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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十八章 聖女と秋
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熊カレーとホルモン炒め



 冬に向け脂肪を蓄えたキャッスルベアの解体は難儀を極めたがベテランのコボルト猟師やアイリーンたちの活躍もあり、その日のうちに五頭を解体し終え浄化魔法を掛けた内臓を料理するクロ。

 走竜も数匹解体したのだが肉質は固く、こちらの肉は小雪やリトルフェンリルが涎を垂らし見つめたこともあり皿に乗せると勢いよく齧りつき尻尾を揺らす。


「狼まっしぐらですね~」


「骨もガジガジと噛んでるのだ! 美味しいのだ?」


「わふっ!」


 キャロットが興味深げに見つめ、小雪がそうだと言わんばかりに吠える姿に大鍋の前で料理するクロへと視線を向けるが首を左右に振る。


「骨付き肉の骨は残すだろ?」


「残すのだ! でも、食べたことがないのだ!」


「骨自体には味もなくて美味しくはないと思うが、骨で取った出汁なら美味いかもな。豚骨や牛骨の出汁とかで作ったラーメンや鍋は美味いからさ」


「咽返るような豚骨スープもたまにはいいですね~細めんに絡むドロドロ豚骨とか久しぶりに食べたいですね~」


「ドロドロ系は作るのが大変だろうから鳥白湯ぐらいなら……ん?」


「食べたいのだ! お腹が減り過ぎて音も出なくなったのだ!」


「もう少しだから我慢してな」


「味噌が焦げる香りがお腹を刺激するのだ!」


 恨めしそうな声で叫ぶキャロットはフランとクランが作る熊ホルモンの味噌炒めを前にお腹を抑えて涎を流し、コバルト領の兵士たちや村のコボルトたちも鼻をスンスンしながら香ばしく焦げた味噌の香りにお腹を鳴らす。


「この時期の熊は脂がのって美味いが、クロの作った料理なら数段期待できるね」


 赤ちゃんを抱きながら現れたポンニル。チーランダはキャロットの横で鼻をスンスンさせ尻尾をフリフリさせ、ロンダルはエルフェリーンに連れられ城から転移してきたシャロンと再会し会話を楽しんでいる。


「おっきなクマさんでした!」


「あれほど大きなクマが討伐されたのですね」


 村の広場にやぐらを組みキャッスルベアの頭から繋がる皮を吊るした姿に目を丸くするアリル王女とハミル王女。他にも専属メイドや影と呼ばれるメイドや兵士も数名連れ現れた一行は同じように目を丸くする。


「王女さま方も来られるなら相応の場所を用意したのですが……」


 レトリーバル辺境伯が申し訳なさそうに口にするがアリル王女とハミル王女は首を傾げ、その間で口をポカンと開けたまま固まるソルラ。


「クロと一緒ならどこでも大丈夫なのですよ?」


「そうですね。クロが出してくれたテントは寝心地も良いですね」


 微笑む王女二人に今日はこっちに泊まり込む気だと知ったクロはアイテムボックスを起動させテントの数を確認する。


「これほど大きなキャッスルベアが討伐されるとは驚きですわ……」


 ソルカ伯爵夫人が漏らした言葉に頭をカクカクと動かし頷くソルラ。戦っていたサイズよりもかなり小さくなっているのだが五メートルサイズの熊を前に驚きが隠せずその身を震わせる。


「一度茹でてあるから野菜に火が入り味噌が軽く焦げたら完成でいいからな」


「ん……なら完成……」


「こっちの熊肉のカラアゲも完成だぞ」


「ギギギギギ」


 フランとクランが担当するクマの味噌炒めと熊肉を使ったカラアゲに、七味たちが作る熊のバラ肉を使ったカレーがテーブルに並び、ナンはコボルトの主婦たちがクロに教わり量産したものが並ぶ。


「カレーなのです!」


「クロさまに掛ればどこでもお城を越えた料理が食べられますね!」


 両手を上げて喜ぶアリル王女と、微笑みながら持ち歩いているアイテムポーチからマイマヨを取り出すハミル王女。キャロットと白亜も椅子に座りスプーンを構える。


「じゃあ、みんな、今日は飲もうぜ~カンパ~イ!」


 木製のジョッキを掲げるエルフェリーンにまわりの者たちもジョッキを掲げて声を合わせる。


「乾杯!」


 地鳴りのような乾杯が響き泣き出す赤ちゃんコボルト。それを揺らしながらあやすポンニル。


「ポンニルの赤ちゃんは元気だね~それだけ泣けるのなら健康に育つね~」


「赤ちゃんは元気が一番ね。鳴き声に精霊たちも驚いているわ」


「うふふ、お耳がピクピクして可愛いですね~」


「うむ、ふわふわした耳に愛嬌があるのじゃ」


 ポンニルが抱く赤ちゃんを見つめ微笑む女性たち。


「美味いのだ! カレーも味噌炒めも美味いのだ!」


「キュウキュウ~」


 ナンにカレーを付け口に入れ叫ぶキャロットと白亜。アリル王女もスプーンで上品に口に運び甘口のカレーに表情を蕩けさせ、ハミル王女はカレーにマヨを入れ微笑みナンを付けて口に運ぶ。


「ふわぁ~これは凄いです! こんなに複雑な味は初めてです!」


「それにこのパンも美味しいわ! 薄くて硬いのかと思ったらサクサクしながらももっちりで、このままでも十分に美味しく食べられるわ」


「こちらは内臓を使っているらしいが……美味いっ! 何とも言えぬ食感と味付けが絶品だ! 酒が止まらなくなるぞ!」


 コバルト家が絶賛しながら食べ始めたことで家臣たちや兵士たちも料理を口に入れ酒を煽り、コボルトの村人たちも配られたワインや料理を口に入れ新たな味に歓喜する。


「このワインは絶品だぞ!」


「こっちのカリカリした肉も初めて食べるが、こんなに美味い物がこの世にあるとは驚きだ!」


「スープも見た目はアレだが美味すぎるっ!?」


 そんなリアクションを耳に入れながらクロは大鍋の前で鍋の様子を確認しながら浮いてくる灰汁を取り続けていた。


「ある程度煮えてからが大変だな……」


「いつでも手伝いますのでお声掛けをお願いします」


「ああ、初めて作る料理だから上手くいくか心配だが、毛と皮の処理は大変らしいから手伝ってくれ。ある程度煮ないと爪も抜けないだろうし……ん?」


 聖女タトーラと話していると一匹のリトルフェンリルがクロの前でお座りをし、少し離れた後ろにはいつものサイズの白亜がおり同じように尻尾を揺らしている。


「わふっ」


 料理をしている事もあり撫でられないぞ、と思っていると聖女タトーラが微笑みながらその頭を優しく撫で更に激しく尻尾を揺らすリトルフェンリル。


「主さま、もしかしたら他の餌が欲しいのかもしれません。小雪からその様なオーラを感じます」


 感情や気持ちがオーラに現れるのか疑問に思うクロだが犬用の某ち○~るをアイテムボックスから取り出すと、それだと言わんばかりに白亜が吠え尻尾が飛んで行きそうなほど左右に揺らし、近くにいたリトルフェンリルたちが距離を取るほどである。


「やるのは構わないが一本だけだぞ」


「わふっ!」


 小雪が走りクロの下に向かい大きく口を開け尻尾を振り、聖女に撫でられていたリトルフェンリルも大きな口を開く。


「ヴァルとタトーラさん、お願いします。ああ、ロンダルとメリリさんもお願いできますか?」


「うん! 楽しそう!」


「私も! 私もやってみたい! あむあむ……」


「うふふ、お任せ下さい」


 ロンダルが急いでクロの下に向かい、チーランダは興味を持ったのかカレーを急いだ食べ席を立ち、メリリはカラアゲを口に入るだけ入れてからクロの下へと向かう。


 聖女タトーラがチューブを絞りながら口に入れるとリトルフェンリルはその味に仲間の下へ走り尻尾を振り、白亜もヴァルから貰い尻尾で飛べるのではないかという勢いで美味しさを示す。


「ここでは料理の邪魔になりそうですね。少し場所を移しましょう」


 聖女タトーラの提案に広場から少し離れてち○~るを与え、その姿をツマミに酒を飲む兵士たち。

賑やかな夕食が騒がしい酒盛りに変わり夜が更けてゆくのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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