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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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ダンジョン農法と違法植物栽培



 七階層へと下りると作戦通りにアイリーンとロザリアが走り出し、細い糸を張り巡らせ魔物や闇ギルドの者たちを探し、エルフェリーンとクロにルビーとギルドマスターは歩きながら監視者が居ると仮定し、発見されれば何らかのアクションを起こすだろうと囮役で動きを見る。


 魔糸をできるだけ伸ばしたアイリーンが糸を飛ばし監視者がいない事を確認すると、『銀月の縦笛』と『ザ・パワー』たちが七階層へと招き入れられ『ザ・パワー』はこの場に残り道を塞ぐ。


「『銀月の縦笛』は無理せず戦闘を避けながら八階層を塞いでくれ、『ザ・パワー』は周囲の警戒ともし冒険者が来たら顔と名前を覚えて追い返せ。これはギルドマスターの職権だからな。あとで訴えられても問題ない。頼んだぞ!」


「おお!」


「任せて下さい! それよりも、皆さん気を付けて下さいね」


「ああ、無事に帰ったらみんなで打ち上げをするからね。僕は特別なお酒を出すから楽しみにしてくれよ!」


「はい! 楽しみにします!」


「それって……」


 思わずジト目を向けるクロに笑顔を向けるエルフェリーン。


「さあさあ、闇ギルドを討伐しようじゃないか!」


「貴族の救出もだぞ。期待しているからな」


 クロの背中をバンバンと叩くギルドマスターに、俺もですか? という顔をするクロ。


「クロのシールドで解放した貴族を動けなくすればいいわ。最悪は盾にしても問題ないわね!」


「問題にしかならないだろそれ……はぁ……」


 ため息を吐きつつも足を進めると、木々が広がり蔦の絡まった植物や毒々しい色の果実を付ける植物が増えて行く。


「白亜はその辺の果物を取ろうとか思うなよ。アレとかは食虫植物で果実に見えるが横に割れて捕食してくる魔物だからな。ルビーも手を出すなよ」


 クロが指差す先には紫のアケビのような果実が蔓にぶら下がり甘い匂いを放っており、小さな石を拾うと果実に向かい投げるとバチリと音を立て閉じる果実。


「キュウゥゥゥ」


「ヒェッ!? 何ですかアレ! 怖すぎますよ!」


「静かに! 声を上げずに驚いてくれ。あくまでも潜入中だからな」


 慌てて両手で口を塞ぐ白亜とルビー。


「解ったなら果実に手を出すなよ。他の果実も似た様なものだからな」


 コクコクと頷く白亜とルビーにクロは辺りを警戒しながら足を進め、それを追うルビー。


 先を進むエルフェリーンが足を止め左手を大きく開き止まれの合図を送るとピタリと足を止めるギルドマスターとビスチェ。後ろを歩くクロたちも足を止めると、先には畑があり青々と茂る違法薬物。


「土壌を調べたいけど……あれは元冒険者かな? それに騎士だった者たちが手を縛られて水やりと雑草を抜いているね……」


 小声で先の光景を説明するエルフェリーン。奴隷のように働かされ痩せ細った冒険者と騎士だと思われる服を着る者。その奥では監視役だと思われる男が椅子に座り作業を見つめており、エルフェリーンは左手でまわり込むように指示を出す。が、瞬きほどの速さで監視役の後ろに回ったロザリアは後頭部へとレイピアの握り部分で強烈な一撃を与え前のめりに倒れる。


「ありゃ、もう倒しちゃったよ」


 呆れた声を上げるエルフェリーン。作業をしていた者たちは男が崩れ落ちた音と姿に呆気に取られるが、次第に意味を理解したのか喜びの声を上げる。


「助けに来てくれたのか!」


「もう草むしりは嫌だ!」


 五名ほどの奴隷扱いされていた者たちがロザリアの元へと向かい、人差し指を立て静かにするように合図を送るとピタリと声を殺す。


「うむ、まだ他の者たちが解放されてはいない現状でばれるのは避けたい。お前たちは作業する振りでもしていて欲しいのじゃが構わぬか?」


「また草むしりかよ……」


「了解した。私の腕では助太刀どころか足を引っ張るだろう……すまないがお嬢さまたちを解放して欲しい」


「うむ、その為に来たからのう」


 ロザリアの説明に納得した者たちは作業をする振りを続け、倒れている監視者をロープで縛っていると、まわり込んで来たエルフェリーンたちと合流し、ギルドマスターが猿轡を嵌め死角なりそうな木陰へと運ぶ。


「ほら、細かい紫水晶が土に混じっているよ。これがダンジョンからの干渉を防いでいるのだね」


「それよりも先へ向かいましょう」


「これと似た畑があと二ヶ所あるのじゃ」


≪正確にはあと一カ所≫


 魔力で生成した糸がロザリアの前に出現し、ドサリと糸でグルグル巻きにされた男が降ろされドヤ顔をするアイリーン。


「いや、そこはさっき解放したよ。残りは洞窟の中にいる者たちと捕らわれている者の救出だ」


≪えっ!? 私の警戒用の糸を全て避けてる……≫


 声の主はラルフでありその肩には植物の蔓でグルグル巻きにされ気絶した男が担がれニヤリと笑い、驚いた表情から悔しそうな顔へ変わるアイリーン。細く魔力で生成した糸をそこかしこに飛ばし、触れた者を感知していたアイリーンからしたら糸を全て避けながら近くまで接近された事に驚き悔しかったのだろう。


「ラルフ!」


「奴らが異変に気が付く前に作戦を詰めましょう」


 エルフェリーンの喜ぶ声にラルフが音もなく地面に着地すると気絶した男をギルドマスターが引き取り、ラルフお手製の簡単な地図を広げ素早く作戦会議が開かれるのだった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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