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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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クロの評価とSランク冒険者



「若手のエースとか呼ばれていたが……俺たちはまだまだだったな……」


「『草弁の若葉』はキラーマンティスを瞬殺できる奴で構成されているのかね……」


「凄いというか……常識外というか……」


「そもそもエルフェリーンさまはSランクだからな。俺の知る限り五百年は冒険者をしている。数年冒険者をしているお前らが張り合う事自体が間違っているからな。俺だってギルドマスターと呼ばれているが、エルフェリーンさまからしたらひよっ子の分類だろうしな……

 あれを見てやる気をなくすなよ。寧ろ、ああいった戦い方もあるし、本当の強者は強さを誇らない……アイリーンといったか、あいつは冒険者ではないし……ああ、これは極秘なんだが新しい人種らしいぞ。アラクネという新亜人種だ。お前らの常識で考えずに……慣れろだな」


 ギルドマスターの言葉に『銀月の縦笛』たちは頷き、『ザ・パワー』の面々もハイタッチをするアイリーンとビスチェを見つめる。


「あの、クロと呼ばれた男は強いのですか?」


 イケメンリーダーがアイテムボックスに魔石とドロップアイテムを収納するクロを指差しギルドマスターに問うと、何やら困った顔を浮かべる。


「クロは強いというよりも便利だな。何度か戦っている姿を見たが積極的に戦闘には参加してはいないが、荷物の搬入やアイテムボックスのスキルを使いポーターとして行動を共にしている。ただ、エルフェリーンさまに認められているのだから只者ではないだろうな」


「エルフェリーンさまに認められているのか……」


 眉間にしわを寄せるイケメンリーダーに『ザ・パワー』のリーダーが口を開く。


「クロは戦えるぞ。先日のアンデッド騒動があった次の日に聖騎士の一人と決闘をしただろう。ほら、剣聖の娘のヤバイ奴」


「ああ、そう言えば報告が上がっていたな。レイチェル相手に無傷で引き分けただっけか?」


「俺はあの決闘を遠目で見ていたが、クロがシールドだろう魔法を使い動けなくしていたな……あの娘が戦えば血の雨が降るのが相場と決まっていたが一太刀も入れられなかったな……」


「レイチェルって聖騎士の中でも戦闘狂として有名なあのレイチェルですよね?」


「ああ、剣聖の娘で誰にでも喧嘩を売るあのレイチェルだよ」


 互いに話し合いクロも実は凄い奴なのではと口に出す冒険者たち。そんな事とは知らずに回収を終えたクロは汗を拭いながら辺りを見渡し、警戒する姿勢で遠くからこちらに向かって来る赤いドレスを視界が捉えると手を振る。


「あれはロザリアだわ。もうアジトを見つけてきたのかしら?」


≪仕事も足の速さも凄い速度ですね≫


「ラルフが付いていればダンジョンでの探し物はすぐに見つかるよ。僕らが一緒に冒険した時は彼が一番活躍していたからね」


 エルフェリーンが自慢げに語ると息を切らせ目の前に到着したロザリアに、アイテムボックスからペットボトルの飲料を取り出したクロは手渡すと封を開けて一気に飲み干す。


「ハァハァ、助かるのじゃ。奴らのアジトを見つけたのじゃ。それに違法な植物を栽培しておる。幻覚作用が高く薬師と錬金術師以外は扱う事が禁止されておるものじゃな。ハァハァ……いまは爺が見張っておるのじゃ。自然にある洞窟らしき空間をねぐらにしておるのじゃ」


 ロザリアの報告に耳を傾けていたエルフェリーンは驚きの声を上げる。


「それはダンジョン内で植物を育てている事になるよ! もうダンジョン農法が実際に活用されていたって事じゃないか!」


「ダンジョン農法は解らんが、地面を耕し麻薬を育てておるのは事実なのじゃ。手を縛られた者が水をやっておる姿を確認済みじゃな。雑草を刈り畑を作り……いったいどうやってダンジョンに吸収されずに育てておるのだか……」


「それには心当たりがあるよ! それに奴らのアジトは洞窟といったね」


「うむ、七階層の森の奥なのじゃ……大きな木の裏が岩場になっており洞窟に繋がっておるのじゃ」


「それって! 紫水晶を見なかったかしら?」


 閃いたビスチェの言葉に「うむ、見たのじゃが、関係があるのかのう?」と口にする。


「大ありよ! 紫水晶はダンジョンが吸収できないのよ! 私たちはその研究をする学者の遺骨とその資料を発見してね、国に報告する予定だったけど今回の救出へ向かう事になったのよ」


「もしかしたら十四階のあの場所と七階の洞窟は繋がっていた場所かもしれないね。紫水晶の影響でダンジョンが干渉できない洞窟なり部屋があるのかもしれない。そうなればダンジョン農法の手掛かりが残っていて違法植物の栽培に使われているとしたら僕は怒りが収まらないよ……」


 天魔の杖を力強く握るエルフェリーンから可視化できるほどの魔力が湧き立ち昇る。


「成仏したケイルの為にもダンジョン農法は悪用させないよ!」


「あの研究は食糧危機を救う手段だものね! 私も久しぶりに本気で暴れたい気分だわ!」


≪私もです! 人さまの研究を悪用するのは気に入りません!≫


 『草原の若葉』たちが声を上げ残りの二組とギルドマスターがロザリアへと近づき偵察と報告に労いの声を掛ける。


「偵察御苦労。話は聞いたがダンジョン農法だったか、それが事実なら魔物の出現しない一階層を有効活用できるな。それは救出してからになるが……こういった闇ギルドは逃げるのが上手いからな、できれば退路を塞ぎたいが……」


「七階層の通路は六階層を繋ぐ階段と八階層に降りる階段。もしかしたらだけど、その洞窟がダンジョンの外に通じている可能性もあるね。速攻で奥へ入り捕縛するのが一番だけど……

 そうなると潜入の得意なラルフに気化製の睡眠薬でも撒いてもらうか、潜伏の得意なアイリーンにこっそりと侵入し退路を塞ぐか、う~ん、『ザ・パワー』は潜伏が苦手そうだから六階層に続く階段に潜んで貰って、『銀月の縦笛』には八階層に下りる階段を封鎖してくれないかな?」


 エルフェリーンが勝手にチーム毎に割り振りを決め、ギルドマスターもそれでいいのか頷きながら各パーティーへ視線を送る。


「手持ちの睡眠薬で気化できるのは二種類ありますけど、捕らわれた人とかも眠っちゃいますよ?」


「それは好都合だよ。下手に意識があると貴族の中には剣を取り戦おうとするからね~尋問するように生かして縛って置いたのに、首を刎ねて自分が活躍したと勘違いする貴族とかいると最悪だからね~」


 ギルドマスターとビスチェだけは笑い声を上げるがドン引きする冒険者たち。


「そういう事もあるから貴族とは関わらない方がいいからね。特にクロ! 君は絶対に注意するんだよ!」


「そうよ! クロはゴリゴリ係なの! 確りと自覚を持ちなさい!」


 エルフェリーンとビスチェに念押しされ苦笑いを浮かべるクロ。まわりの者たちはゴリゴリ係がわからず頭を傾げるなか、肩を震わせ笑うアイリーンとロザリア。


 救出作戦に向け本格的に動き出すのだった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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