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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十七章 収穫と聖国
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模擬戦の舞台設置



 クロと料理の神ソルティーラに七味たちが会場へ戻ると大きな拍手で出迎えられ、お礼を言われても拍手されたことは初めてだなと思いながら軽く会釈をするクロ。料理の神ソルティーラも同じように一礼し、七味たちは両手を上げお尻を振り喜びを体で表現し天使たちもそれに合わせて宙を舞い始める。


「これは宴会芸なのかしら?」


「とても楽しそうですぅ」


「いや、七味たちは喜びを表し、天使たちは悪ノリだろう……」


 三女神たちからの言葉に宙でピタリと停止した天使たちは逃げるように会場を後にし、クロは開いているエルフェリーンの横に座る。


「感謝するわ。どの料理も美味しかったわ」


「最後のフレンチトーストは少し重かったですぅ。でもでも、ステーキはとても美味しかったですよぉ」


「から揚げとベーコンも美味しかったし、飽きさせない工夫が多かったな」


 三女神からの誉め言葉に聖騎士たちは静かに耳を傾け聖女や教皇たちも優しい笑みで見守る。


「師匠たちはまだ朝食を食べてそれほど時間が立っていなかったので飽きないよう味が変化できるメニューにしたのは確かですね」


「から揚げについていたソースや不思議な塩がそうなのだな」


「あの味変は特にそうですね」


「ステーキのソースが抜群にぃ美味しかったですぅ」


「クジラ肉が不自然に軟らかかったのも驚いたわね」


「下味をつけマイタケと一緒に一時間ほど置いておくと酵素の力で肉の細胞が崩れ柔らかくふっくらと焼き上がりますね。ソースはバルサミコ酢を使った物でソルティーラさまならもう作れますよね?」


「はい、クロさまから学ばせて頂きました。マイタケなるキノコも分けて頂きましたので世界樹の女神や農耕神と協力し栽培して見ようかと思います」


 三女神へ今後も抜かりないと説明する料理の神ソルティーラに微笑みを向ける女神ベステル。


「それにしてもあの島クジラが美味しくなるとは驚きだわ。前にも奉納してもらった料理を食べて美味しかったのだけど、それ以上に美味しく感じたわね」


「フレンチトーストも美味しかったですぅ」


「少し甘すぎる気もするが新鮮なカットフルーツが添えてあるのは良かったな」


「それは梅酒と合わせるからですぅ。酸味のあるぅ炭酸系のお酒にすればフレンチトーストでも立派なおつまみですぅ」


 梅酒が好きな叡智の女神ウィキールが眉に皺を寄せるも愛の女神フウリンが笑顔で指摘するなか、一人の男が立ち上がりクロへと足を向ける。


「今日は本当に美味い酒と料理を感謝する」


 クロの前で立ち止まった男はロマンスグレーの闘将と言わんばかりの体躯と雰囲気を持つ男で、聖王国で剣聖と呼ばれる唯一の存在である。そんな男からの感謝の言葉の後に続くように聖騎士たちからも感謝の言葉が飛び交い静かに頭を下げるクロ。


「それはそれとして、だ。うちの娘が何もできずに負けたと聞いてな」


「えっと、もしかして……」


 視線をレーベスへ向けると満面の笑みを浮かべており逆にクロは顔色を青く変える。


「別に怒っている訳じゃない。ただな、クロ殿の実力が知りたいと思っただけなのだ」


「自分はことないです。アイリーンやロザリアさんの方が剣術の腕は確実に手ですけど……」


「剣術の腕は、だろ。あの時もシールドを上手く使い勝利したと聞いたからな。その実力に興味がある。最近は小手先だけの剣術や魔術を使う者たちが多くてな、正直つまらないんだよ」


「それなら師匠の方が……」


 お腹いっぱい食べお腹を摩っていたエルフェリーンへと視線を向けるクロだったが剣聖キサラは首を横に振る。


「エルフェリーン殿とは一度立ち会ったが、あれはな……」


 どうやらこっ酷くやられた過去があるのか苦笑いを浮かべ、エルフェリーンも口を開く。


「森を抜け単独で工房に来たよね~その時には驚いたけど、剣の実力はあっても魔力の使い方が雑で身をもって教えてやったぜ~」


「今でも勝てるとか勝てないとかではないと理解した……が、この命が燃える切る前に再戦したく思うが……」


「僕は食べ過ぎだから剣を握るなんて嫌だからね~」


「そういう訳だ。クロ殿なら酒も入っていないだろう?」


 仄かに赤い顔で自分は飲み食いしていたのにと思うクロ。味見はしたが料理を口にしておらず若干の空腹を感じているのだ。


「はい! はい! はい! それなら私はアイリーンとやりたい! 武具の女神さまと剣の話をしていただろ! 是非ともやりたい!」


 元気に手を上げ叫ぶレーベス。アイリーンも立ち上がり白薔薇の庭園に手を掛けながら口を開く。


「食後の運動に丁度いいですね~お相手しますよ~」


「クロとやった時みたいに木剣ではなく真剣で頼む! バラが舞い散る剣とやれると思うと木剣なんかじゃ満足できない!」


 一方的なお願いにクロはアイリーンへ視線を向けると思いのほか笑顔で「もちろんです」と口にし苦笑いを浮かべるクロ。


「なら、我々も真剣でやろう。楽しくなりそうだ」


「………………」


 思わず呆気に取られるクロ。すると女神ベステルが口角を上げてクロへと視線を送って口を開く。


「あら、それなら場所を用意しないとかしら」


 そう口にして手を払う仕草をすると宴会場だった空間は広がり、更に手を払うと見慣れた神と精霊が姿を現す。


(創造神さま……急な呼び出しは困るのですが……)


「急に転移されると困るのですわ。クロもそう思いません?」


 ダンジョン神と精霊王が姿を現し見慣れぬ聖騎士や剣聖が警戒していると、クロへ浮きながら近づき同意を求める精霊王。


「それについては自分もそう思いますよ。イナゴ退治の時に天界へ勝手に飛ばされましたし……」


「あら、その時はちゃんと説明もしたじゃない。ダンジョン神にはこの場に簡単なダンジョンの平野にして欲しいだけよ。精霊王には環境を整えて欲しいわ。真白な空間での決闘じゃ味気ないでしょ」


 できる上司感を出しながらそう口にする女神ベステルにダンジョン神の体が輝き拡張された空間に線が走り光り輝き、そこから土が現れ大地へと変わり、精霊王が花の咲いた蔦を広げると大地から草が生えて花が咲き乱れ所々に木々が生まれる。


「相変わらずこのコンビには優秀だわ。自然とういうものを不自然に作り上げ、自然に見えるわね」


「言っている事がややこしいですね~」


「あら、本当の事よ。世界樹の女神に任せてもいいけど時間が三倍以上かかるのよね」


 アイリーンがツッコミを入れるがそれを普通にあしらう女神ベステル。


「あ、あの、今更ですが、自分が模擬戦を受けないという案も……」


 クロからのビックリするほど空気の読めない言葉に場所を用意した女神ベステルとダンジョン神に精霊王が視線を向ける。


「いや、だって、剣聖ですよ! 剣聖! 世界最高峰の実力者と模擬戦とか無理ですよ!」


 クロの真っ当な叫びに何を今更という表情を浮かべる一同。


「ははは、クロ殿、これは模擬戦ではなく決闘なのだよ。互いの力を存分に出し、楽しい時間を過ごそうではないか!」


 笑いながら決闘と叫ぶ剣聖キサラ。だが、聖女タトーラは楽しい時間を過ごそうという単語を耳にし立ち上がる。


「わ、私もクロさまと楽しい時間を過ごしたいです!」


 こちらも叫ぶように発現し、クロは敵が増えたと心の中でツッコミを入れ、女神ベステルはニヤニヤしながら口を開く。


「モテる友人を持って私も花が高いわ~」


「絶対にそんなこと思ってませんよねっ! ただ楽しがってるだけですよねっ!」


「あたり前じゃない。そうね……ここは天界で私が干渉できる場を用意したのだから、もし、命を落としても復活させてあげるから気楽にやりなさい。ああ、でも、あまりにも不甲斐ないと生き返らせるのはやめようかしら……」


 女神ベステルからの言葉に安心感を覚えながらも、決闘の拒否権はないのかよと心の中で諦めるクロなのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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