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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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メリリの敗北と連炎



 その手からダンベルを離すと自由落下に伴い地面へと落ち大地にめり込ませ、メイド服のスカートを翻らせたと思った次の瞬間には二本のダガーを両手に持ち下半身を魔化させ間合いを詰める。


「ほぅ、ラミアであったか」


 驚きの声を上げながらも両手をドラゴンの巨腕に変え、右手で払い左手は防御なのか手を広げる。そこへ閃光のような斬撃が襲い金属音が複数回辺りに響く。


「凄いですね……一瞬で避けながらも間合いを詰めて体を回転させながらの六連撃。あのイケメンは手で難なく受け止めていますが、ミミズ腫れすら起こさないとは……でも、少し痛そうな顔をしていますか?」


 立ち上がったドランへと視線を向けつつ口にするアイリーン。


「魔力を武器に通しておるがアレではダメージは与えられん。それよりもエルフェリーンさまを呼んでほしいのだがのう」


「エルフェリーンさまは外出中ですね~今年中には戻ると言っていましたが、今はエルカジールさまの所へ行っています。シャロンくんたちも実家に帰省中ですね~おっ、また六連撃」


 アイリーン回答に顔を歪めるドラン。この事態を素早く解決できるエルフェリーンがいない現状を憂いての事だろう。


「くっ! 思っていたよりもやるようだな。だが、これでどうだ!」


 メリリが間合いを広げようと後ろへと飛び去ろうとするが下半身を魔化している事もあり尻尾が遅れ、それを掴まれ苦悶の表情を浮かべる。更に巨腕を引き地面を引きずられ、鞭のように大地に打ち付けられるメリリ。これには流石のメリリも大ダメージを受け、アイリーンは瞬時に魔化した下半身で速度を上げ白薔薇の庭園を抜く。


「今度はお前が、見たことのない種族だが相手になるか」


 戦い慣れているのか手にしている尻尾に力を入れもう一度振り上げアイリーンを迎撃しようと構えるが予想だにしない行動に目を見開く。


 腕が届くギリギリのところで糸を放出しそれを払うためにメリリを鞭のように使い、白薔薇の庭園が輝き桜散るエフェクトに一瞬目を奪われ手にしていた重みが消えたことに驚く。


「思い切った女である! これは楽しめそうであるな!」


 褒めているのか手にしている二十センチほどの太い尻尾を手放し、アイリーンは素早く後退し空へ放出されたメリリへ糸を飛ばしエクスヒールを使い、糸をコントロールしてドランの頭上へ落としお姫様抱っこで受け止められ、斬れた尻尾はエクスヒールの効果で既に回復済みであったが意識を失っているのか大事そうに抱えながら後退るドラン。


「生きた心地がせんわい……クロもそうだが、こ奴らはどうしてこうも無茶をするのか……はぁ……」


 大きなため息を吐きながらメリリを抱えるドランはこちらへ向かってくる集団に目配せをし、やって来たクロたちは目を見開きながらも急いでシールドを展開するクロ。


「ドランさんは無事ですか?」


「ワシは問題ない。それよりもアイリーンの嬢ちゃんが心配だのう。あの方は、」


「きゃっ!?」


 ドランが現状を報告しようとするがアイリーンが殴り飛ばされ慌ててフォローに入るクロ。だったが、その前にキュロットが先んじて動いており体を張って受け止める。


「悔しいですが、今の私には勝てそうもないです……」


 キュロットに受け止められながらも確りと話すアイリーンに、意識があり問題ないだろうと視線を金ぴか貴族風の者へと視線を向けるクロ。


「多くの者が来たが、俺様の相手をするか、大人しく白亜さまを出すか選ばせてやろう」


 急な話に一瞬呆気に取られるクロ。他の者たちも初めて要件を知り困惑の表情を浮かべる。


「白亜に要件が、」


「白亜さまと呼ばぬかっ!」


 大地を揺らすほどの叫びにも似た大声に本能的に数歩下がるクロ。アイリーンを抱いているキュロットはその威嚇にも似た大声に口角を上げ、ゆっくりとアイリーンをその場に置くと口を開く。


「あら、白亜を預かっている事が問題なのかしら?」


 挑発的なその言葉に貴族風の者の眉毛盾に変化し額にはあからさまに怒っているという欠陥を立て一気に走り出し、巨腕が迫るなかヴァルが姿を現し慌てて後方へと飛び間合いを広げる。


「天使だと……」


 驚きの表情へと変わり驚愕するが、クロが空気を呼ばずに口を開く。


「えっと、ヴァルです。それよりも白亜さまを出せと言われますが、自分が白亜さまを白夜さまから任されて育てているのですが」


 天使からクロへと視線を変えて口を開く貴族風の者。


「遅れたが名乗らせてもらう。俺様は炎帝の子である連炎れんほである! 白亜さまのつがいとして生涯を共にする覚悟できた者である!」


 高々に宣言する連炎の言葉に静まり返る一同だがアイリーンがぼそりと「ロリコンですね~」と口にし意味の分かるクロだけが吹き出しそうになるのを堪え、キュロットは挑発すればメリリを倒した連炎と戦えるのかと思っていたがそんな空気ではなくなり、保護者であるクロへ視線を向ける。


「主さま、ここは一度結界内へ撤退した方が……」


 ヴァルの助言に口を両手で押さえながら首を縦に振ろうしたが、首を左右に数度振り口を開くクロ。


「断る!」


「なに?」


「白亜はまだ幼いのは知っていますよね?」


「それがどうしたっ!」


「完璧なロリコンですね~」


「アイリーンはちょっと黙っててくれ。キュロットさんはアイリーンをどこか遠くへ捨てて来て下さい」


「あら、良いのかしら? 炎帝に連なる者だとしたらあいつは古龍種よ。エルフェリーンさまがいれば対処もできるでしょうが、全員で掛かっても撃退は難しいわよ」


 ニヤニヤとするキュロットの助言に後方で控えている乙女たちへ視線を向けやる気満々のロザリアやビスチェにナナイの姿に、ここは自分がどうにかしないと危険であると悟り口を開く。


「あの、一度色々と整理しませんか?」


「整理だと? 俺様は急がねばならん! それに、俺様が名乗りを上げたのにお前は自身の名も口にしない事が気に入らん!」


「クロさま、お下がり下さい!」


 連炎が叫ぶように言葉にしたところで聖女タトーラが拳に魔力を纏い走り出し、クロの横を通り過ぎようとし慌てて両手で腰にしがみ付き暴走を止め、その姿に本日二度目の驚きの表情を浮かべる連炎。ランスを構えるヴァルやキュロットに後方の乙女たちも同じように呆れ顔を浮かべ、ドランに至っては両手で顔を覆う。


「タトーラさん、落ち着いて下さい。何だか凄い人らしいので喧嘩はやめて下さい」


「いえ、あのような無礼者は数発殴った方が今後の為! 聖なる拳を向けるべき相手です!」


「ヴァル! 見てないで助けてくれ!」


「はっ! お任せを!」


 聖女タトーラを止めようとヴァルが動きアイアンクローを決めると、クロは腰から離れそのまま宙に浮き聖女が悶絶する声が響く。


「はぁ……師匠がいないだけでこんなにも暴走する奴がいるのかよ……早く師匠に帰ってきてほしい……」


 大きなため息を吐くクロに心の中で同意するドラン。それを眉間にしわを作り直し見つめる連炎は巨腕を握り締めクロへと間合いを詰めるのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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