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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十七章 収穫と聖国
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薬草採取



「あった! やった! 見つけた!」


「こっちにもありました! これほど多くの薬草が自生しているのですね」


 王都からすぐ近くの森にやって来たクロたちはアリル王女とハミル王女に薬草採取のやり方を説明し一緒に森に入り採取をしている。本来であれば王家が高い壁に囲まれた王都から出ることはあまりなく、況して森に入り薬草採取のような仕事をする事はない。ないのだが、二人からお願いされ影の者たちが迅速に行動し、王の許可を取って来たとなれば話は別である。

 七味たちが森へ予め入り安全を確保し、聖騎士たちも薬草採取を手伝うと張り切って動き出し、近衛兵たちも数名参加を希望し安全の確保に努めているのである。魔物が出たとしてもドラゴンでも来ない限り安全は確保されるだろう。


「薬草の取り方は覚えていますか?」


「はい! 一番下の葉は残してその上をチョキンです!」


「根を取らなければまた生えてくるのですよね」


 ハサミを構える二人の王女に「正解です」と微笑みながら口にするクロ。


「クロさまは子供の相手もお上手なのですね……」


「教会やオーガの村でも子供たちから人気ですね~飴ちゃんを配るからだと思っていましたが、こう見ると面倒見がいいですよね~」


「庭に出た瞬間に子供たちに絡まれていたよな」


「アイリーンだって孤児たちと遊んでいた時は楽しそうだったわ」


 聖女とアイリーンの会話にヨシムナとライナーも加わりながら薬草を採取する。薬草は大場に似た形で慣れればすぐに見つけることができ、最近ではダンジョンに潜る冒険者が多く薬草を採取する者が少ないのか大量に群生している場所を早々に見つけ採取に取り掛かっている。


「獲れました!」


「こっちも採取できましたわ」


 薬草を高く掲げるアリル王女とハミル王女。


「採取できたら袋に入れましょう。先ほど配った布の袋に入れて下さい」


「は~い」


「もしかしたら薬草にもマヨをかければ美味しいかもしれませんね」


「天ぷらでなら食べましたがマヨだと苦みが抑えられないかもしれませんね」


 マヨ信者のハミル王女の言葉を適当にあしらいながらクロも薬草を採取に袋に入れ、次の薬草へと視線を走らせる。


「うふふ、エルフェリーンさま方の試作が上手くいっているといいですね」


「精霊王さまの蔦とポーションを使えば少ない薬草でポーションが量産できるかもしれないと言っていましたが、そうなると採取が楽になりますからね。自分の魔力が持つ限り精霊王さまの蔦も出せますから、近いうちに食べて見たいですね」


「本当に食べる事ばかり考えていますね~」


「いやいや、味とか気になるだろ。師匠の鑑定でも食べられると分かったし、料理の幅が広がるのは良い事だろう」


「それはそうですが……ん? 狼を返り討ちにしたみたいですよ~」


 七味たちから糸を使った連絡がアイリーンに届き近衛兵たちに緊張が走る。


「三匹だけだったらしいです。他にはいないようですね~」


 その言葉に場の空気が緩み、上を警戒していたヴァルが地上へと舞い降りる。


「ここから北に向かった先に狼たちの巣があります。討伐致しましょうか?」


「いや、それは冒険者ギルドに報告すればいいと思う。帰りにでも寄って、おっと、大丈夫か?」


「は、はい、すみません……この服だと採取には向かなくて……」


 女神ベステルから強制的に着替えさせられたままのシャロンはその姿で森に入り、足を取られクロが慌ててフォローに入る。


「お姫様と王子様みたいです!」


 キラキラした瞳を向けるアリル王女。シャロン自体が王子様であり恰好がお姫様なのだが、クロが素早く助けに入り転倒を免れた姿に幼いながらも刺激される事があるのだろう。


「お姫さまはアリル王女さまですよ。もうこんなに集めるとは凄いですね」


「はい、頑張りました!」


 腐った蜘蛛が鼻息を荒くしている事もあり話題を逸らそうと膨らんだ布の袋を視線に入れ褒め、それを純粋に喜ぶアリル王女。ハミル王女も薬草採取に積極的でハサミを動かし飽きることなく採取を続ける。


「キュウキュウ~」


「薬草よりも肉が獲りたいのだ」


 白亜とキャロットもそう口にしながらも薬草採取をし、小雪が薬草を見つけては白亜に報告してそれを採取している。グワラにキュアーゼとメルフェルンは森の中が珍しいのか生えている草や花を話題に口の方の動きが機敏である。


「うむ、結構な数が集まったのじゃ」


「ロザリアさんも採取依頼を受けるのですか?」


「うむ、薬草採取の依頼は常時張り出されておるのじゃ。珍しい薬草などは探すのが手間で受けぬが、目に入れば詰み袋に入れておったのじゃ。それなのにダンジョンの宝ばかりに目を奪われ自分たちが使うポーション作りに必要な薬草採取を疎かにするとは嘆かわしいのじゃ」


「そのことですが、ダンジョン神さまにお願いして宝箱からも薬草が現れるようにしてもらいました。それなら手間にならず薬草も持って帰ってきてくれると思うので」


「うむ、それは違いないと思うのじゃが……」


「もうクロ先輩がダンジョンの管理をしている気がしますね~」


「いやいや、あくまでも提案だからな。ダンジョン神さまも現状を知って改善するといったし、ダンジョンを安全に潜るためには薬草が、ポーションが必要だろ」


 薬草を採取しながら話しを進め目的の量はとうに採取し終え、日が傾きかけると近衛兵から声が掛かる。


「クロさま、そろそろ王女さま方をお城へ戻していただきたく……」


「すみません。いつもの調子で採取していました。急いで戻りましょうか」


 見れば用意していた布の袋には入りきらずクロが魔力創造で作り出したビニール袋などにも入れ相当数が採取し、それをアイテムボックスに収納する。


「これだけ集まればポーションも大量に作れるな」


「エルフェリーンさまの試作が上手くいけば、それこそ大量のポーションが作れますね!」


 ルビーもホクホク顔を浮かべ、王家の馬車へと乗り込む一行。


 日が落ちると共に王都の門は閉まるため急ぎ戻りアリル王女とハミル王女は疲れからか馬車に乗ってすぐ眠りにつき、白亜とキャロットも同じように寝息を立てる。


「今日は冒険者していた感がって良かったですね~」


「そうだな。普段の生活だと冒険者というよりは普通に生活しているだけだからな」


「私は狩人として動いていますがアレも冒険者ではないですからね~まあ、神さまの所へ行くのも違うと思いますが……」


 ジト目を向けてくるアイリーン。まわりの者たちもうんうんと頷き、それは俺が原因か? と思いながらも料理を提供しに天界へ行っているかもと思い直すクロ。


 聖騎士たちと別れ城へと辿り着いたのは空がオレンジに染まりすぐにでも暗くなる頃で、城門を抜けると多くのメイドや騎士たちが心配した顔をしており申し訳なさから頭を下げながら場所を降り、メイドたちが起こさぬようハミル王女とアリル王女を運びクロたちは城の中へと誘導される。


「おお、ご苦労であったな」


 王家専用のサロンに通され国王陛下からの労いの言葉を受ける一行。日が落ちた事もあり国王に王妃二人とダリル王子が会釈をし、クロたちも頭を下げる。


「薬草採取がしたいと聞いた時は驚きましたが、疲れて寝てしまったのですね」


「あの子たちには良い思い出になることでしょう」


 優しい笑みを浮かべ仮眠が取れるよう用意されているベッドに寝かされる王女たち。


「お二人とも夢中で採取を手伝ってくれ助かりました」


 クロの報告に微笑む王妃たち。


「うむ、冒険者たちの為に苦労を掛けるが、エルフェリーンさまの姿が見えないがどうかされたのか?」


 国王の言葉に錬金工房へ寄るのをすっかり忘れていた事を思い出し、クロは苦笑いを浮かべるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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