表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
636/669

おでん作り



 数日が経過すると連炎たちがいる生活が当たり前になりアイリーンと共に狩りへと出掛け、帰って来ては獲物を解体してクロの横で料理を教わりキッチンに立つ姿が板につき、サフランとクーペはビスチェに色々と教わりながら薬草や野菜の手入れを手伝っている。


「凄く馴染んでおるが国に帰らんでも問題ないのかの?」


「ワシに言われても……ワシも年越し前には帰らんとな……はぁ……炬燵と別れるのが辛いわい……」


 炬燵に入りミカンを口に入れるドラン。その横ではロザリアが呆れた顔で新しいミカンに手を伸ばし、肩まで炬燵に入りスヤスヤと寝息を立てるメリリ。


 外ではキャロットと白亜が雪の中走り回り小雪やオモチたちと楽し気に棒を投げ取ってくるという遊びを行っている。


「このピーラーという道具は便利だな。俺様でも簡単に野菜の皮が剥けるぞ」


「ん……ピーラーは偉大……誰でも皮むき名人……」


「それよか、大根をそんなに剥いてどうするんだよ……」


 ピーラーが楽しく大根の皮を剥きまくり裸になった大根をキッチンテーブルに積み上げる連炎とクラン。フランがジト目を向けクランが手を止めるが連炎は空気を読まない才能があるのか次に手を掛ける。


「折角だからおでんにするかな。皮も浄化魔法を掛けてから干すから捨てないで下さいね」


 クロがキッチンへ入りながら声を掛けるとクランがまた大根を手にしようとしフランに止められ、クロもまだ手の付けていない大根をアイテムボックスへと収納して皮を剥いて欲しい人参をキッチンテーブルへ置くと連炎が剥き始める。


「おでんか! 寒くなったからピッタリだな!」


「ん……おでんは皆で食べると美味しい……」


「まずは下茹でと出汁作りだな」


 巨大な鍋に昆布を入れ出汁を取り、大根は適当な大きさに切り茹でる。それを手伝うフランとクラン。連炎は黒く浮かぶ昆布を不思議そうな顔で見つめる。


「海藻のような物を茹でるのだな」


「まさに海藻ですよ。昆布と呼ばれる海藻でおでんに欠かせない出汁を取るためのものですね。うちは昆布とカツオを使い醤油ベースですね」


 大根の角を包丁で器用に面取りしながら口にするクロ。面取りとは大根などが煮崩れない様角を取る下処理方法で見栄えも美しくなり丁寧に処理して行く。


「連炎さんも面取り手伝ってくれ」


「ん……ピーラーの魔術師……頑張れ……」


 フランとクランからの声に「俺様に任せろ」と口にしてクロの手を見ながら面取りをする連炎。七味たちもその光景を見て降りて来るとクロに許可を取り、やり方を聞きながら手伝いに参加する。


「昆布出汁の香りがすると思ったらおでんですね~私も手伝いますね~」


 アイリーンが白薔薇の庭園の手入れを終えキッチンに現れ、クロは大量に剥いた大根の皮を指差しながら口を開く。


「悪い、その前に大根の皮に浄化魔法を頼む。あれだけあるから干して切り干し大根にするからさ」


 十本ほどの大根の皮がザルの上に山盛りに積まれ「それなら干してきますね~」とザルを抱えて外へと向かうアイリーン。足を進めながら山盛りの大根の皮に浄化魔法を唱えると完璧に汚れがなくなり屋敷とオモチ小屋の間に糸を飛ばして皮を干す。


「クロ先輩と連炎さんが料理する姿は中々良いですね~フランとクランちゃんたちが手伝う姿も可愛いのですが、やっぱり美男子に見える連炎さんがエプロンを付けてクールに料理をしてクロ先輩に味見される姿を早く見たいものです……グヒヒヒ、ん? 小雪にオモチたちは元気ですね~」


 白い毛玉集団が目に入りひとつの枝を取り合う姿に微笑みを浮かべる。


「結界の外は雪が積もっているのに……サフランさんとクーペさんはビスチェさんの手伝いですね……聖女さまはひとりで走り込みですね……」


 屋敷の二階ほどの高さから皆を見つめるアイリーンは手を動かしながら大根の皮を干し、未だ帰って来ないエルフェリーンやシャロンの顔を思い出す。


「師匠たちが出掛けてからもうすぐ一週間ですか……そろそろ一度ぐらい帰って来ても……おお、キナコが取りました! 体格の大きいカガミの背中を足蹴にして棒を取るとは素晴らしい機動性と胆力ですね!」


 キャロットの投げた棒を口に加え勝者となったキナコが尻尾を振り走り白亜の下へ辿り着き渡すと、白亜はキナコの首をキュウキュウ~とご機嫌に撫でる。その棒をキャロットが取り投げ、次の勝者が白亜に撫でられるという遊びを繰り返しているのだ。


「あれなら競争心を燃やし瞬発力がありますね~仲間であっても出し抜く脚力と頭脳を鍛えられますね~これで終わりっと」


 糸を解除し地面に着地すると屋敷へと戻り不穏な空気を感じ取る。


「何やら禍々しい気配が……」


 視線を炬燵へと向けるとキュロットとドランにロザリアとグワラが炬燵で卓を囲んでおり、禍々しいオーラを放つグワラが「リーチ」と発声する姿が目に入る。


「うぅ、誰がグワラさんを麻雀に誘うのだか……グワラさんを入れるとお遊び麻雀が戦争へ変わるのに……見なかった事にして、早くBL成分の補給をしなくては」


「ロン!」という発声を耳にしながらキッチンへと戻ると魔力創造をしているクロが目に入り、その後ろで密着しながら魔法陣から現れる練り物を興味深げに見つめる連炎の姿が視界に入り鼻息を荒くするアイリーン。


「これは素晴らしい所に帰って来られましたね! あんなにも距離を地締め顔を寄せ合う姿に尊さを感じます! グヒヒヒ、どうせならあの距離で見つめ合って欲しいです!」


 テンションを上げ叫ぶアイリーンの帰還に心底迷惑そうな表情を浮かべるクロ。連炎はアイリーンの発言に慌てて離れ距離を取って頬を赤く染める。そんな三名を見てまたかと思いながらも手を動かし続けるフランとクラン。


「下茹でが終わった大根を出汁と醤油を入れた食べに入れ、練り物は一度下茹でしてから入れるが、入れるタイミングが早いと練り物の味が抜けて美味しくなくなるからな。大根に色が付いたぐらいから入れるぞ。アイリーンは昆布を結ぶのを手伝ってくれ」


「昆布だけではなくクロ先輩と連炎くんを結ぶ手伝いもしますね~」


「おいこら、連炎さんな。連炎さん……どうしたクラン?」


 腰へ急に抱き付くクランの姿に疑問を口にするクロ。クランは腰に抱き付き「ん……」だけ口にすると下茹でした大根を出汁と醤油を入れた大鍋へと移し替える作業へ戻る。


「クランちゃんの可愛い所が見られましたね~今日はもうお腹いっぱいですよ~」


「なら夕食は抜きでいいのな」


「心が満たされただけです! 実際のお腹はきっとペコペコになるので……ラライちゃんにもおでんを食べさせてあげたかったですね~」


「雪が降り始めたからな。後一日ぐらいは置いてやりたかったが、オーガの村は近くても雪が降ったら帰るのに危険だからな」


「そうですよね~急な吹雪に巻き込まれたら目の前が真っ白で迷子になりますよね~」


 この時期の森は吹雪くことが多くその危険性はエルフェリーンから口が酸っぱくなるほど体験談と共に説明されている。ドランが迷子になり泣きながら魔化した姿で帰って来た話や、吹雪の中進めずに結界を張り一晩過ごし翌朝家の前だと気が付いた話などの恐怖体験を聞かされ、嫌でも危険だと認識しているのである。


「連炎さんはゆで卵を剥くのを手伝って下さい」


「お、おう……」


 まだ薄っすらと赤い顔をしているがクロに頼まれゆで卵を手にする連炎であった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ