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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十七章 収穫と聖国
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クロVS剣聖キサラ



 ゆっくりと足を会場に進めながら背中に声援を受けるクロ。剣聖キサラは既に会場に入り聖剣を手に目を閉じている。


「クロさん、がんばれー!」


「キュウキュウ~」


「殴ればいいのだ!」


 シャロンと白亜にキャロットからの応援を受けながら、だったら代わってくれと思いながらも嫉妬の視線を集めるクロ。女神ベステルから強制的に服装を変えられていた者はシャロン以外には居らず、ドレス姿の儚げな美少女が力いっぱい叫ぶ姿に男として嫉妬するのは仕方のない事だろう。


「ふふ、シャロンがこんなにも大声で応援するとはねぇ。クロが絶対に勝たないと罰を与えたくなるわぁ」


 妖艶な笑みを浮かべ肩を落として歩くクロを見つめるキュアーゼ。


「クロなら絶対に勝つわ!」


 根拠のない自信を持つビスチェ。その横で頷くルビーと膝を交互に繰り返し上げ汗をかきつつトレーニングをするメリリ。


「うむ、剣聖キサラはもう二十年も現役を続ける剣聖。どれ程の強さかは知らぬが、達人が持つ空気を纏っておるのじゃ」


「魔力は申し分なさそうだぜ~前に僕の所へ来た時よりも確実に強くなっているね~」


「鎧に隠れていますが背筋と上腕の発達が窺えますね。竜の鱗に届く一撃を放つかもしれません」


 ロザリアにエルフェリーンとグワラが剣聖を見つめ分析する。


「実際はどうなんだ? 死者のダンジョンを単独突破した実力があるのは事実だろ?」


「レーベスを倒した話も聞いたよ。私にはクロが強そうには見えないけど……」


 ヨシムナとライナーからの質問にニヤリと口角を上げるアイリーン。


「模擬戦なら百回やって百回私が勝つ自信があります! でも、クロ先輩は強いですよ~魔力だけならエルフェリーンさまの次ぐらいにありますし、ヴァルさんを従え精霊王さまとも契約していますからね~。あっ、決闘はヴァルさんを召喚してもいいのかな?」


 顎に手を当て考えるアイリーン。静かに見つめていたヴァルは姿が溶けるように消えるとクロの前に片膝を付き現れる。


「主さま、自分は主さまの契約天使です。どうか、私にも活躍の場を」


 頭を上げることなく声を上げるヴァルにクロは後頭部を掻きながら「最初は自力でやってみるよ」と口にし、ゆっくり足を進め会場に入り剣聖キサラと距離を置いて足を止める。


「クロ殿がどれほどの実力者だかは知らぬが、レーベスを圧倒した話は耳にした。死しても女神さまが生き返らせてくれるらしいからな、全力を出させてもらうぞ」


「できたら実力の半分以下でお願いしたいです……」


 世界最高峰の実力者からの言葉に顔を引き攣らせるクロ。


「そう謙遜するな。レーベスが弱いと言っても魔剣を持つ一端の剣士である事には変わらない。そうそう、クロ殿はシールドを使い戦うのだろう。先手を譲るからシールドを出すといい」


「ありがとうございます。では」


 剣聖キサラの言葉に素直にお礼を言ってシールドを発生させるクロ。そしてギャラリーからは驚きの声が上がる。


「おいおい、あれってマジかよ……」


「いったい何枚のシールドを展開させている……」


「あれではシールドというよりも結界ではないか……」


 両手を上げてシールドを大量発生させるクロの姿に聖騎士たちは口をあんぐりと開け驚き、ヨシムナとライナーも言葉なく呆け、剣聖キサラは年甲斐もなく目を輝かせ純粋にこれから戦う相手の実力をその目で確かめ、高ぶる気持ちをぶつけようと手にしていた聖剣を抜こうとしたところでその姿が消える。


「よし!」


 展開していたシールドを全て消し去るクロ。ギャラリーは何が起こったかわからず、呆けるなか女神ベステルが呆れたように口を開く。


「あれはないわ~」


「僕も同意見だね~クロが強さを示してくれると思ったけど……」


「うむ、初見殺しとは思っておったが、剣聖ですら避けることはできぬのじゃな……」


「アレはパパも引っ掛かってたわね……」


「なあ、アイリーン。いったい何が起こったんだ? キサラさまはどこへ?」


 ライナーが視線をアイリーンに向けると大きなため息を吐いて口を開くアイリーン。


「勝ちは勝ちでしょうけど真面目な場面でアレを使うとか……卑怯過ぎますね~。今のは足元に落とし穴を作って落としたといったところですね。クロ先輩のスキルには女神の小部屋と呼ばれるものがあって、亜空間でいいのかな? どこにでも部屋が作れて、その入り口を剣聖さんの足元に出現させ落としました。ほら、みんなシールドを見て視線が上にいっていたから剣聖さんは気が付かず落ちたと思うんですよ……」


「それってシールドを大量発生させて視線を集めたということか……」


「そうですね~半端な数のシールドでは視線が集まりませんし、剣聖さんクラスなら今のように視線が向いていなければ避けられたかもしれませんね~それにしても、卑怯ですね~」


 アイリーンの説明に卑怯かもしれないが小部屋に閉じ込めたクロの勝利だと感心するライナー。隣で聞いていたヨシムナも「スゲーな……」と声を漏らす。


「そうですね。スゲー卑怯です……剣聖さんがどれだけ強いかも分からなかったですしぃ~少しぐらいクロ先輩が斬られるのも見たかったですね~」


「おいこら、怖い事いうな!」


 戻って来たクロに聞かれ舌を出すアイリーン。


「キュウキュウ~」


「クロは最強だと白亜さまはいっているのだ!」


 白亜を抱きながら通訳するキャロットの自信満々な声に最強とは程遠いなと思うクロ。


「今のは卑怯すぎるわね。不甲斐ない戦いをするなといったのを忘れたかしら?」


「視線を上に向けての落とし穴は卑怯ですぅ」


「作戦としては素晴らしいとは思うが、それで勝ってクロは嬉しいか?」


「腰に手にした剣も抜かず一太刀も入れないとはガッカリですわ」


 女神ベステルに愛の女神フウリンと叡智の女神ウィキールに加え武具の女神フランベルジュからのダメ出しにクロは顔を歪めて口を開く。


「俺は非戦闘員だろう。相手がアンデットなら負けない自信はあるが、剣聖って呼ばれる人を相手に剣で戦うとかどう考えても勝ち目はないだろ!」


 クロの叫びに確かにと思う四女神。


「まあ、取り敢えず出してあげなさい。相手が負けを認めたら再戦はなしにすればいいわ」


「卑怯な戦いだったので俺の負けでも……」


 その言葉に鋭い視線を向ける女神ベステル。武具の女神フランベルジュは戦いの女神という事もあってか女神ベステルよりも厳しい視線を向け、クロは渋々女神の小部屋の入口を出現させると姿を現す剣聖キサラ。

 その表情は先ほどとは違い苦虫を込み殺したかのようでクロは両手を上げて「落ち着いて下さい」と声を上げる。


「一瞬の事で驚いたが、先ほどの部屋に落とされたのだろう?」


「えっと、はい、そうです。女神の小部屋という部屋が作れるスキルを使い落とし穴に嵌めました」


「そうか……負けは負けだが、このような戦い方があるのだな……勉強になった……」


 娘の前で敗ればつが悪いのか、それとも単純に悔しいのか、口を横一文字に喰いしばる剣聖キサラ。


「貴方が望むのなら再戦しても良いわよ。あれじゃ剣聖の肩書にも傷がつくでしょう?」


「肩書は問題ありません……ですが、再戦できるのであれば……次は確実に……」


「俺は絶対に嫌ですよ! 次は確実に殺すって!」


 クロが叫びを上げるが女神ベステルは笑顔で手を払い、次の瞬間には会場の中央に転移し唖然とするのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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