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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
632/669

拘束ドランゴン



 蔦の隙間からオレンジの光が消え一瞬戸惑うもクロは少し離れてシールドを解除する。


「やっぱり熱気が弱く……出てないなよな……」


 近づくと火傷しそうなほどの熱気が失われ次の肉をどうしようかと迷っていると、ほろ酔いのドランが立ち上がりクロの下へと近づく。


「クロよ、今なら止めが刺せそうだが」


 その言葉にハッとしてアイテムボックスを立ち上げ急ぎシールドを展開しその上に乗り移動するクロ。ドランはクロの行動を目で追ったがさほど心配してはいないのかそのまま放置し、カップの酒を飲み干しおかわりを求め下がる。


「主さま危険です!」


 クロがシールドに乗り移動したことに気が付いたヴァルが追い掛け、その声で他のものたちも肉串を食す手を止め視線を向け、クロは蔦に絡まれた連炎の頭部へと辿り着きその隣にヴァルも追いつき口を開く。


「主さま、止めを刺すのであれば自分が行いますが」


「いやいやいや、そうではなくて、膨大だった魔力が底をつきそうなのが分かるだろ。このままだと危険だと思って話をしに来たんだよ」


 そう言いながら左手でランスを構えるヴァルを制し、右手で精霊王の蔦を操りゆっくりとそれを緩め蔦の間から赤いドラゴンの顔が薄っすらと現れる。


「あの、大丈夫ですか?」


 完全に精霊王の蔦を取り去ることはせず様子を窺いながら声を掛けるクロ。その手には先ほど立ち上げたアイテムボックスから取り出した魔力回復ポーションが握られている。


「大丈夫かだと……大丈夫なものか……魔力が尽きかけているのだ……俺様がこうも見事に作に嵌り拘束され、魔力を絞りつくしても解放されないとは……」


 最初こそクロをギラリと睨んだがその表情は次第に落ち着いた物へと変わり、目を閉じて死を悟ったかのように穏やかな物へと変わる。ただ、ドラゴンの表情なので怒ってはいないという風に感じる程度の変化ではあるのだが、それを察したクロは魔力回復ポーションを開封すると眼下から口元へかけようとするが構造上、上顎の方が大きく垂らしても飲むことはないと考え大きく開いている鼻の穴を目がけ垂れ流す。


「ぶぼっ!? がはっ! ごっへごっへ!!!」

 

 大きく咳き込む連炎に慌ててシールドを上昇させるクロ。ドラゴンといえど急な鼻うがいは咽るようで咳き込み、落ち着くと上空からシールドに乗り見つめるクロへギラリと視線を向ける。


「今のは毒か?」


 動けない自身の止めに毒を使ったのだろうと考えた連炎の言葉にクロは慌てて否定する。


「いえ、魔力回復ポーションです。どうですか、少しは楽になりましたか?」


 クロの言葉に目が点になる連炎。そしてそれは地上でこの状況を心配そうに見つめていた者たちも同じだったようで、慌てて空へと駆け上がるアイリーンとビスチェ。


「クロっ! あんた何やってんのよっ!」


「クロ先輩らしいですね~魔力を回復させまた燃料として使おうと考えるとは鬼畜ですね~」


 精霊の力を借り飛び上がったビスチェは慌ててクロの背に抱き付き跳び上がり、アイリーンは空中で糸を使って体を固定する。


「折角倒したのを回復させる馬鹿がどこにいるのよ!」


 クロの背中を抱き締めたまま上空に登り離れながら叫ぶビスチェの行動に確かにと思うも、魔力欠乏状態が苦しい事を知るクロからしたらすぐにでも回復させれば体が楽になるだろうという純粋な親切心からの行動であり、どう言い訳しようかと考えながら複数のシールドを展開する。


「もうっ! 考えなしに敵を回復させるな!」


 クロの出現させた足場に着地をして背中から離れたビスチェがその背に平手打ちを入れ油断していたクロが落ちそうになり慌てて新たな足場を作り難を逃れ、それを見つめるアイリーンが「こんな時にイチャイチャしないで下さいね~」と声を掛けるとビスチェが耳まで赤くなり、クロは自身が乗っているシールドを移動させ連炎の顔の上へと向かい停止する。


「あの、大丈夫ですか?」


「大丈夫かだと……ふむ、先ほどの薬品は毒ではなかったのだな……気持ち程度だが魔力が回復しているな……」


「それなら次を注ぎ、」


 アイテムボックスを立ち上げ追加の魔力回復ポーションを手に取った所で慌てて声を掛ける連炎。


「ちょ、ちょっと待て! いや、待って下さい!」


 口調の変化にニヤリと口角を上げるアイリーン。既に脳内では腐った妄想が展開され始めているのだろう。


「頼むから鼻に入れるのは勘弁してくれ!」


 懇願するように声に出す連炎。口が完全に開かない事もあり籠った声だが鼻に異物を入れられるのが苦しいのは人でもドラゴンでも同じであり、それを察したクロは腕組みをしどうしたら安全に魔力回復ポーションを体内に入れられるかと思案する。


「キュウキュウ~」


「楽しそうだから様子を見に来たのだ!」


 キャロットに抱かれた白亜の声に目を見開く連炎。そのままキャロットはクロの近くに展開されたシールドに足を付け巨大な連炎を見つめる。


「キュウキュウ~」


「赤くて綺麗だと言っているのだ」


 古龍同士の美的センスもあってか巨大なドラゴンの顔を前に綺麗だと口にする白亜に、クロも考えを放棄して連炎の顔を見つめる。鱗に覆われたドラゴンの顔は目を見開いたまま固まっており美しいかと問われたら恐怖の方が勝るが、見開いた瞳の虹彩の形が炎を上げる火球のように見え角膜も薄っすらと赤く輝き「確かに綺麗だな……」と呟く。


「私の方が綺麗なのだ!」


「それをいうなら私の方が綺麗ですね~数も多いですし~」


 キャロットとアイリーンの言葉に笑いそうになるが白亜がキャロットの手から離れクロの下へと羽ばたきキャッチする姿がその大きな瞳に映り、胸元へ額を擦り付ける姿を下から見つめる連炎。


「……………………懐いているのだな」


 小さく呟く連炎に額を擦り付けていた白亜がピクリと反応し「キュウキュウ~」と楽し気な鳴き声を上げると穏やかな表情へと変わる連炎。


「こうして見るとやっぱり綺麗な顔立ちだな。瞳も赤くて綺麗だし、鱗の色とかも真紅で輝きもあるな」


「くっ!? 何を言って……人族に古龍の価値観がっ!」


 穏やかな表情が一瞬に変化して狼狽する姿にニヤリと口角を上げるアイリーン。


「クロ先輩はドラゴン相手でも発情する鬼畜変態野郎なのですね~ぐひひひ、これはこれで有りだと思いますよ!」


 脳内を発酵させるアイリーンの言葉にドン引きするクロはシールドの上で体の角を変え視覚からアイリーンを外して口を開く。


「見て下さい。白亜はまだこんなにも幼く、まだ出産とか無理です。白亜が成人するまでどの程度かかるかわかりませんが、今はまだ無理だと理解できますよね?」


 話を戻し口を開くクロ。狼狽していた連炎はピタリとその動きを止めて蔦に絡まり合街大きく開けられない口を開く。


「そんな事は理解している。俺様は白亜さまを連れ七大竜王様の会議に向かい許可を貰おうとしただけだ。成人するまであと五百年は掛かる事ぐらい知っている」


「キュウキュウ~」


「白亜さまはクロと番になると言っているのだ! 私もそれが良いと思うのだ!」


 連炎の言葉を受け以外にもちゃんとした紳士なのだと思っていると、白亜の鳴声とその翻訳に顔を引き攣らせるクロ。


「なるほど、クロ先輩がロリコンだったのですね!」


 手を合わせ納得するアイリーンの言葉にクロは顔を引き攣らせるのであった。





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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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