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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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特殊個体には注意が必要です



 ダンジョンを知り尽くしているラルフはロザリアを連れ先に盗賊のアジトと思われる場所を探しに向かい、一行は注意しながらも『銀月の縦笛』が先行し魔物の倒しながら先へと進む。


「七階層は亜熱帯のジャングルだがすぐに右に曲がれば八階層へ行ける事もあり殆どの冒険者はスルーする。植物系と昆虫系の魔物を避けるためだな。七階層の奥からは十四階層へ繋がる階段がある事は確認できているが、十四階層は夕日のジャングルで、その奥は十八階層の夜のジャングル……できれば七階層にアジトがあればいいが……」


「十四階層からは寄生してくる魔物がいて厄介だし、吸血系の魔物が厄介だからね。逃げられたら困るし、七階層の階段を先に封鎖した方がいいかもしれないね」


「きゅ、吸血系の魔物……私は絶対クロさんから離れませんからね!」


 クロの背中のリュックに手を掛け進むルビーにクロが「邪魔にならない程度にしろよ」と声を掛けるが、白亜は頼もしいのか「キュウキュウ」とルビーに鳴き声と笑顔を向ける。


「それがギルドで噂になっていた竜王の子供だな。愛らしい顔つきで可愛いのだな」


「ああ、絶対に守るべき対象だな」


「我らの筋肉で盾となり必ず無事に終わらせて見せよう」


『ザ・パワー』たちも白亜に顔を寄せ誓いを勝手に立てるなか、ルビーはその圧迫感と剥き出しの筋肉にアイリーンの元へと走り寄る。


「アイリーンさん、アイリーンさん、助けて下さい。筋肉のお化けたちが近いです」


≪あれはあれでありだと思うよ≫


 宙に浮かせた文字に引くルビーはビスチェへと視線を向けるが、何やら悟りを開いたような表情で歩きエルフェリーンへと助けを求める。


「ルビーは偉いね! 困った人を助けようと残ってくれたのだろう?」


 エルフェリーンの元へと向かったルビーに勘違いな言葉を贈り、返答に困りながらも口を開く。


「えっと、そうですね……ダンジョンは鍛冶士に取っても重要な採掘場です。無法者たちの勝手にさせるのは違いますよね! 貴重な鉱石や素材を求める場所であるダンジョンはみんなで管理するべきです! 燃料である魔石のアクセサリーに加工とかは論外ですし、遊び半分でダンジョンを探索するとか馬鹿がする事です! 

 それに救助に向かう者たちの事を考えているのでしょうか? 軽率な行動が最悪の事態を招く事だってあるのに何を考えて貴族の人はダンジョンへ向かったのでしょうか? 社交界で見栄を張りたいが為にダンジョンに潜るとか本当に馬鹿のする事です!」


 ルビーの毒舌にギルドマスターは苦笑いを浮かべ、エルフェリーンは君も危なかったよねと思いながらも口を閉ざし、話を耳にしていたクロはルビーの新たな一面に確かにと思いつつも、救出した際には貴族から遠ざけようと決意する。


「はぁはぁ、マッドエルク三体撃破」


「ドロップ品は角と魔石ですね」


 ドロップ品の会話を耳に入れたエルフェリーンが掛けて行きルビーもそれに続く。


「この角は育毛剤になるからね~クロの将来の為にも僕が買い取ろうかな~」


「マッドエルクの角は赤みがあり綺麗な弓が作れますよ! クロさんはまだまだフサフサですから弓を作るべきです!」


「………………………………」


 二人の会話に何とも言えない表情を浮かべるクロ。アイリーンは魔力精製した糸を宙に浮かべると走り出す。


≪猪の魔物が突進してきます! 注意して!≫


 大きく文字を浮かべた事もありギルドマスターが声を上げ注意を促し、ビスチェがフォローに入り走り出す。力強い走りでこちらに向かって来るのは前面に固い鱗のある猪で、その風貌からシールドボアと呼ばれている。

 それが列を成し襲ってくるのだ。


 アイリーンが魔力で生成した糸で飛び上がると砂煙を上げ走る先頭のシールドボアの数体がバラバラな死体へと変わり、その後に続いていたシールドボアは驚き急停止するがその肉を踏み足を滑らせる。宙に浮いていたアイリーンは上からネット状の糸を複数落とし動きを封じる。

 そこへビスチェがレイピアを振るい眉間を正確に打ち抜き、光の霧へと変わるシールドボアたち。


≪完璧な作戦勝ち≫


「私とアイリーンのコンビは無敵ね!」


 地上に降りてきたアイリーンとハイタッチする二人を見つめ目を見開く『銀月の縦笛』たち。特にリーダーは二人の活躍に驚いたのか開いた口が塞がらないようで固まっている。


「おお、よくやったね! ほらほら、クロも魔石拾いとドロップアイテムを回収して~」


 慌てて走り出し魔石とドロップアイテムの毛皮と大きな肉のブロックをアイテムボックスへと放り込むクロ。赤みの多い猪肉を回収しながらカツか鍋にしようと心に決めていると、アイリーンが糸で生成した鞭をしならせ逃げようとしていたカマキリの魔物の首を刎ねる。


「キラーマンティスもいたのね……これ、特殊個体だわ……」


 首を刎ねられたキラーマンティスの危険度はBランクであり青い顔をする『銀月の縦笛』たちとクロ。ルビーも引き攣った笑いを上げやや壊れ気味である。


≪魔石が濃い緑だ≫


「野生のキラーマンティスなら両腕の鎌が魔剣の素材に使えるのにね~ドロップ品は新緑の羽だけだね。これも重ねてショートソードに加工すると魔力の流れがスムーズで扱いやすい魔剣になるね~」


 ドロップ品を回収するルビーはエルフェリーンの言葉にキラキラした瞳を向け、流石の『ザ・パワー』の面々も驚きの顔を浮かべ固まる。


 ちなみに『銀月の縦笛』はCランク、『ザ・パワー』はBランク、『豊穣のスプーン』はAランクであり、『草原の若葉』はSランクである。キラーマンティスはBランクで『ザ・パワー』の面々なら倒す事ができるかもしれないが、基本的に素手で戦う彼らではその鋭い鎌で痛手負う覚悟が必要だろう。

 『銀月の縦笛』が遭遇していたら結果は逆になっていた可能性が高い。


「キラーマンティスは二十階層以降に出る魔物なのに……何らかの異変か?」


 ギルドマスターは呟きながらも辺りを警戒し、新たにこちらに向かってくるキラーマンティスの下位種族であるスパイクマンティスと呼ばれる棘の多い蟷螂を三匹視界に入れ注意を促す。


「スパイクマンティスが三匹向かって……死んだな……」


 一瞬にして首がポロリと落ちた姿に一同が口を開け、アイリーンが糸をピンと鳴らしながら宙に文字を描く。


≪必殺なお仕事です≫


 ドヤ顔である。渾身のドヤ顔である。


「俺以外にそのネタが理解できる奴はいないと思うが……」


 呆れながらクロが口を開くと、口を押さえ笑い出すアイリーンは新たな文字を浮かせる。


≪理解できる人がいてよかった≫


 なんとも楽しげに笑いビスチェが魔石とドロップしたスパイクマンティスの鎌を拾うとアイテムボックスへと入れ辺りを警戒する。


「エルフェリーンさまにビスチェさまも規格外なのに、アイリーンといったか……ありゃ間違いなくAランクだな……」


「キラーマンティスを瞬殺し、スパイクマンティス三匹も……」


「我らが束になって戦っても同じ様に首を刎ねられるのだろうな……」


 BランクのキラーマンティスとCランクのスパイクマンティスをいとも容易く魔糸で瞬殺したアイリーンにギルドマスターと『銀月の縦笛』に『ザ・パワー』のリーダーは驚愕しながら感想を漏らすのだった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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