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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十八章 聖女と秋
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チョコレートフォンデュの呪い



「うふふ、チョコレートフォンデュとは素晴らしい甘味ですね。様々な果実をチョコでコーティングし、フワフワなマシュマロもとても美味で……あの味を思い出すと幸せな気持ちになれます……」


 うっとりとしながらも大根の皮を器用に剥くメリリ。その横では七味たちも同じように野菜の皮を剥きカットしながら体を上下させお尻を振る。


「ホワイトチョコレートフォンデュも美味しかったですね~普通のチョコよりも苦みがないのか果実の酸味が際立っていながらもマイルドな味わいが癖になりそうですね~」


 アイリーンも生前の夢だと語っただけあってか、初めて食べたチョコレートフォンデュを褒めちぎる。


「気に入ってもらえたのなら良かったよ。こっちはそろそろ煮えたから味付けだな」


 チョコレートフォンデュを食べた翌日、朝食を食べ終わったクロたちは大鍋を前にモツ煮込みを量産している。クロのアイテムボックスには時間停止機能があり収穫祭に向けできるだけ多くのモツ煮込みを量産しているのだ。


「そういや味噌と大鍋がもう残り少ないな……味噌と鍋は魔力創造で増やして、」


「チョコレートフォンデュも増やしましょう!」


「うふふ、それは名案ですね!」


「ギギギギギ」


 独り言をしながらクロが魔力創造で味噌を創造しているとアイリーンにメリリと七味たちからの提案に首を横に振る。


「アレは特別だからな。果樹園で多くの果実を収穫したのもあるし、カロリーが天井知らずのスイーツだからな。二日連続とか贅沢とはいわないが体に悪いだろ。それよりもドランさんが来たら稲刈りだから、それまでにモツ煮込みを量産しないとな」


 クロの言葉に口を尖らせるアイリーン。メリリは高カロリーと聞き顔を青ざめ自身のお腹に手を当てる。


「そ、それなら稲刈りでカロリーを消費すればいいのよ! 常に中腰で鎌を振るう稲刈りは重労働だし、つま先立ちですればチョコレートフォンデュのカロリーだって消化できるわ!」


 キッチンカウンターで朝食後の緑茶を楽しんでいたビスチェの言葉に顔を上げる二人。七味たちはカロリーというか、太る事を気にしておらず会話を耳に入れながら野菜のカットを続ける。


「チョコとフルーツのカロリーは高いからな。食べるにしても週に一度でも多いから、揚げ物や甘味は減らさないとだな」


「キュッ!?」


「揚げ物を減らすのはダメなのだ! 白亜さまがショックを受けているのだ!」


 朝食を食べ終わりソファーでうつらうつらしていた白亜はクロの言葉を耳にし飛び起き、キャロットも抗議の声を上げる。


「少量を食べるようにすれば大丈夫だと思うが……」


「ううう、チョコレートフォンデュを少量にするのですか……」


「あれは豪快にチョコに付けて食べるのが美味しいのに~」


 クロの提案に目を潤ませるメリリと味を思い出いながら悔しそうな表情を浮かべるアイリーン。


「キュウキュウ~」


「チョコレートフォンデュは美味しかったのだ! それでも揚げ物がなくなるのはダメなのだ! 特に肉がなくなるのはダメなのだ! 肉をチョコレートフォンデュにするのはどうなのだ?」


「………………きっと、不味いと思うぞ」


「なら肉を焼くといいのだ!」


「キュウキュウ~」


 話の流れから肉をチョコに付けて食べるという暴挙を思いつくキャロットだが、クロが否定するとすんなり受け入れ肉を焼こうと提案する。


「朝食を食べたばかりだろう……はぁ、大鍋を魔力創造しないとだな……」


 クロが手を翳し魔力創造を使い抱えるほどの大きさの鍋を創造する。


「うふふ、あの鍋でチョコレートフォンデュをしたら……」


「それはもうチョコレートフォンデュのお風呂ですね~」


「お風呂なのにチョコで汚れるのはどうかと思うわ……」


 ビスチェが否定し確かにと思うアイリーン。メリリはうっとりとした瞳を向け大鍋いっぱいのチョコレートフォンデュを妄想しながらニンジンの皮を剥き続ける。


「あっ、聖女ちゃんが薄っすら輝いていますよ~」


 キッチンから見える位置にある祭壇の前で祈りを捧げていた聖女タトーラから光が降り注ぎ、薄っすらと涙を流す姿が目に入り口にするアイリーン。


「ああ、あれは神託を受けたのかもな」


「なんだか神々しく見えますね~」


「うふふ、私も祈ればチョコレートフォンデュが食べられますか?」


「それならクロに向かって祈るのよ!」


 アイリーンにメリリとビスチェがクロに向かって手を合わせ、七味たちも手を止めて同じように手を合わせる。その姿に吹き出しそうになるがモツ煮込みに味噌を溶き入れ見なかった事にするクロ。


「俺としてはそろそろ甘芋を使ったスイートポテトや焼き芋が食べたいがな」


 その言葉に目を見開く乙女たち。


「アルーも収穫はいつでもいいと言っていたね~僕はまたクロが作ったスイートポテトと大学芋が食べたいよ~」


「アレは美味しかったです! 私もまた食べたいです!」


「イナゴ騒動の後にお城で食べた甘芋のケーキよりも美味しいのかしら?」


「あれに似ていますがクロ先輩がアルーのお芋を使ったスイートポテトは別格ですね~大学芋もカリカリしてほっくりで甘くて、幸せな気持ちになりますね~」


「うふふ、甘芋を使ったチョコレートフォンデュも美味しそうです~」


「焼いただけでも美味しい甘芋に手を加えるのはダメだと思ったけど、あれは本当に凄いのよ。蜂蜜よりも更に上を行く美味しさだったわ!」


 皆からの言葉に首を傾げるキュロットとフランにクラン。キュアーゼとグワラも甘芋を使ったスイーツは口にしていない事もあり期待が膨らんでいる。


「クロたちはモツ煮込みを作るので忙しいだろうから僕たちが収穫に行ってくるぜ~」


「私も食べて見たいから手伝うわ」


「うむ、我も手伝うのじゃ」


「収穫といってもアルーが甘芋を掘り出してくれますからアイテムボックスに入れるだけですが、お願いしますね」


「うん、任せてくれよ~二美は一緒に来て収穫した甘芋に浄化魔法を掛けてくれないかな」


「ギギギギギ」


 ホーリースパイダーである二美が片手を上げてお尻を振りテンションを上げ了承し、エルフェリーンたちは外へと向かい、祈りを捧げていた聖女タトーラはキッチンへ向かいクロへ叫ぶ。


「女神ベステルさまと料理の女神ソルティーラさまから神託を受けました! 今作っているモツ煮込みとチョコレートフォンデュに甘芋を使った料理を祭壇に捧げよと! これほど鮮明な神託を受けたのは初めてです!」


 テンション高く叫ぶ聖女タトーラ。クロは料理のリクエストに神託を送るのはどうかと思いながらも「了解です」と口にして手ごろな大きさの鍋に完成したモツ煮込みを移し替える。


「神託というよりも居酒屋でオーダーを受けてくる店員さんですね~」


 思っていた事を口にするアイリーンにクロが吹き出しそうになりながらも祭壇へ鍋尾を置き一瞬にして鍋が消え去り、チョコレートフォンデュは雑誌から得た知識で魔力創造して備えそれも一瞬で消え去り、横で見ていた聖女タトーラは祈りを捧げながら微笑みを浮かべる。


 ああ、やはりクロさまは使徒を越える存在です。創造神ベステルさまのご友人であり、神々を料理で持て成す天界の料理人……料理の女神ソルティーラさまも認める料理名人……

 天界へ行った時も驚きましたが、今目の前で天界へ運ばれた料理を今頃女神さま方が食されていると思うと……


 微笑みながらも薄っすら涙する聖女タトーラ。その後ろではチョコレートフォンデュが目の前から消え情けない声を上げる白亜と、血走った瞳を向けていたメリリ。


 甘芋を使ったスイーツでチョコレートフォンデュの呪いから解き放てればと思うクロなのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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