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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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ショックを受けるアイリーン



「主さま、私にお任せ下さい!」


 ヴァルの言葉に素直に手にしていた魔力回復ポーションを渡すクロ。精霊王の蔦に捕らわれている連炎と話を続け、威嚇行動を最初に取ったサフランとダンベルで殴ったメリリが悪いという結論に達し、連炎から謝罪を口にしたのである。


「悪かった……もっと慎重に説明すれば良かったと思う……」


 俺様キャラが完全に崩壊しておりクロはクロで長い時間拘束して申し訳なかったと精霊王の蔦を緩め魔力回復ポーションを飲ませようとしたところでヴァルに止められたのである。


 巨大な口に魔力回復ポーションを流し入れ顔色が戻り、クロは精霊王の蔦を緩めると巨大なドラゴンは人型へと変化し蔦をかき分け立ち上がる。


「ふぅ……生きた心地がしなかったぞ……」


 やや肩を落とし立ち上がった連炎はまだ本調子ではないのか出会った頃よりも顔色が悪く、クロは追加の魔力回復ポーションをアイテムボックスから出そうとするがビスチェに手を掴まれ阻止される。


「相手から謝罪があったけど油断しない事! あのブレスを浴びたいのなら別だけど、私は嫌よ!」


 火炎放射とは違いビームのようなブレスを思い出し、確かにと思うクロはアイテムボックスのリストに触れる。


「食事の続きをしましょうか」


 その言葉に胸に抱き付いている白亜が喜びキャロットも喜びの声を上げる。


「もっと肉が食べたいのだ!」


「キュウキュウ~」


「あれだけの事があったのにまたお肉を焼こうとする辺りがクロね……」


「和解したのなら連炎さんにも美味しいお肉を食べてもらいたいですね~クロ先輩なら古龍種だって喜ぶ料理を作ってくれますよ~」


 ビスチェは呆れ、アイリーンは脳内の妄想を膨らませながらクロの背中を押す。


「俺もその心算でアイテムボックスを弄っているから押すな、押すな」


「三回目の押すなで押せばいいんですよね~」


「いや、指がずれるからな。それより結界のある屋敷に戻ってからBBQにするぞ」


 クロの提案に小雪をリーダーにオモチたちが喜び跳ねまわり、七味たちは一斉に屋敷へと戻り倉庫から椅子やテーブルを運び出す。


「連炎さま、お体の方は大丈夫でしょうか?」


「私たちは心配で、心配で……」


 後ろを歩く連炎へ駆け寄るサフランとクーペの家臣の二人に顔を引き攣らせながら二人が持つグラスと肉串を指差して口を開く。


「その割には楽しそうに飲んで食べていたようだな」


「これは相手を油断させるために……」


「とても美味しいです。こちらの酒はドランさまが御作りになっているそうですよ」


 サフランは言葉を濁したがクーペは素直に味の感想を口にし、グラスに入れられた透明な酒を連炎へ見せる。


「ワシがゴブリンたちと作っておる異世界の酒じゃ。連炎さまの口に合えば良いが……」


「それは楽しみである。俺様はワインとミードしか飲んだことがないからな。料理も漂う香りに興味があったぞ。拘束され我慢していたが、魔力も尽き腹が減ったぞ」


 回復しているが怪我をさせた事に多少は後悔していたのか、ドランから話を振られ言葉を交わし多少顔色が戻り赤い尻尾をゆらりと動かす。


「命のやり取りをした後とは思えんのじゃが……」


「うふふ、これもクロさまの魅力なのでしょう。拘束しているとはいえ戦いの最中に料理をして相手の毒気を抜いたのですねぇ」


「毒気か……」


 ロザリアの後ろではドランが日本酒について語りそれに興味のある相槌を打つ連炎。その会話を耳にしながら足を進め、オモチたちに囲まれ先を歩くクロへ視線を向ける。


「クロらしいのじゃ……」


 小さく呟くロザリアであった。






「かんぱ~い!!」


 アイリーンの声が高らかに響く中庭では七味たちがBBQコンロや竈の前で料理を作り、負けじとフランとクランも鉄板の上で焼きそばを混ぜる。テーブル席にはドランが酒を振舞いグラスに口を口にし頬を染める連炎と御供たち。

 ロザリアやビスチェもワインを口にしながらメリリが運ぶ七味特製のカラアゲを口にして表情を溶かし、聖女タトーラとキャロットに白亜は目の前に積まれたポテトフライにケチャップとマヨを付けて口に運ぶ。


「ヴァルもたまには楽にして食事を楽しんだらどうだ?」


 ランスを手に仁王立ちする姿にクロが焼き鳥を返しながら口にする。


「いえ、自分は何かあった際にすぐにでも主さまを守れるよう待機しております。相手が古龍種ともなれば油断はできません」


「そっか……ほら、焼けたから味みな」


 焼きたての焼き鳥は湯気を上げ皮面が香ばしく見え口にすれば間違いなく美味しいと理解ができるがヴァルは仁王立ちから動こうとはせず、クロは一本を手に取りヴァルの口に近づける。


「し、失礼します……あむ……大変美味しゅうございます……」


 ほんのりと顔を赤くして口で受けるヴァルに満足したのか、クロは焼きたてのそれを持ちテーブルへと運ぶ。


「焼き鳥なのだ!」


「キュウキュウ~」


「これは先ほどの肉串とは違う肉を使っておられるのですね!」


「アイリーンが前に取って来たダークスワローという鳥ですね。皮に旨味が多くて美味しいですよ」


「ダークスワローは狩るのが難しいと聞いたが……あむあむ……うむ、塩とシンプルながら旨味が感じられるな。美味いぞ!」


 連炎が手を出し家臣である二人も気兼ねなく手を出し口にして表情を溶かし白ワインでその脂を流し更に表情を緩めるサフランとクーペ。ドランも自身が作った酒と焼き鳥を交互に口にし満足気に頷く。


「うむ、やはり今年の酒は美味い。もちろんクロの料理も美味いが、酒の味を引き立ててくれておるのう」


「師匠にも早く飲んでもらいたいですね」


「うむ、去年とは違い今年のは絶品だからのう。エルフェリーンさまにも早く飲んでもらいたいのう」


 レーシングカート関連の用事で出かけているエルフェリーンとルビー。シャロンやメルフェルンにキュアーゼといったサキュバスたちも里帰りをしており、師であるエルフェリーンが外出中の錬金工房草原の若葉を守れた事に今更ながら安堵するクロ。


「ほらほら、クロ先輩も食べて下さいね~焼き鳥は私が代わりますから連炎くんと親睦を深めて下さい! グヒヒヒヒ」


 下卑た笑いを浮かべテーブルから竈へ移動するアイリーン。


「これ、アイリーンよ。お前は少し失礼な勘違いをしておるのう」


 ドランから呼び止められ振り向くアイリーン。


「皆も勘違いしているかもしれんからいうが、古龍種に男、雄はおらん。こちらの連炎さまは列記とした女性だから勘違いせんようにな」


 ドランの言葉に目を丸くするアイリーン。他にも連炎を男だと勘違いしていたものはいるようで目を丸くする。


「いや、だって俺様って……」


「あれは焔姉さまの影響でな……」


「服装だって男性のものですよね?」


「この服は炎帝に伝わる戦闘服で……勘違いさせていたのならすまん……が、そんなに女に見えなかったか?」


 人差し指で頬を掻きながら疑問を口にする連炎に、アイリーンは申し訳なさそうな顔をしていたが数秒ほど経過すると膝から崩れ落ちる。


「そんなっ! そんな真実知りたくなかった! 俺様キャラなのに女性って! 女性って! これから熱く展開すると思ったのに……今後はどうやってBL成分を補給したら……シャロンくんもまだ帰って来ないという事実を受け止めろだと……」


 大地に這いつくばり叫ぶ腐女子の本音に顔を引き攣らせるクロ。連炎には意味が伝わらなかったが女性らしく見えなかった事を気にしているのか、自身の平らな胸を手で押さえながら我関せず焼き鳥を口に運ぶキャロットとメリリの揺れる胸を見つめるのであった。





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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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