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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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サキュバニア帝国とサマムーン王国



 数日前に遡り、エルフェリーンの転移魔法で帰国したシャロンたちとグリフォンたちがサキュバニア帝国の中庭へ向かい、その姿に気が付いた一人のメイドが悲鳴を上げすぐに駆け付ける兵士たち。


「何があった!」


 以前から何度も転移先に選んでいる事もありその場所に許可なく入ることを禁じている事もあってか平らに均され芝生の上に、急に現れるグリフォン数匹とキュアーゼに驚き悲鳴を上げ、シャロンが現れると悲鳴が歓声に変わり、駆けて来る兵士は更にスピードを上げる。


「皇女相手に悲鳴を上げちゃダメじゃない」


 朝食を取り終えまだ朝も早い時間帯の悲鳴に多くの兵士たちは食事中であったがすぐに装備を整え中庭に集まり、シャロンは顔を引き攣らせながらフェンフェンが興奮して飛び立つのを押さえ、メルフェルンは大声で事情を説明し、転移したエルフェリーンはこちらへ駆けて来るキョルシーを抱き止める。


「エルフェリーンさま!」


 満面の笑みで抱き締められたエルフェリーンは自身よりも小さな存在に微笑みを向ける。


「キョルシーは少し大きくなったかな」


「はい、前よりも少し大きくなりました! クロはいないのですか?」


 抱き付いたキョルシーは首をキョロキョロさせクロがいない事を知ると、エルフェリーンから落ち着いたフェンフェンを撫でるシャロンをロックオンして走り抱き着く。


「シャロン兄さま!」


「キョルは良い子にしていたかな」


「はい! 良い子でお勉強をしました! クロがいません!」


 毎回セットのようにエルフェリーンと一緒に来るクロの姿がない事を不審に思ったのかシャロンにも疑問を伝える。


「クロさんたちはお留守番だよ。その代わりにチョコをいっぱい持って来たからね」


 その言葉にパッと表情が明るくなり「チョコもですか!」と声を上げ、頷くシャロン。


「何と尊い光景だろう……」


「シャロンさまのご帰還の祭りをすべきではないだろうか……」


「兄妹の美しい愛を見た……」


 兵士たちが抱き合う兄妹を見ながら歓声を上げ、私もいるのだがと口にはしないが厳しい視線を周囲へと向けるキュアーゼ。専属メイドであるメルフェルンはやってきたメイド長へ期間を報告しエルフェリーンとルビーへ丁寧に頭を下げる。


「これはエルフェリーンさま、またお顔が見られ嬉しく思います」


「うん、僕も久しぶりにサキュバスたちを見られて嬉しいぜ~カリフェルはまだ帰ってきてないのかな?」


「ひと月前に文が届き年内には戻れるかもしれないと知らせがありました。すぐにお茶の準備を致しますのでこちらへお越しください」


「ああ、申し訳ないが僕たちは急いでいてね。急ぎの用が終わったら迎えに来るからその時にでもお願いするよ」


 微笑みを浮かべ天魔の杖を翳したエルフェリーンとルビーが新たな転移ゲートに入り姿が消え、キュアーゼはメイド長と共に集まった兵士たちに向け口を開く。


「ほらほら、そろそろ職務に戻りなさい。警備兵がこの場に集まって敵の侵入を許したらどうなるか分からぬ者たちではないでしょう」


「きついお仕置きが欲しいのなら別だけど、久しぶりに私も訓練に参加しようかしら」


 メイド長の言葉に渋々足を進める兵士たち。キュアーゼが訓練に参加するという言葉を後ろから耳にした兵士は逃げるように姿を消す。


「シャロンさま、グリフォンたちを先に厩舎へ連れに行きましょう。そちらが新しく産まれた、」


「フェンフェンと名付けました。とてもお利口でもう自由に飛ぶことができます」


「ピー」


 キョルシーに撫でられながらも自身の名が出たことで鳴き声を上げるフェンフェン。他にも三頭のグリフォンがメイド長へ近寄り、メイド長は優しく一頭ずつ撫で微笑みを浮かべる。


「他の子たちも元気なようで安心しました。神獣さま方にもフェンフェンを紹介して頂けたらと思います」


「そうだね。行こうか」


 グリフォンたちを連れ城の裏にある広いグリフォンたちが放し飼いになっている広場へたどり着くと、数頭のグリフォンが興味を示し集まりお世話をしていた兵士たちも鼻息荒くシャロンたちの登場に歓喜する。


「ほら、仲間が来てくれたよ」


 連れていたグリフォンの三頭が足を進め再会を喜び、キョルシーの横でそれを見ていたフィロフィロも駆け出し一緒に走り出そうとしたキョルシーを抱き上げるシャロン。


「今行ったらグリフォンたちに揉みくちゃにされちゃうからね」


「はい、みんな楽しそうです」


 グリフォンたちが集まり互いに頬を擦り付け、フィロフィロも大きく育ってきているが成体の半分ほどのサイズで頭を屈める大人のグリフォンと頬を擦り付けていると、同じサイズの大人になり切れていないグリフォンが数頭現れると互いに鳴き声を上げて近づき頬を擦り付ける。


「お友達になれましたか?」


「そうだね。みんなフィロフィロと仲良くなったみたいだね」


 仲間意識が強いグリフォンの行動を見つめていると空から舞い降りる美女の登場に目を輝かせるキョルシー。近くに控えていたメイドたちはすぐに膝を折り舞い降りたサキュバニア帝国の現役女帝はそのままキョルシーを抱えるシャロンに抱き付く。


「良く帰って来た!」


 大きな胸でキョルシーが苦しそうな表情を浮かべた事もありシャロンが「姉さま、苦しいです」と口に出すと慌てて一歩離れ、本当に苦しい思いをしたキョルシーはその胸を平手でペチペチと叩き頬を膨らませる。


「おっぱいが苦しいです! シャロン兄さまみたいにみんなぺったんこが良いです!」


 その言葉に皆で吹き出し和やかな空気の中で再会を喜ぶのであった。





 エルフェリーンが転移魔法で辿り着いたのは砂漠の中にあるオアシスで、それを取り囲むように大きな町のある砂漠の都市。中心には宮殿が建ち、それとは対照的に街はずれには巨大なピラミッドがそびえ人の足はそちらへと向かっている。


「ふぅ~ここは暑いね~」


「砂漠と金の国サマムーンですから暑いのは仕方がないとして、コートだけでも脱いだ方が良いですよね」


「あははは、そうだね。こんなに厚着をしていたら何かしらをコートに隠す暗殺者に見られちゃうぜ~」


 そそくさとコートを脱いで足を進めサマムーン王国の門へと辿り着くと一部始終を見ていた門番が頭を下げ、ルビーも同じように頭を下げる。


「エルフェリーンさま方ですね。話はエルカジールさまがお聞きしております」


「すぐに砂蜥蜴の馬車をご用意致しますのでお待ち下さい。ささ、こちらの日陰に」


 既にエルカジールから話が入っているのか門番たちに歓迎され、日差しを遮る簡素なテント風の休憩スペースに案内されテーブルのある席に座る二人。


「エルフェリーンさまのご高名はサマムーンにも響いております。流行り病の撲滅にポーション各種の再現や武勇の数々……そして、流通を一変させる新たな乗り物の開発を耳にした時は心が高鳴りました!」


 門番の警備を取り仕切っている男との言葉に苦笑いを浮かべるルビー。エルフェリーンは椅子に座りながらそれを耳にし、人差し指を立て左右に振りながら口を開く。


「少し違うぜ~流行り病は撲滅したのではなく予防したんだ。それにポーションは僕が再現したのではなく、ダンジョン神が僕に頼み込みポーションをダンジョンから産出しその作り方を世界に広めたんだぜ~レーシングカートにしても、」


「お待たせしました!」


 大きな叫びにも似た声に振り向くと巨大な蜥蜴が引く馬車が現れ、連結した乗車できる椅子からはエルカジールが満面の笑みを浮かべ手を振っているのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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