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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十七章 収穫と聖国
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クジラ肉のステーキ



 山盛りのから揚げが運ばれ七味たちが両手を上げお尻を震わせ達成感を味わい、その姿に料理の女神ソルティーラと数名の天使たちは笑みを浮かべる。


「本当に魔物と思えない愛嬌ですね。料理の腕もそうですが、何かを教えるとこんなにも優秀なのですね」


「七味たちが飛び切り優秀なのと意欲があるからですかね。自分から料理もしますし、専用のキッチンで自分たちの食事を用意していますから。最近ではオリジナルのスパイスを作るほどですよ」


 七味たちは揚げ物が好みなのかそれに合うハーブと塩コショウなどを混ぜたスパイスの研究もしており、天ぷらには大葉に似た香りの葉を乾燥させ砕き塩と混ぜたものを自身たちで開発しクロに試食をお願いしたほどである。


「それは驚きですね……他の魔物でも知性が高ければ料理を覚えられる種がいるかもしれませんね……」


「手の器用さもあるかもしれませんね。粘着力のある糸を使いフォークとナイフを使ったりもできますし、熱耐性があるのか一美は素手で熱した油に手を入れることもできますから」


「ギギギギギ」


 褒められて嬉しいのか七味たちのダンスは盛り上がり、そこへ唐揚げを届けた天使たちも加わりダンス会場と化す調理室。


「ほらほら、その辺になさい。ここは料理を作る神聖な場所です。埃が舞っては女神さま方に食べていただく料理は作れませんよ」


 優しく注意をする料理の女神ソルティーラにピタリと動きを止める七味たちと天使たち。一美が片手を上げ「ギギギ」と声を発すると浄化の光が降り注ぎ油臭かった室内の空気が無臭へと変わる。


「浄化魔法も覚えているのですね……」


 顔を引き攣らせる料理の女神ソルティーラと天使たち。浄化魔法は神や天使であっても適性がなければ覚えることができず、ソルティーラもその枠に入っており顔を引き攣らせる。


「メイン料理を作ったら様子を見てデザートを作りましょうか」


「そ、そうですね。マイタケを使いどの程度クジラの肉が柔らかくなったかも気になります。早速調理いたしましょう」


 腸理解し当初から用意していたクジラ肉に漬け込んだマイタケを取り出し焦げ目が付くようにフライパンで焼き、付け合わせのアスパラの茹で、下手を取ったトマトをオーブンに入れる。

 クジラ肉は熱した網に乗せ用意していた炭火を使い焼き上げ、最後にアルミホイルで包み肉汁が逃げないよう寝かせる。


「ソースはバルサミコ酢にワインと蜂蜜に醤油を入れて熱し、アルコールを飛ばしたものを使いましょうか。バルサミコ酢はワインから作られたまろやかなソースなのでクジラ肉にも合うと思います」


 説明しながらフライパンでソースを作るクロ。


「このソースならマイタケの色が移っても赤黒いソースで色味的にも問題なさそうですね」


「焼けばそれほど色も気にならいと思いますよ。焼きましょうか」


 網に乗せたクジラ肉を炭火台へセットすると肉の焼ける香りとマイタケの香りが広がり、煮詰めていたバルサミコ酢やワインの香りと混ざり思わずお腹を鳴らすクロ。


「そろそろ昼食の時間ですかね」


 そう誤魔化すクロに肩を揺らす料理の女神ソルティーラと天使たち。七味たちはアスパラを茹で焼き上がったトマトを皿に盛りステーキを待ち、焼き上がった肉をホイルで包み休ませてから盛り付けソースをかけ、天使たちが宴会場へと運び歓声が上がる。


「肉なのだ!」


「これがクジラ肉のステーキなのかしら?」


 キャロットが叫び三女神へと届けられたステーキを見てナイフをトークを手にする聖騎士たち。から揚げの山はまだあるのだが本能が肉らしい肉を求めているのだろう。


「クジラ肉とマイタケのステーキになります。バルサミコ酢という酢とワインを使ったソースでお召し上がり下さい。付け合わせのトマトはお熱いのでご注意下さい」


 天使の説明に頷きナイフを入れ口に運ぶ女神ベステル。愛の女神フウリンと叡智の女神ウィキールも同じように口に入れ満足気に頷き、ウェイター役の天使はゆっくりと後退し部屋をでると調理室へと急ぎ報告へ向かう。


「報告! 女神さま方は何も言わなかったが満足そうな表情を浮かべて下さいました。キャロットさまが肉なのだ、と叫んでおられたので優先的に運んで下さい」


 その報告にクロと料理の女神ソルティーラでハイタッチをし肉を焼き続けるクロたち。七味たちもテンションが上がり両手を上げお尻を振るがすぐに埃が立つと踊りを止めて手を動かす。


 次々にクジラ肉のステーキが運ばれ口に入れた者から表情を溶かし視線と湧き上がる笑み。美味しいものを食べると表情が明るくなるのは剣聖や聖騎士も同じで、酒を口にしながら無言でステーキを口にする。


「お腹がいっぱいなのに食べきっちゃったよ」


「我も抑えようとしたのじゃが、手が止まらなかったのじゃ……」


「このステーキは柔らかくて肉汁が溢れて美味しいですわ。ワインとも相性が良いのはもちろんだけど、この黒いソースが美味しいわね」


「添えてあるキノコも美味しいですね。トマトも酸味と甘みがあってこのソースとも美味しく頂けます」


 エルフェリーンやロザリアもステーキの味に満足したのか食べ過ぎてお腹を摩り、押さえて食べていたキュアーゼとシャロンも最後まで美味しく食べ大満足といった表情を浮かべる。


「お肉は美味しいのです?」


「と~~~っても美味しいかな~ほら、あ~ん」


 小雪と遊んでいたアリル王女がサワディルへ質問し、サワディルは小さく切ったクジラ肉のステーキをあ~んで誘惑し、大きく口を開けるアリル王女。


「おいひいです!」


 両手で頬を押さえるその姿に優しい笑みを浮かべたサワディルがアリル王女に抱き付いたのは仕方がなかったのかもしれない。これを城でやっていればすぐにでも近衛兵が駆けつけただろうがその近衛兵はこの場におらず、アリル王女専属メイドのアルベルタが同席しているがステーキに夢中であった。


「これやばい! 手が止まらなくなる!」


「唐揚げも美味かったがこれは別格だ! クッソ~クロの奴が作った料理はどれも美味すぎる!」


 ライナーとヨシムナもクジラ肉のステーキを夢中で食べ、あっという間に平らげ空になった皿を呆然と見つめる。


「気が付いたら無くなってた……」


「ソースすらパンに付けてすべてないだと……」


 パンで綺麗に拭き取られた皿は新品のように綺麗であった……


「デザートのフレンチトーストでございます。バニラアイスとフルーツを添えてありますので合わせてお召し上がり下さい」


 最後に登場したフレンチトーストは小さいがイチゴにリンゴやナシにメロンといった角切りの果物が添えられ、サワディルに抱き締められていたアリル王女も席に戻り目を輝かせる。


「甘いものが苦手な方にはクジラのベーコンを使った和え物や炒め物をご用意できますのでお声掛け下さい」


 天使の言葉にビシッと手を上げるキャロット。


「ステーキが食べたいのだ!」


「それだっ!」


 キャロットの宣言に聖騎士たちから合いの手のような叫びが入る。


「く、クロさまに効いて参りますのでお待ちください」


 あまりの迫力に天使が若干引き気味に退出し急ぎ調理室へと戻り報告を入れるが、どう考えてもマイタケと和え軟らかくしたものが足りず余ったステーキ肉を細切りに切り野菜と炒めるクロたち。


 運ばれたステーキ肉を利用した炒め物に大満足するキャロットと聖騎士であった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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