表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
630/669

頼もしい増援とチームワーク



「お前はドラゴニュートが魔化した偽り姿と、古龍が表す真の姿との違いが分からぬ愚か者でもあるまい」


「だからどうした! 若者の意思を尊重し命を懸けるのも老人の務め! これでも若い時の活躍は伝説とまで謳われておる! 腕のひとつぐらいは覚悟しろ!」


 頭一つ大きな連炎が巨腕を上げ鋭い爪が輝き振り下ろされ、それを両手でガードするドラン。左腕でその爪を凌ぐが鱗が飛び散り鮮血が流れ苦悶の表情を浮かべる。が、瞳は次の攻撃を見据え怯むことなく前に出る。

 更なる巨腕がドランを襲い同じように鱗が飛び散り血が流れるが足を進め、連炎が届く間合いへと入り大きく口を開き鋭い牙が走り、慌てて数歩下がり間合いを取る。


「老人の牙が怖いか?」


 両手をだらりと下げながら間合いを広げた連炎へ口を開くドラン。


「俺様がお前を怖がるはずがない! さっさと地に伏せ許しを請うがいい!」


 体を捻り尻尾が躍り傷付いた両腕でその一撃を受けるドラン。


 そんな激闘の中でロザリアとの簡単な打ち合わせを終えたクロへ朗報が届く。


(クロ、手伝う)


「おいっ! 無茶だ!」


 一味からの念話に反応して叫ぶクロ。


(無理しない。援護だけ)


 一味も古龍の実力を痛いほど知っており、一味たちが住む大地の亀裂は古龍のブレスが原因で大地が裂けた場所であり、蜘蛛の女王からその怖さを教え込まれているのだろう。


「助かる……くれぐれも命を大事にだぞ!」


「ギギギギギ」


 七味たちからの声に無茶しなければと思っていると、糸を飛ばし飛び散ったドランの鱗を各自で回収し粘着性の高い糸で背中は腹に付け空中へと糸を飛ばし躍り出る。ドランとも連携を取ろうとしたのか二美が頭上へ着地し念話を伝えるとドランは「これは頼もしい援軍だ!」と再度闘志を漲らせ、体が輝き傷付いていた腕の傷が瞬時に塞がり回復する姿に連炎が驚き、他の七味たちも各々動き回り驚愕し固まったチャンスを生かすべく粘着力のある糸を飛ばす。


「もう七味たちとドランさんだけでも勝てるかもな」


「そう上手く行けばよいが、あの古龍は炎帝に連なる者なのじゃ。ほれ、体を巡る赤いラインに付いた糸が燃えたのじゃ。ほれ、希望的観測ではなく実行するのじゃ!」


「はい、合わせて下さいね!」


「任せるのじゃ!」


 クロはシールドに乗り再び上空へと向かい、再起動した連炎は全身から炎を巻き上げ慌てて空へ逃げる七味たち。ドランも回復した両手でガードしながらも一歩ずつ間合いを詰め、炎を纏った連炎の一撃を両手で防ぐが、その威力は先ほどまでとは桁違いなのかドランを吹き飛ばし屋敷の結界を背に留まるドラン。


「くそがっ! 俺様に本気を出させるなっ! ウロチョロする蜘蛛も焼き殺してやる!」


 再び背を仰け反らせ空気を吸い込む連炎。そこへシールドに乗ったクロが現れ大きく口を開き連なる牙と洞窟のような口内に恐怖しながらも魔力創造し創造された大量のコショウが吸い込まれる。


「うぐっ!?」


 コショウを吸い込んだ連炎が仰け反っていた体を俯かせ、クロはシールドを大量に展開し大きく咽る連炎。瞑った目からは涙が溢れ、鼻からは炎の筋が放たれ、口からも咳と共に火炎がまき散らされるが、分散している事もありブレスと呼べる威力はなくクロのシールドでもその効果を発揮して地上へ届くことはなかった。


「シャドーランス×20」


 打ち合わせ通りにロザリアからの魔術が放たれ咳き込む連炎の喉へ黒い槍が襲う。が、巨大な古龍のクシャミに数本が逸れ多少のダメージが逆鱗に触れるがコショウの痛みの方が大きいのかクシャミと咳を繰り返す。


「うふふ、先ほどのお礼をさせていただきます!」


 屋敷の結界まで吹き飛ばされたドランの足元から立ち上がり瞬時に魔化したメリリはナナイの下へと走り、巨大イナゴ討伐の際に力いっぱい投げ敵の背に乗った方法を思い出したのか簡単に説明し、咳き込む連炎へその身をハンマー投げの要領で投げ飛ばされ特攻を仕掛ける。


 予定外の行動に一瞬クロが遅れ、ロザリアは連炎の足元に影魔法を使い。本来であれば緊急避難やアイテムバックなどと同じように空間を作る効果なのだが、ガクリとその身が左に崩れ、クロは急ぎ女神の小部屋を展開し最大限の大きさの入口を作り連炎の右足の踵が収まると後ろへと重心が崩れ、更にはメリリの一撃が眉間に入りその身を大きく後ろへと倒し仰向けに大地に転がる。


「ギギギギ!」


 一美の叫びに七味たちが一斉に粘着力のある糸を放出し、咽ていた連炎が起き上がるのを阻害し、クロは再び滑り台状のシールドを展開すると地上までノンストップで滑りあまりの速さに恐怖を覚えるが、炎をその身に浮き上がらせる姿に前傾姿勢になりスピードを高める。


「古龍相手に凄いですね……」


「一対多数だとしても、古龍を転ばせるとは驚きだわ……」


「クロらしい戦い方ね! 相手の嫌がる事を平気でやってのけるクロの勝ちよ!」


「ですが、ダメージはほぼなさそうですが……」


「クロさま今です! 拳で逆鱗を叩き割って下さい!」


 地上で見つめていた乙女たちの声は恐怖するクロに届いておらず、滑り台から転げるように着地し、起き上がる事はせず大地に手を置き力ある言葉を口にする。


「精霊王の蔦!」


 クロが手を置いた大地からは無数の棘のある蔦が生え一気に連炎を襲い、目を擦り起き上がろうとする手を巻き取り振り払おうとするが、大きなクシャミをした事で鼻と口から炎を上げるなか、更に蔦は本数を増やし足や胴へ巻き付く。


「なっ!? 何だ! これは!!」


 コショウで咽ながらも現状を把握した連炎は焦り足や腕を動かし蔦を排除しようとするがそれは叶わず、全身から炎を巻き上げる。


「うふふ、これで止めです!」


 自由落下していたメリリがダガーを構え逆鱗へ一撃を加えようとするが、メリリも蔦に飲み込まれ「ふえぇぇぇぇぇ」と情けない声を上げ、クロは大精霊の蔦が炎に呑まれるなかで特攻を仕掛けたメリリを蔦を操作して影響のないロザリアの横へと移動させ大きなため息を吐く。


「はぁ……想定外でしたが上手く行きましたね」


「うむ、あとは奴の魔力が切れるのを待つだけなのじゃが……クロは大丈夫なのかの?」


「はい、精霊王さまと契約してからは魔力切れを起こす気配すらないですね。今もあれだけ魔力を使いましたが問題ないです」


「うむ……クロは我らやエルフよりも魔力量が増えたのかもしれぬのじゃ……下手したら神の領域に……」


「あの、それよりも、この切れない蔦を解いて下さい」


 ロザリアの横で打ち上げられた魚のようにピチピチと跳ね助けを求めるメリリに苦笑いを浮かべるクロ。

 吹き飛ばされたドランは二美から回復魔法を受け立ち上がり魔化したままクロたちの下へ足を向け、精霊王の蔦でグルグル巻きになり煙を上げる姿に絶句する。


「古龍を相手に誰一人欠けることなく勝利するとは……」


 時折、精霊王の蔦の間から炎を吹き出す連炎を見据え呟くドラン。


「これだけの火力なら料理に使えそうですが、怒られますかね?」


 蔦に巻き取られ転がる連炎のまわりの地面はマグマのごとく融解し赤黒く変色しており、その熱を料理に使えないかと口にするクロ。


「ぐははははは、クロらしい! 実にクロらしいのう!」


「うむ、我もクロらしいと思うが、逆の立場なら怒りを通して呆れるかもしれぬのじゃ」


「うふふ、私はマシュマロを焼いて食べたいですねぇ」


「ギギギギギ」


(薪が必要ないのはお得)


 七味たちも体を上下させ喜び、一美からは念話が届き、それに反応したクロは同意見の一美に「そうだよな。薪を作る手間を考えればお得だよな」と口にするのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ