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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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炬燵の上の戦い



「ロン!」


 その言葉にわなわなと震えるキュロット。発声したのは連炎でありニヤリと口角を上げると手元の牌を倒して口を開く。


「リーチ、三色、ドラドラ赤。よし、裏ものった! 跳満! 一万二千!」


「うぐぐぐぐ……手持ちの点棒が……」


「ん? 平和も付きますね~倍満で一万六千すね~」


 既に跳満を直撃され点棒が綺麗に無くなったのにアイリーンの指摘で手持ちがマイナスになり肩を落とすキュロット。それを見ながら肩を震わせるビスチェ。


「箱った……東場は私がトップだったのに、初心者に負けるなんて……」


 雪が降り始めたこともあり室内で過ごす日々が続き、麻雀を連炎に教えたアイリーン。実践の為にキュロットとビスチェを誘い始めて卓を囲みその面白さに夢中になった連炎。まだ役の種類もすべて覚えてはいないが、南場に入ると運も味方し四連荘でトップであったキュロットを撃沈させたのである。


「流石は連炎さまです!」


「最初に配られた時からドラが二つもあって、牌も三回変えただけで上がりました!」


「麻雀とは楽しいものだな! この遊具はどこで売っているのだ?」


「クロ先輩に頼めば都合してくれると思いますよ~国に帰ったら広めて下さいね~」


 笑みを浮かべ勝者となった連炎を持ち上げる家臣の二人。アイリーンも麻雀が広まればとクロに向け文字を飛ばす。


≪連炎さんが麻雀セットをご所望です! 国に帰った時に広められるよう十セットはお願いしますね~昼食は牛丼が食べたいです!≫


 暖炉の前で小雪やオモチたちのブラッシングをしていたクロの前で急停止する文字を確認し、アイテムボックスのリストを立ち上げ食材を確認して麻雀牌と専用のマットを魔力創造する。


「十セットもか。えっと、これでいいかな」


 魔力創造を使い魔方陣から想像された麻雀牌のセットと専用のマットを創造すると七味たちが持ち上げ運び、膝枕されていたカガミが早く続きがして欲しいと尻尾を振る。


「よしよし、再開するからな」


 耳の裏に優しくブラシを入れて手を動かし、手伝っているフランとクランは最初こそ怖がっていたが、尻尾を振り人懐っこい性格のオモチたちに警戒心はなくなり優しくブラシを使い仲を深めている。


「昼食は牛丼にしようと思うが、他に食べたいものは何かあるか?」


「ん……牛丼には生卵……」


「お味噌汁か、豚汁か……牛丼だけだと優しが少ないから汁物に野菜を入れたいな」


「そうだよな。最近は白亜もちゃんと野菜を食べてくれるしな」


「ん……白亜よりもキャロットの方がピーマンを残す……」


「この前はピーマンの肉詰めなのにピーマンを剥がしながら食べてたしな」


 オモチたちをブラッシングしながら炬燵でミカンを口にしているキャロットへ視線を向けるクロ。炬燵には白亜とグワラにロザリアがミカンを口にしながら積み木や雑誌を見て自由な時間を過ごしている。

クロが魔力創造した雑誌を真剣な目で見つめるロザリアとグワラは異世界のファッションが気になるのか、意見を交わしながら再現方法を真剣に話し合っているのだ。


「コートだけでもこれほどカラフルな仕上がりになるのは凄いのじゃ」


「毛皮を使った物は理解できますがこのような薄い生地では真冬の山では生き延びられませんね……ですが、スラッとした体型を美しく見せています……」


「うむ、街中だけならこういった防寒着でも大丈夫なのじゃろう……ほれ、この者など真冬なのにスカートじゃぞ」


「こんなにも短いスカートなのに上半身にはマフラーや手袋は付けるのですね……」


「うふふ、お茶のおかわりですよ~このコートとかも可愛いですねぇ。異世界の衣服は斬新なデザインが多く見ていて楽しいですねぇ」


 メリリが緑茶を配り始めロザリアたちのファッショントークに参加し、クロは優しくカガミを撫でると大きな頭を膝からゆっくりと退かして立ち上がり、カガミは寂しそうな鳴き声と表情をするが「ごめんな」と口にしてキッチンへ向かう。フランとクランも同じように立ち上がりキッチンに向かいヴァルを召喚し浄化魔法を掛けて貰うとアイテムボックスから食材を取り出す。


 リビングでは新たな麻雀が開始され連炎とアイリーンにサフランとクーペが卓を囲み、ドランとキュロットにビスチェと聖女タトーラがもうひと卓で麻雀を開始する。


「何か賭けましょうよ」


 先ほど撃沈したキュロットの言葉に眉に深い溝を作るビスチェ。ドランは顎髭に手をあて考える素振りをし、聖女タトーラはサイコロを振りドラ表示牌を捲る。


「賭け事はあまり好きではありませんので、お金以外であれば掛けても構いません」


「この時期だと草むしりも必要ないし……」


「昼食のおかずを一品掛けるにも、牛丼と聞いてしまうとのう……」


「手持ちのお酒を掛けるのはどう? ビスチェとドランは持っているでしょ?」


 口角を上げ発現するキュロット。親の聖女タトーラが牌を取り始め、ビスチェとドランがその賭けを了承する。


「私もブランデーを数本と缶のお酒を持っています」


「なら、それでいいわね!」


 ちなみに日本で金銭を掛けた麻雀は刑法185条の賭博罪が適用されます。五十万円以下の罰金か科料に処されるので良い子はお金を賭けてはいけません。


 親である聖女タトーラが牌を手元へ引き寄せ子である三名も最初の配牌を確認する。するのだが、全ての牌が手元に集まると聖女タトーラがフリーズする。


「ほら、親から牌を切るのよ」


 キュロットが聖女タトーラを急かすが聖女は牌を切ることはせず、手元の牌を倒す。


「えっと、揃っていました……」


 ぱたりと倒された牌を見て目を丸くする一同。更に頭上から光が差し神々しく輝く聖女タトーラ。


「なっ!? 何よこれ!」


「天鳳だのう……」


「これって神さまたちが介入しているってことはないわよね……」


 キュロットは倒された牌を指差し叫び、ドランは初めて見る天鳳に目を丸くして驚き、ビスチェは光の柱に違和感を覚えジト目を向ける。


「いえ、神々が祝福して下さっているだけで、介入とかはしていないはずです……」


 神々しく輝く聖女タトーラの天鳳に隣の卓の者たちも一時中断して集まり、初めて見る天鳳の配牌が七対子である事に驚きながらも祝福する。


「国士や四暗刻は出やすいですが天鳳が出るとは……」


「最初の配牌で上がるとは麻雀に愛されているのだな!」


「こんなのをされたら絶対に勝てませんね……」


 光が収まり微笑みながら「一万六千オールです」と払う点数を口にする聖女タトーラ。ドランとビスチェは既に点棒を場に置いておりキュロットも渋々といった表情で点棒を場に置き再会する。


「これで聖女の負けはほぼなくなったのう……」


「私の白ワインは絶対に死守するわ……」


 静か闘志を燃やすドランとビスチェ。キュロットは聖女タトーラが何かしらの不正行為をしている可能性を感じ牌を混ぜながら怪しい動きがないか見つめ、牌を積む際も手の動きに違和感がないか視線を向ける。


「ではサイコロを振りますね」


 サイコロを振りドランの山からドラ表示牌を開け、手元へ牌を取る一同。


「天鳳が出たなら地和も出るはず!」


 天鳳と対となる子の役満を期待して牌を並べるキュロット。ドランやビスチェもこの局は荒れるだろうと手配を確認していると、またしても聖女タトーラが牌を倒し口を開く。


「ま、また、上がっています……」


 倒された牌を見て顔を引き攣らせるドランとビスチェ。キュロットはあんぐりと口を開け固まり、天からは光が降り注ぐ。


「二連続天鳳とか……確率的にあり得ないですよ……しかも大三元まで乗ってるし……」


 天鳳大三元というダブル役満に子の三名は点棒をなくし、一人勝ちを治める聖女タトーラであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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