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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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仕事の早いアイリーンと白亜の気持ち



≪この任務が終わったら私はあの人に告白するんだ……行ってきます!≫


「おい、こらっ! 変な死亡フラグを残して行くな!」


 アイリーンのボケに大声でツッコミを入れたクロは、人差し指を唇の前で立てるビスチェにローキックを食らいお尻を両手で押さえながら数歩前進して蹲る。


「作戦開始に叫ぶ阿呆が何処にいるのよ。馬鹿!」


「今のはクロが悪いと思うなぁ~」


「何をやっているのですか……」


 仲間から白い目で見られたクロはツッコミを入れた事を後悔しつつ、お尻を押さえながらもアイリーンの作戦成功を祈る。


「異世界人だったら絶対にツッコミを入れるっての……はぁ……」


「中々よいチームワークなのじゃ」


「それでは私は騎士と冒険者たちを集めておきましょう」


「うむ、我も一緒に行くが……その、よいのか?」 


「そうだよ。人身売買はかたきなのだろう?」


 ロザリアとエルフェリーンに問われたラルフ静かに目を閉じて口を開く。


「それはもう百年も前の話です……人身売買をする者を捕まえ続けましたが心が晴れる事はなく、捕まえれば捕まえるだけ虚しくなるだけです……」


「う~ん、ラルフが爺臭い事を言うようになるとは時の流れを感じるねぇ。僕は今でもエルフたちを奴隷にした帝国は許す心算もないし、今回の事だって大々的に王室と国民に触れまわるからね~何処が糸を引いているかは解らないけど、絶対に潰すから……

 それと僕は先日、面白い本を手に入れてね……この本があれば殺した相手だろうがアンデットに変えて真実を口にさせる事ができる!」


 アイテムボックスからネクロミノコンを取り出すエルフェリーンに、閉じていた瞳が開き目を輝かせるラルフ。


「おお、それは珍しい……はぁ……まだまだ我の仕事が終われないのう……」


「まだ検証は一件だけだけど、骨にまで風化した研究者をスケルトンに変えて話をしたよ。彼の研究は王国に預け可能ならダンジョン農法を確立して欲しいものだね。こんな違法麻薬の栽培ではなく美味しい野菜や穀物を育てて欲しいな」


 足元に広がる麻薬畑を見ながら口にするエルフェリーンに頷く『草原の若葉』たち。


「うむ、死者から事情が聴けるのならば敵討ができる確率も上がるかもしれんのじゃ。我は爺の思いを継ぐ気はないが、爺がくたばるまでは一緒に行くのじゃ。ほれ、畑を管理している者たちを集めて外に向かうのじゃ」


「そうだな……後は睡眠薬が上手くいけばいいが……」


 アイリーンが向かったアジトのある方へ向き軽く頭を下げると、その場を瞬時に移動するラルフとロザリア。


「僕たちは洞窟から出てきた犯人を捕まえるからね。ルビーは辺りを警戒、クロはシールドを出しながら警戒、ビスチェと僕で捕縛。ギルドマスターは捕縛した者の確認をお願いするよ」


「キュウキュウ」


 名を呼ばれなかった白亜がリュックから顔を出し抗議の声を上げる。


「白亜はみんなの応援だ! でも、静かに応援しないとダメだぜ~」


「キュル」


 任務を与えられたのが嬉しいのか喉を鳴らす白亜。すると、宙に見覚えのある文字が描かれ読み上げるクロ。


≪任務完了。捕らわれていた貴族令嬢発見! 頬に痣があるけど無傷≫


「仕事が早い事で……」


「良くやったよ! あとは寝ている所を襲えば僕らの任務完了だね!」


「どっちが悪い事をしているか解らなくなるわね……」


 ビスチェの言葉に確かにと思うクロ。


「人身売買に違法植物の育成。王国法なら死罪だね。その前に情報を入手しなきゃだぜ~これでも拷問は得意だし、奥の手もある! ラルフが追う闇ギルドの情報が入ればいいけど……」


 天魔の杖を強く握りながら洞窟へ向け歩き出すエルフェリーン。その横に降り立つアイリーンはドヤ顔でクロへと視線を走らせ、音を立てない様に拍手するクロとビスチェにルビー。


「さあ、人身売買の犯人を捕まえるわよ」


≪洞窟の中には五名のそれっぽい男。いくつか遺体もあり……≫


「遺体も地上へ運びだすぞ。ダンジョンに吸収させるのは心が痛むからな……」


 ギルドマスターの言葉に静かに頷き足を進める一行。

 アイリーンの報告を受けながら足を進めると大きな岩にぽっかりと口を開けた洞窟が確認でき、慌てて背を低くして茂みに隠れるクロ。


「そろそろ睡眠薬が効いている頃だろう。アイリーンは先を……クロにシールドを張って貰い席に進まないと僕たちが寝ちゃうね! いま気が付いたよ!」


 エルフェリーンの言葉に白い目を向けるクロ。ビスチェとルビーも気が付いていなかったのか「確かに」と小さく呟く。


「はぁ……体を包み込むようなシールドですよね……球体にした方が簡単ですから入るのは師匠とアイリーンに自分で良いですか? 複数の大きなシールドを管理するのは大変ですから、ビスチェとルビーはここで見張りという事で」


「仕方ないわね! ちゃんと師匠とアイリーンを守りなさいよね!」


「ああ、頑張るよ。無理しない様にするからな」


「無理して一斉にシールド解除なんてしたら、僕らが洞窟で寝ちゃうからね。クロは無理をしないでシールド管理に重点を置いてくれ」


≪クロ先輩に私の命を預けます……≫


「さっきから言いたい台詞を言っているだけだろ……」


≪ばれてる!? 一生に一度は言ってみたい台詞ですね≫


 こいつは異世界生活を本当に楽しんでいると思うクロ。


「それでも緊張感は持ってくれよ~睡眠薬が効かない体質とかもあるからね。ダンジョンでの油断は死に繋がるよ」


≪はい! 気を付けます!≫


「俺も気を付けるが、師匠だって気を付けて下さいよ」


 たまにドジをするエルフェリーンの姿を目にするクロから声を掛けられ、笑顔を向けて振り向き口を開く。


「もちろん僕は気を付けるぜ~でも、心配してくれて嬉しいよ」


 頬笑みを浮かべるエルフェリーンに一瞬ドキッとするクロは両頬を軽く叩くと、ルビーにリュックを預け白亜は信じられない顔を浮かべリュックから飛び出しクロの胸に飛びつく。


「キュキュキュー」


 両手で確りとクロの胸に抱きつき絶対に離れないとでも言っている様な鳴き声を上げる白亜。


「あはは、クロは私が守るだってさ。愛されているねぇ~でも白亜、ここからは本当に危険だからね。僕としても白亜はお留守番しててほしいかな」


「ルビーが嫌なら私が抱っこするわよ」


 それでも「キュウキュウ」と鳴きながらクロから離れない白亜に、リュックをルビーから受け取ったクロは「ほら、入れ。その代わり絶対に飛び出したり無駄に鳴いたりするなよ」とリュックに入った白亜と瞳を合わせ口にする。


「キューキュー」


「任せてだってさ。心強いが無理だけはしない事! いいね!」


「キュウキュウ」


 エルフェリーンに元気に返答するとその頭を優しく撫でられ目を細める白亜。クロはリュックを背負うと気合を入れ洞窟へと足を向ける。


≪寝ている賊を縛る簡単な任務です! が、油断なきよう頑張りましょう!≫


 宙に浮かぶ文字に敵のアジトへと侵入するクロたちなのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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