか集まりキャッキャと喜んでいるほどである。


「これをゴーレムにすれば、ちょっとした国ぐらいなら落とせそうね!」


「冬限定のゴーレムとか需要ないわよ」


 キュロットの好戦的な意見を否定するビスチェ。


「ん……無駄に……大きい……」


「無駄とかいうなよ。でも、でかいよな……」


「うふふ、とても大きな雪だるまができましたねぇ。イチゴのシロップをかけたら美味しそうです」


「ん……かき氷……美味しい……」


「おいおい、この寒さなのにかき氷とか……炬燵に入って食べたら美味しいかもな!」


 巨大雪だるまを前にフランとクランにメリリはかき氷を連想する。


「本当に巨大ですね……」


「これも連炎さまの偉大さを証明するにはピッタリです!」


「俺様よりは小さいが、人族は面白いものを作るのだな」


 初めての雪を使った遊びに連炎は満足げに見つめ、サフランとクーペもその巨大さに目を丸くしながら喜ぶ。


「本当にでかいのう……竜王国は雪が降らんから妻にも見せてやりたいのう……」


「キャロライナさまは寒がりですので、こちらに来るのは嫌がりそうですね」


「うむ、ゴブリンの村の方は暖かいからのう」


 ドランとグワラも巨大な雪だるまを前に会話を楽しみ、聖女タトーラは両手を合わせて祈りを捧げる。


「何と巨大な……これもクロさまがもたらした奇跡なのですね……」


「いえ、奇跡ではなくキャロットや連炎さんたちの努力ですよ」


 冷静にツッコミを入れながらも巨大な雪だるまの出来に満足するクロ。


「師匠ならゴーレムとして動かすことができるかな?」


 ポツリと漏らしたその言葉にビスチェの長い耳がピクリと動き口を開く。


「動けたとしても数センチね。頭の大きさと体型からして、前進した瞬間に頭後ゴロリと落ちるわね」


「それはありそうですね~首をマフラーで縫い付けても頭部の重さと胴体の丸みを考えると、雪だるまはゴーレム向きじゃないですね~」


 身も蓋もない会話に何とも言えない気持ちになるが、白亜とキャロットに小雪やオモチたちは巨大雪だるまのまわりを走りテンションを上げている。


「フェンリルも雪だと庭を駆けまわるのですね~」


「オモチたちは特に走り回るよな。子供の頃とか雪が降るとテンション上がったな」


「台風の時もですよね~」


 クロとアイリーンが小学生時代を思い出していると巨大雪だるまが一瞬影に覆われ、また雪雲かと空を見上げると見慣れない巨体が視界に入り思わずシールドを展開するクロ。他の者たちも臨戦態勢に入り小雪やオモチは空に向かい吠え、メリリやアイリーンは瞬時に魔化し、ドランやグワラは口をポカンと開けていたがすぐに片膝を付いて頭を下げる。


「おいおい、またかよ……」


 クロが顔を引き攣らせているとゆっくりと旋回したそれが大地に両足を付け、巨大な瞳が雪だるまへと剥くのであった。





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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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