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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
最終章 (仮)
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モフモフが増えた日常と炬燵



「クロ先輩! 大変ですよ!」


 帰るなり叫ぶアイリーンにウトウトしていたキャロットはソファーから身を起こし、その腹の上で同じようにウトウトしていた白亜が落ちそうになるが近くにいたグワラが支え事なきを得る。


「どうしたのじゃ?」


 リビングやキッチンにはクロの姿はなくアイリーンは浄化魔法を使い七味や小雪にオモチたちを綺麗に浄化させつつもリビングに現れ、シンクロしながら目を擦るキャロットと白亜へ視線を向け微笑みながらも、声を出したロザリアへ視線を向ける。


「人魚さんたちにお魚を頂きました! 夕食はお魚料理にすべきかと!」


「それは我ではなくクロにいうべきなのじゃ」


「そのクロ先輩がいないのすが……聖女ちゃんもいないですね……」


 リビングから視線をグルグルとまわし二階やキッチンへ視線を走らせるアイリーン。同じように小雪やオモチたちも視線を向け、その姿に吹き出すグワラとロザリア。


「キュウキュウ」


「クロは狩りに行ったのだ。ビスチェに運動しないと怒られていたのだ」


 目をパチパチとさせ大きな欠伸をする白亜。その欠伸もシンクロしている姿に姉妹だなぁと思いながらもビスチェさんと狩り? と首を傾げるアイリーン。


「うふふ、もしかしたらクロさまが寂しそうにしていたのでビスチェさまが狩りへ連れ出したのかもしれませんねぇ」


「シャロンくんが急に居なくなったから寂しがったのか……それなら納得できますね! むふぅ~」


 メリリの推理に納得しながら腐るアイリーンは鼻の穴を大きく膨らませ、隣でへっへする小雪に抱き付く。


「それはそうと、魚を持っているのならすぐに冷やすか捌いた方が良いじゃろう?」


「そうですね! 七味たちは手伝って下さい! オモチと小雪は寛いでて下さいね~」


「わふっ!」


 アイリーンが七味と共にキッチンへ向かい、火が入っている暖炉の近く移動する小雪。小雪が暖炉の前で態勢を崩し、そのまわりにオモチたちが群がる姿にロザリアは手をワキワキさせながら移動し、キナコの横に腰を下ろすとその手でサラサラした毛並みに手を置き優しく撫でる。


「うむ、触り心地が良いのじゃ」


「わふぅ~」


 キナコも撫でられるのが好きなのか数日前まで野生だったことが信じられないほどリラックスしながらその身を預け尻尾を振り、他のオモチたちは羨ましそうにそれを見つめ、オモチたちのリーダーであるカガミはロザリアへ僕も撫でてという視線を送り開いている左手で頭を優しく撫でると嬉しそうに尻尾を振り、その頭でもっと撫でてとグリグリ左手に擦り付ける。


「うふふ、もう完全に撫で慣れていますねぇ」


「うむ、小雪が教えたのか、それとも元から撫でられるのが好きなのか、オモチたちは一匹を撫でると羨ましそうに視線を向けて来るので撫でる手を止めるタイミングを失うのじゃ」


 そう口にしながら次々に撫でまわり表情を緩めるロザリア。


「では、私も撫でますねぇ」


 メリリの言葉に体をビクリと震わせるオモチたち。先ほどダンベルを力任せに投げツノトカゲを屠った事が頭に過ったのか、それとも恐ろしい力で撫でられると恐怖したのかは定かではないが振れていた尻尾が停止しピンと立つズンダ。その背に優しく触れ毛並みに沿って撫でられホッとしたのか尻尾はまだ左右に揺れ、メリリも手触りが気持ち良いのか表情を緩める。


「いま戻りました」


 リビングに響く声に白亜が身を起こし声の主に向け走り出し、撫でる手が止め口を開くロザリア。


「お帰りなのじゃ。アイリーンが人魚たちから魚を貰ったといってキッチンで下ろしおるのじゃ」


「それなら後でお礼に行かないとですね。ああ、こっちも鳥を仕留めフランとクランが外で解体をしてくれていますよ。ビスチェとキュロットさんは大きな猪を解体しているので手が空いている七味がいればフォローをお願いしたいのだが」


「ギギギ」


 クロの声はキッチンで作業する七味たちにも届いたのか数匹が外へ向け駆け出し、クロは魚なら手伝えるとキッチンへ足を向ける。


「お帰りなさいです。人魚さんたちから大量の魚を頂きましたよ~」


「ああ、手伝うよ」


 そう言いながら手を洗いアイリーンの横に並ぶと包丁を手に取り鱗が取り除かれたサーモンに似た魚へ刃を入れ捌き始めるクロ。腹を切り内臓を取り出して頭を落とし器用に三枚に下ろす。


「このサイズならフライや塩焼きにも良さそうだな」


「私的には鍋が良いと思いますよ~お鍋なら野菜もたっぷり食べられますし、何よりヘルシーですからね~」


「それならサーモンを使ったツミレとかも良いかもな。みそ仕立てのスープで締めはラーメンとか」


「いいですね~コーンをたっぷり入れて最後にバターとかもアリですね~」


「そうなるとヘルシーでなくなるが……」


「そこは今日狩りで走って来たという言い訳ができますから」


「言い訳なのかよ……」


「ふっふっふ、クロ先輩はまだ甘いですね~女子は常に美味しいものが食べたいのです! そして、その言い訳は心の中で確りと確立されているのです!」


 拳を握り締め力説するアイリーン。


「だが、これから冬になれば雪も降って動かなくなるし、正月が近づけばケーキや餅類を食べて太るぞ」


「そこは気合とアイディアでカバーですよ~雪が降れば雪合戦をしてカロリーを消費し、雪の中でも狩りに出かけカロリーを消費し、」


「炬燵に入ってミカンを補充するのか?」


 アイリーンが言い終わる前に冬の醍醐味を口にするクロ。


「それはそれ、これはこれ、炬燵はミカンですね~炬燵の用意もそろそろしないとですね~」


「去年と同じ場所でいいならすぐに準備できるな。一応は浄化魔法を掛けてくれな」


「そこは任せて下さい! うっ、メリリさんと目が合いました……」


 暖炉の前でオモチたちを撫でていたメリリだが炬燵というパワーワードを耳にし、いつの間にか間合いを詰めキッチンカウンターまで辿り着き期待に満ちた瞳を向けており、ダイエットと真逆の存在である炬燵という籠城兵器を迂闊に口にした事を後悔するアイリーン。


「うふふ、楽しみですね~炬燵は冬場の私の部屋といっても過言ではありません。お出しする時は手伝いますのでお声掛けをお願いします。もちろん炬燵の警備もお任せ下さい!これでも長年貴族の屋敷の門番としての働いた身。経験が生かせると思います!」


 冒険者から貴族にスカウトされメイド服姿で貴族の屋敷を警備していたメリリだが、炬燵の警備という聞きなれない単語に疑問が浮かぶクロ。アイリーンはその言葉に頬を引き攣らせている。


「うむ、炬燵は良い物なのじゃ。我も炬燵に早く足を入れたいのじゃ」


「わふっ!」


 メリリの横にはロザリアが現れ楽しみにしているのか目を輝かせ、更に後ろには小雪の姿がありお座りの姿勢で尻尾を振る。


「今年は炬燵の数を増やした方が良さそうだな……」


 リトルフェンリルたちも増え炬燵争奪戦が行われる事を危惧しながらクロは手を動かし、大量の魚を下ろすのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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