七味たちの進化と紙おむつ
「みんな違う種になるとは思わなかったな」
ワインを潰し終えた翌日、クロたちは脱皮という進化を果たした七味たちを見つめ驚いていた。
一早く進化を終えた一美はメタリックなボディーに金色の縁取りがされているプリンセススパイダーに進化し、ニ美は瞳以外が真白なホーリースパイダーへと姿を変え、三美と四美は脱皮事態をせずに現状維持。
五美は一番サイズが大きく足の長いアシダカクモへと進化し得意のタップがダイナミックになり、六美は真っ黒なボディーのダークスパイダーという珍しい種に進化しロザリアが使う影魔法を取得しているのかアイリーンの影に入り驚かせた。
七美は紫と黒が入り混じるボディーのファントムスパイダーへと進化を果たし、その姿をアイリーンそっくりに変化させ更に複数体のアイリーンを出現させる。
「これは幻術だぜ~しかも魔力と糸を使って本物そっくりな質感にまで模倣しているぜ~」
「幻術というよりも擬態に近い? 幻術だけなら手で触れられないもの」
「うむ、擬態は木や花に体を似せたりまわりの風景に溶け込んだりするあれじゃな」
「そうだね~糸で簡単な形を作って、そこに幻術を使って再現しているんだね~」
「あ、あの、そういう話は私の偽物の胸を突きながらしないでもらえると嬉しいのですが……」
エルフェリーンとビスチェにロザリアが七美の幻術を考察しながらアイリーンの偽物の胸を指で突き、アイリーンはそれが恥ずかしいのは頬を染め、七美は気を使いアイリーンの姿からクロの姿に変えると今度はアイリーンも混ざって偽クロを指で突き始める。
「これは面白いですね。糸で再現しているから顔が面白い形に変形できますよ」
「腕も足も関節がないから好きな形に変えられるわ!」
「何だろう……さっきのアイリーンじゃないが、悪戯されてると思うと少し悲しくなるな……」
「うん、これは……ひとつ貰ってもいいかな?」
思い思いに偽クロの体を動かし楽しむ乙女たち。アイリーンは主に顔を弄り笑い、ビスチェは腕や足の関節を弄りひとでは不可能なポーズを取らせる。そんな中エルフェリーンが何か思いついたのか偽クロを欲しがり、七味は頷き了承する。
「うんしょ、うんしょっと、これで良し!」
慎重にアイテムボックスに収納するエルフェリーンを不審に思いクロが声を掛ける。
「あ、あの、師匠はアレをどうするのですか? 魔法の的とかに……」
「うん? 的になんかしないよ~触った感じも良かったから抱き枕にするだけだよ~」
「それは盲点でした! ああ、もう顔がおかしなことになっているからこの顔を見てから寝たら悪夢を見そうです!」
「私も欲しいわ! 案山子にして薬草を守らせるわ!」
「それは妖精たちがやってくれているだろ……はぁ……」
大きなため息を吐くクロは進化しなかった三美と四美へ視線を向ける。
「二匹は進化しなかったが、進化する必要がなかったのかな?」
「ギギギギ?」
クロの問いに首を傾げる三美と四美。脱皮は毎年必ずするという事もなく、その時が近づかなければ本人にも分からない事もあり首を傾げたのだろう。
「どっちにしても三美と四美にはいつも助かっているからな。特に料理とかさ」
三美と四美は糸を使い野菜を切ったり物を取ったりするのが得意で七味たち用に用意した外のキッチンもこの二匹の利用が多く料理に対して前向きである。他の七味たちも料理を手伝う事もあるが自主的にキッチンに現れて手伝う姿勢を取るのはこの二匹である。
「ギギギギ」
両手を上げてお尻を振る三美と四美が喜びを示し、クロは微笑みながら昼食のメニューを考えるのであった。
昼食は三美と四美がクロを手伝いそうめんを茹であっさりと済ませると、ルビーが完成させた七味たち用のレーシングカートのお披露目となった。
「七味たちが持ちやすいようハンドルには溝を入れてあります。サイズ的にも小さいボディーですが他のカートに引かれないようにタイヤは大きくしておありますので走りは安定し、重さも他のカートよりも軽くスピードが出ますので注意が必要です」
進化前だった七味たちのサイズに合うよう作られたレーシングカートは小さく、重さもクロが持ち上げられるほどである。タイヤは他のカートと同じものを使っているのでタイヤと本体との比重がおかしく見えるが、その分走りは安定するだろう。
「五味以外は乗れそうですね~五味は普通のレーシングカートに乗れるでしょうからハンドルを変えれば問題ないですね~」
「ギギギギギ」
両手を上げてお尻を一斉に振る七味たち。ルビーも七味たちの喜びに笑みを浮かべ一緒に同じポーズで踊り、アイリーンもそれに参加しややカオスなリビング。
「踊りはその辺で試走しないとな。ああ、明日には王都に行くからその準備もしろよ~」
クロの言葉に一斉に動き出した七味たちとルビーはレーシングカートを運び、それを追い掛けるロンダルとチーランダにロザリア。
「準備させてからの方が良かったかもな……」
後頭部を掻きながら走り去る一行を見送ったクロは国王へ献上する果実を見栄え良くカゴへ入れ、昨日絞った葡萄ジュースと共にアイテムボックスへと収納する。
「ハミルちゃんとアリルちゃんが喜ぶといいですね~ああ、マヨも一緒にカゴに入れましょうか」
「それは別で渡せばいいだろう……それよりもアイリーンはカートを見に行かないのか?」
「私はポンニルさんの出産祝いをラッピングしようと思いまして、リンシャンさんと一緒も手伝って下さい。コボルト族に相応しくないとかあったら教えて下さいね~」
「はい、そこは問題ないと思いますが、赤ちゃんでも尻尾がありますのでその穴さえあればどんな服でも問題ありませんね」
二人は話しながら階段を上がりクロはポンニルの出産祝いを考えながら赤ちゃん用の紙おむつを魔力創造する。
「これだと穴が開いてないからダメかもな。尻尾はお尻よりも少し高い位置にあるから腰まであると尻尾が痛いかもしれないよな……」
「あら、変わったパンツね」
食後のお茶を飲んでいたキュアーゼとメルフェルンにメリリが紙おむつに興味があるのか集まり、簡単に説明するクロ。ちなみにシャロンはお腹がいっぱいになりウトウトし始めたフィロフィロをソファーへ運び優しくその背を撫でている。
「これは赤ちゃん用の紙おむつです。ポンニルさんの出産祝いに何か良いか考えていたのですが、これだと尻尾がこの部分に当たってダメかなと」
「コボルト族だと尻尾がありますから、もしかするとそうかもしれませんね」
「うふふ、サイドにある部分で留めることができるのなら切って使う事もできそうですよ」
紙おむつを広げて着るべき部分を説明するメリリ。メルフェルンやキュアーゼも紙おむつを手に取りその構造を見て頷き、クロはよく切れるハサミも送ろうと魔力創造する。
「変わった服なのだ」
「キュウキュウ~」
「帽子? これなら角が出せるのだ!」
キャロットと白亜も紙おむつを手に取るメリリたちに参加し手に取ると、その構造から足を入れるべき部分に角が入ると想像し被るキャロット。白亜も同じように被り二人で笑い合い、メリリたちもその姿に笑いが堪えられず吹き出す。
「それは赤ちゃん用のパンツだからな。それを被って外へ行くなよ~」
「わかったのだ!」
「キュウキュウ~」
クロからの注意に笑顔で答えるキャロットと白亜。サイズ的にも丁度良く適度な締め付けが癖になったのか外すことはせず、二人で笑い合う姿に癒されるクロたちであった。
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