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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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ホバークラフトの製作状況とジンギスカン



 サマムーン王国へ来てから更に一週間が経過し、大ムカデの甲殻を魔鉄と融合しホバークラフトの骨格を作り終えた。エルフェリーンとルビーに与えられた作業場で仮組し終えた骨格を見ながら床に座り込む。


「ふぅ……これでひと段落だね~」


「後は車体を浮かせ空気を溜めるのに使う強度のある革や、浮力と推進力に使うプロペラに、動力となる魔石の選出とエンチャントですね。座席も作らないとです」


「そうだね~このサイズなら十人以上運べるし、アイテムバッグを使えば相当な量を運ぶことも可能だぜ~風の力を使い車体を浮かせるから重量規制はしないとだけど、速度が出るだろうから砂漠での試走が楽しみだよ」


 骨格の仕上がりを二人で見つめながら今後の工程を話し合っているとドアがノックされエルカジールとその従者が工房へ入り声を掛ける。


「おお、もうこんなにも作業が進んでいるよ!」


「二人で頑張ったからね~」


 腰に手をあてドヤ顔をするエルフェリーン。ルビーもエルカジールの喜ぶ顔に微笑みを浮かべる。


「何か必要な物はあるかな? 土と風の魔石や鉱石も取り寄せることができるよ!」


「なら、風の魔石と丈夫で大きな革が欲しいかな。ホバークラフトは風の力を使い浮いて走るからね~特に必要なのは車体を浮かせるための風を逃がさない丈夫な皮。それがないと一度家に帰ってクロのアイテムボックスに入れてある物を使わないとだからね~」


「大きな革か……」


 腕組みをしながら考え込むエルカジール。


「あ、あの、それなら一度戻って補充したいものがあるのですが……ダメですか?」


 おずおずと声を上げるルビーにエルフェリーンはパッと表情を明るく変え口を開く。


「それは構わないぜ~僕も一度戻ってウイスキーの補充はすべきだと思うからね~」


 ルビーと同じ考えだったようでエルフェリーンはアイテムボックスから最後の飲みかけの瓶を取り出す。


「なら私も行くよ! クロにお願いして色々売ってもらいたい!」


 目を輝かせ叫ぶエルカジール。その横でゆっくりと手を上げる従者の女性。


「私も御一緒しても構わないでしょうか? 会えるなら妹に一目会って話をしたいのですが……」


「ん? う~ん……メリリが良いといえば会っても良いと思うぜ~メリリは自分を捨てたサマムーン王国を恨んでいそうだしね~」


 エルフェリーンのオブラートに包まない言葉に静かに頭を縦に振る従者の女性。王家の娘でありながらエルカジールの従者として暮らしている変わり者で、名をメヌエット・フォン・サマムーンといいメイリーリンことメリリの姉である。


「そうだね……メイリーリンの気持ちを考えれば合うかどうかは本人に決めてもらうのが一番だね。で、いつ行くのかな?」


 しんみりとした空気をエルカジールのウキウキ感がぶち壊し苦笑いを浮かべるルビー。エルフェリーンは肩を揺らし、メヌエットは下げていた顔を上げ微笑む。


「明日にも行こうか。ああ、あっちは寒いだろうから厚いコートと温かな服を用意しないとだぜ~ラミアは寒さに弱いから冬眠しないように注意してくれよ~」


「冬眠……はい、用意はしておきます」


 深く頭を下げるメヌエット。エルカジールも腕組みをして着ていく服装を思案する。


「帰る前にサキュバニア帝国にも寄らないとですね」


「そうだね~シャロンたちもまた行くだろうし、サキュバニア帝国でみんなは一日休んで僕がメリリに会うか聞いてみるよ」


「宜しくお願い致します……」


 深々と頭を下げるメヌエットは離れ離れになった妹との再会を願うのであった。






 そんな事を思われているとは知らずのメリリはジンギスカンを前に抑えていた食欲を開放していた。


「うふふ、多少癖はありますがフルーティーなタレが食欲をそそりますねぇ。お野菜も美味しいですし、永遠に食べられそうですぅ」


 カマクラは未完成だが結界内ではジンギスカン鍋を設置しワイワイと昼食を取る一同。BBQ用のコンロを使って火を起こし、その上には半円状のジンギスカン鍋を温め多くのラム肉とまわりには野菜が乗せられ湯気を上げている。


「おお、野菜も美味いな! 肉の旨味を野菜がまとっているようだ」


「半円状になっている上でラム肉を焼くので余分なタレと脂が下に流れてお野菜を美味しくするんですよね~うどんを入れても美味しいと聞いたことがありますよ~」


「うどん?」


「うどんは小麦粉を練って作る麺料理ですね~ほら、クロ先輩が用意してくれていますよ」


 初めて食べる連炎へ解説をしながらジンギスカンを楽しむアイリーン。ドランやロザリアたちもラム肉を食べてはビールで流し込んでいる。


「白ワインも美味しいけど油っぽさのある料理にはビールが合うわね」


「寒くてもこのシュワシュワとした感じが美味しいわ」


「こっちにホットワインや熱燗の用意もありますのでどうぞ~」


 ビスチェとキュロットも普段は白ワインなのだが冷やした缶ビールを飲み、ホットワインや熱燗を用意していた聖女タトーラの呼び声にドランやロザリアにキュロットが引き寄せられ温かいアルコールを口にして冷め始めた体を温め、ピーマンを前に難しい顔をしているキャロットアイリーンが言っていたようにピーマン地獄という事はないのだが、ジンギスカンという鍋の構造上まわりの溝にはモヤシやキャベツに玉ねぎといった野菜が多く目につき、先ほど怒られてこともあってか他のジンギスカン鍋よりもピーマンが多く入っているように見えるのだろう。


「お肉は美味しいのだ……」


「キュウキュウ~」


「ほら、キャロットさまも好き嫌いなくお食べ下さい。白亜さまはピーマンも食べられるようになったのですよ」


 グワラからの言葉に更に苦い顔へと変わるキャロット。白亜は褒められて嬉しいのか得意気にピーマンを口に入れ、苦みを感じているのか尻尾をプルプルと震わせながらも咀嚼して飲み込む。


「おお、白亜は偉いな。特別にお高いウインナーも食べるか?」


「キュウ!? キュウキュウ~」


 頑張って食べたピーマンを食べる白亜を目撃したクロはアイテムボックスからちょっとお高いウインナーを取り出し鉄板を管理するグワラに渡すとキャッキャと喜ぶ白亜。それを横目で見ながらピーマンを見つめるキャロットは自身が使う皿へとピーマンを取り、そのピーマンと数秒睨めっこして意を決し口に入れる。


「ううう、やっぱりピーマンは美味しくないのだ……」


「キュウキュウ~」


「白亜さまが褒めてくれたのだ! 私も頑張ってピーマンを食べるのだ!」


 白亜に褒められピーマンと一緒にラム肉を口にするキャロット。そんな姿をグワラと一緒に見ていたクロは子供の成長を位守る親とはこんな感じなのだろうと二人で微笑み、焼けたてのお高いウインナーを白亜とキャロットへ勧めるグワラ。


「まだ熱々ですから少し冷ましてからお食べ下さい」


「わかったのだ! 肉汁が凶器になるウインナーなのだ!」


「キュウキュウ~」


 パッキと割れるタイプのウインナーと学習しているキャロットと白亜は十分に冷めるまでラム肉と野菜を繰り返し食べ、ピーマンを食べたご褒美だと一人と一匹は視線を合わせて一緒に口に入れる。


「このタレにも合うのだ! パッキパキなのだ!」


「キュウキュウ~」


 ちょっとお高いだけあってその味に満足するキャロットと白亜。


「熱っ!? アイリーンよ! これは凶器かっ!」


「熱々を無理して食べるのが美味しいんですよ~あむ、はふ、熱っ!!!」


 熱々の肉汁に俺様キャラと腐女子の口内が大変な事になり、口を押え走り回るアイリーンはすぐにエクスヒールを唱え口内を回復させるのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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