オモチとシャロンの頼み事
本日から最終章に入ります。
たぶん……タイトルにもありますがまだ(仮)ぐらいの構想で……読んで頂けたら嬉しいです。
霜が降り始め日に日に寒さが増し息が白くなる野外ではリトルフェンリルたちの小屋が完成した。屋敷の裏の斜面を削り砂利を敷き詰めログハウスのような小屋が斜面から迫り出るように作り、その下に熱を通す配管を這わせ床暖房とし、更に渡り廊下を作り屋敷の裏をまわる形で鍛冶場へ続けた。
「これなら寒い冬場も温かく過ごせるな」
「家が斜面の中へ続いているから夏は涼しいだろうね~」
「ほらほら、皆で中へ入って住み心地を教えて下さいね~」
「わふっ!」
アイリーンに続き中へと進むリトルフェンリル。それを見送りながら余った木片を片付けるクロとルビー。
「立派な狼小屋ができたな」
「クロ先輩の魔力創造で乾燥した木材やサビない鉄の菅を提供してくれたので助かりました。雪が降る前に終わったのも大きいです」
「本当にクロがいると便利ね! 今日は狼小屋完成の宴会ね!」
「うふふ、最近はオモチたちに散歩に誘われて体脂肪が減りましたので、どんな料理でも食べ放題です」
「オモチたちの話をするとお餅が食べたくなるのだ」
「キュウキュウ~」
リトルフェンリルたちの名前はその白い姿からオモチに決まり、リーダーの一番大きな個体をカガミとし、イソベとズンダにキナコとゼンザイとアイリーンが名付けたのである。その名が分かりやすいようカガミには小さな垂と呼ばれる白い四角が連結している飾りを付け、イソベにはノリで巻かれているような黒いラインを入れ、キナコは黄色い首輪、ゼンザイは小豆色した首輪に丸もちをイメージした白い丸が縫い付けられている。
「もうすぐ正月だと思うと食べたくなるが、宴会料理という感じがしないな」
「そうかな? 僕は甘いお餅で宴会しても良いと思うぜ~ドランがそろそろ持ってくるだろうし、初しぼりの米の酒が楽しみだぜ~」
「アレはアレで美味しいものね! オモチにチーズを乗せたらどうかしら? それなら白ワインに合うと思うわ!」
「キュウキュウ~」
「白亜さまはチョコを乗せたいと言っているのだ! 私は肉が良いのが!」
思い思いにお持ちに合いそうな具材を口にする乙女たち。クロは定番が一番だよなと思いながらも、ビスチェとキャロットの意見を合わせベーコンとチーズを乗せてピザ風にしたら美味いかもと思案する。
「立派なものが完成しましたね」
「渡り廊下まで作るなんて贅沢なオモチたちね」
「この渡り廊下なら雨の日にも走れますね。どこぞのメイドがすぐに太るので重宝しそうです」
「うふふ、それはメルフェルンさんの事ですね~重くて飛べなくなる前に走る事をお勧めします」
シャロンとキュアーゼにメルフェルンがグリフォンたちの散歩を済ませ現れ、メリリと視線を合わせ睨み合う二人。シャロンの腕に収まっていたフィロフィロが飛び立ちクロの胸に収まり甘えた鳴き声を上げ、白亜もキャロットの腕から飛び降りクロの足にしがみ付く。
「ピィー」
「キュウキュウ~」
「クロさんはモテモテですね」
「フィロフィロは甘えれば誰が餌をくれるかちゃんとわかっているのね」
「食べ物が貰えるのなら抱き付くのだ!」
「キャロットさま、ダメです! クロさまに軽々しく抱き付くのは淑女として宜しくありません!」
キャロットがクロへ飛びつこうとするが、その尻尾を力いっぱい握り阻止する聖女タトーラ。
「抱き付いても餌はやらんぞ。それよりもオモチたちが気に入ったのか窓からこっちを見ているな」
「みんな尻尾を振って可愛いですね」
「ゼンザイとイソベが窓を舐めているわね……」
「キュウキュウ~」
「窓は美味しくないのだと白亜さまが言っているのだ」
のんびりとした空気のなか完成したオモチ小屋を見つめる一行。アイリーンと共に外に出たオモチたちが走り回り賑やかな午後を過ごすのであった。
「で、結局はリビングで過ごすのな……」
夕食を食べ終えゆっくりとした時間を過ごしていたが暖炉の前でキナコが寝息を立て、それに群がるようにオモチたちが集まり寝息を立てる。そんな姿にクロが呆れたように口を開く。
「今から外に出ると寒いですから」
「そうかもしれんが、アイリーンが折角オモチ小屋の暖炉に火を入れたぞ」
「私的には小雪やオモチたちに囲まれて過ごす方が嬉しいですね~モフモフに囲まれて寝るとか前世でできませんでしたから」
そう口にしながら小雪を抱き締めるアイリーン。シャロンもフィロフィロを抱きながら優しく撫で同じ気持ちなのだろう。
「うふふ、可愛らしい寝顔ですね~明日からはオモチたちを連れ狩りですか?」
「そうですね~あの子たちはそれなりに動けますし、七味たちと組めば最強ですね~メリリさんも御一緒しますか?」
「うふふ、午後ならご一緒したいです。最近は朝が寒く……」
「そろそろ湯たんぽを用意しましょうか?」
「はい、お願いします。アレがあれば温かく起きることができそうです」
「たまには冬眠した方がダイエットになるのでは?」
「うふふ、私はメイドですから冬眠でメイド業務を怠ることはできません」
「メイド業務……確かに皿が綺麗になったな……」
多少は残るだろうと踏んで焼いた餅が綺麗になくなった皿を見てクロが呟き、近くで肩を揺らすシャロン。
オモチたちの名の由来となったきな粉や磯部に善哉などを多く作り夕食としたのだが、それらは綺麗になくなり最後まで善哉の鍋から離れず完食したメリリ。甘く煮た小豆はフィロフィロも好物で競い合うようにおかわりをしていたのである。
「明日も寒そうだから午後の暖かい時間には動物の動きが活発になりそ……ん? 念話かな? 何々……うん、うん? はぁ……」
エルフェリーンが口を開くが脳内に念話が流れ口を閉ざし、その姿はまるで電話を受けているように見え懐かしさを覚えるクロ。アイリーンは七味たちと罠を仕掛けた場所をメリリに教えながら明日の予定を組む。
「明日は僕とルビーで出かけるからね」
「念話と口にしていましたが何かあったのですか?」
「うん、エルカジールから念話が届いてね。どうも魔道駆動の調子が悪いらしくて……それにあっちの錬金術士にはカートの量産が無理みたいなんだよね~砂漠という事もあるけど走らせたらタイヤが埋まったりギアに砂が入ったりもあったみたいでさ。専用のコースを室内に作るよう助言しておけば良かったね」
「私も行くとなると……」
両手を胸の前で合わせクロを見つめるルビーに大きくため息を吐くクロ。
「エルカジールさまも白ワインが好きだったから飲まずに届けろよ」
「もちろんです! カートを広める為にも頑張っていきますので、少し多めにお願いします!」
晴れやかな笑顔を浮かべウイスキーや白ワインを受け取り、前にエルフェリーンからプレゼントされた収納バッグへと大切そうに収納するルビー。
「三分ラーメンや缶詰にお菓子もあれば砂漠で迷っても安心ですかね?」
これから二人が行くサマムーン王国は広い砂漠に覆われた地でありメリリが元住んでいた事もあり視線を向け、視線を向けられたメリリは「水の確保が難しいです……あの、たまには私もそれを食べたいのですが……」と口に出し、アイテムボックスから大量のペットボトルの水やヤカンなどを取り出すクロ。
「私はシーフードが良いですね~焼きそばも捨てがたいです……」
「うふふ、どれもスープが美味しいですよねぇ」
「我はあの不思議な肉が入っている醤油味が好みじゃの」
「あ、あの、エルフェリーンさまにお願いしたいのですが……」
三分ラーメンで盛り上がっているとシャロンが口を開き、エルフェリーンは珍しくシャロンに頼られている事が嬉しいのか笑みを浮かべるのだった。
もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。
誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。
お読み頂きありがとうございます。