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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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帰郷とおしるこ



「シャロン兄さまはずっとお外を見ています……」


 サキュバニア帝国の一室ではキョルシーが心配そうに窓辺に佇むシャロンを見つめ傍にいるキュアーゼに話し掛ける。話し掛けられたキュアーゼは兄を心配する妹の頭を優しく撫でて抱き上げ膝の上に座らせる。


「ふふ、シャロンはエルフェリーンさまの帰りを待っているのよ。キョルシーも今度は一緒に行くでしょ?」


「はい、行きます! クロにありがとうをします!」


 ソファーに座るキュアーゼの膝の上で元気に手を上げ答えるキョルシー。


「そうね。シャロンは早くクロたちの下に行きたいのよ。キョルシーもそうでしょ」


「はい、行きたいです! 早くクロにお礼を言いたいです! はっ!? それで窓からエルフェリーンさまが転移してくる中庭を見ているのですね!」


「そうよ~キョルシーは頭が良いわ~それにほっぺがプニプニで気持ちが良いわね~」


 後ろからギュッと抱き締め頬同士を擦り付け、くすぐったいのか笑い声を上げるキョルシー。


「ん? あれって……」


 窓から外を見ていたシャロンは曇り空の中から小さく見える影に気が付き目に魔力を集中させる。背にはサキュバス特有のコウモリの羽があり金色の髪を靡かせ地上へと舞い降り、慌てて警備兵が槍を構えるがすぐに構えを解いて膝を付く。


「えっ、母さん!?」


 窓辺で上げた声にキョルシーとキュアーゼが反応し膝の幼女を抱き上げ窓辺へ駆け寄り、シャロンの視線の先へと目を向ける。


「母さまが帰ってきました!」


「本当に久しぶりに帰って来たわね。もう一年以上も新しい国の基礎作りをしていたのでしょう?」


「エルフェリーンさまからはそう聞いています。少しやせたかな……」


 視線の先で兵士たちと言葉を交わす姿を見ているとシャロンやキョルシーに気が付いたのか手を振り、次の瞬間には羽ばたき空へと駆け上がりベランダへと舞い降り近くにいたメルフェルンがカギを開けて頭を下げる。


「母さま!」


「私の可愛い子供たちが元気そうで良かったわ」


 そう言いながらシャロンを含めでハグをするカリフェル。キュアーゼに抱かれていたキョルシーがカリフェルの大きな胸で溺れそうになるが、薄っすらと涙を溜めて微笑む母親姿に苦笑いで抱き締められるシャロン。


「もごもご……もごーーー」


 胸から聞こえるもごもごという叫びに慌てて離れるカリフェル。顔を赤くして息を吸い込むキョルシー。


「あら、ごめんなさいね」


「苦しいです! 母さまは優しいけど大きなお胸で溺れちゃいます!」


 キョルシーの叫びにアタフタするカリフェル。シャロンは何度も体験しており複雑そうな表情で何度も頷き、キュアーゼは笑いながら肩を震わせる。


「カリフェルさま、どうぞこちらでお寛ぎ下さい」


 メルフェルンが温かいお茶を入れに向かいメイド長がソファーへと誘導し、久しぶりの家族団欒を過ごすのであった。







「簡単にカマクラを作るとか言わなければ良かったですね~」


「前は師匠が魔法で簡単に雪のブロックを作ってくれたからな……はぁ……腰が痛い……」


 木箱に雪を詰めては押し固め、それを取り出しカマクラに乗せて積み上げ雪で隙間を埋める。完成間近だったカマクラもあったのだが調子に乗った白亜が固める前に天井に乗り見事に崩落させ、中で作業していたメリリが驚き壁に激突し半壊させたのである。

 メリリと白亜は無事助け出されたが作業は大幅に遅れ、白亜は軽いトラウマを植え付けられたのかグワラに抱っこされたまま降りようとはせず、メリリも恐怖だったようで雪のブロック作りを手伝うがカマクラを積み上げる作業を手伝うことはなくなってしまったのである。


「なあ、クロ師匠の魔力創造で簡単に作れないのか?」


 雪ブロックを丁寧に重ねていたフランからの言葉に作業をしていた全員の視線がクロへと集まり、クロもその手があったなと固めていた雪ブロックから離れ平な雪の地面に手を翳してカマクラを思い出しながら魔力創造をする。すると、魔法陣が現れ立派なカマクラが目の前に現れる。


「ん……完成……」


 クランは積み上げようとしていた雪ブロックを放り出してカマクラへと入り中の段差になっている椅子に腰を下ろし、連炎も同じように腰を曲げて侵入して対面居座る。


「これだからチート持ちは……」


 クロへとジト目を向けながらも魔力創造したカマクラへとスキップで向かいスッコケるアイリーン。

 クロは新たに四つほどカマクラを作りぞくぞくと中へと入る乙女たち。白亜もプルプルと震えていたがグワラに抱っこされたままカマクラの中へ入り、中で燃えるキャンドルを見つめ落ち着いたのかクロへと顔を向け鳴き声を上げる。


「おしるこはまだかといっているのだ。私は肉が食べたいのだ!」


「そういやカマクラの中でお雑煮が食べたいとかで作り始めたんだったな」


 カマクラ作りの目的を思い出し新年まで後ひと月という事もあり、お雑煮ではなく白亜のリクエストのおしるこをアイテムボックスから取り出すクロ。これは数日前に煮たもので時間停止機能のあるクロのアイテムボックスに入れていたこともあり温かな湯気を上げ、メリリと協力して用意しおしるこを配り始める。


「甘くて美味しいのだ!」


「キュウキュウ~」


「疲れた体に染みますね~」


「ん……体が温まる……」


「甘いだけじゃなく塩も入ってそうだよな」


「トロンとした餅が美味しいわね!」


 おしるこを口に入れ表情を溶かす乙女たち。ただ、アイリーンだけはドランの前に座り注意深く見守りながら口を開く。


「おしるこに入っているオモチは喉に詰まる可能性があるので注意して下さいね。よく噛んでから飲み込んで下さいね」


「うむ、気を付けるようにするから、そんなに凝視するでない。年は取っておる自覚はあるからよく噛んでから飲み込んでおるわい」


 オモチによる事故は毎年多く起き、死亡事故も少なくはない。それを気にしてアイリーンはドランと一緒のカマクラに入りロザリアと共に安全を見守っている。


「それにしてもクロの魔力創造は便利なのじゃ。あれだけの重労働が一瞬で終わるとは驚きなのじゃ」


「本当にチート能力ですよね~あっちの物なら魔力を使って再現できるとか……どうせなら雪で作った雪像とかも出してもらいましょうかね~」


「雪像か……著作権に引っ掛からなければ出せるかもな。えっと、何にするか……」


「白亜ちゃんが喜ぶように壁ドンするイケメンな男子とかどうです?」


「それはお前が喜ぶだけだろう……それよりもおかわりはどうする?」


 熱々のおしるこを入れた鍋を持つクロと、その横では微笑みを浮かべるメリリがお玉を構えカマクラをまわっている。


「我はもう十分なのじゃ。美味しかったのじゃ」


「私はもう少し食べたいですね~ドランさんはどうしますか?」


「わしももう十分だ。口直しに酒が欲しいのう」


「それなら熱燗ですかね。ロザリアさんはどうします?」


「それなら我も欲しいのじゃ」


 おしるこを入れた鍋をメリリに任せ魔力創造で徳利とっくりに入れた熱燗を魔力創造するクロ。御猪口おちょこも二つ魔力創造すると二人は互いに注ぎ合い口にする。


「これは美味い酒だのう……今年の出来は良かったがこれにはまだ追いつけんのう……」


「うむ、体の芯から温まるのじゃ」


 満足気な表情を浮かべる二人。アイリーンもカマクラでおしるこを食べるという目標を終え満足したのか、キャロットと白亜に連炎を誘い巨大な雪ダルマを作ろうと呼びかけるのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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