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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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隠し部屋?



「よし、この溝にナイフを入れてみようか。もしかしたら開くかもしれないぜ」


 そう言うとアイテムボックスから装飾された短剣を取り出し魔力を通すと刃に添い赤い光が発生し、溝に添わせて刃を入れて行く。


「あれって魔剣? それとも聖剣?」


 キラキラした瞳でビスチェに小声で説明を求めるルビー。


「あれは師匠が普段使いしている短剣ね。ミスリルと竜の牙を合わせて作ったとか前に行っていたわ。刃に添わせて光る溝には魔力の通りをよくする加工がされてて、何とかっていう素材を使っているそうよ。名前は忘れたけど国宝を軽く凌ぐ短剣な事だけは間違いないわね」


「何とかっていうのは魔精水晶だね。マナが高濃度の場所にある水晶が魔力を帯びて精製される特別な水晶でそれを粉末にして精霊水と特別な加工をして、僕に合った属性を付与する事で魔力の通りをよくしているのさ」


 ビスチェと光りが漏れる短剣を扱うエルフェリーンの言葉に、顎が外れるほど大きく口を開き驚くルビー。


「そそそそそ、それってエンチェント!? 鍛冶の先にある魔力付与の奥義なのでは!? お気軽に聞いていい情報じゃないですよ!」


 ルビーがいうように魔力付与をする職人はその店ごとに代々受け継がれており部外者にその方法を教える事はまずない。ないのだが、さらりと口にする二人に危うさを覚えるルビー。詳細な方法を教えた所で簡単に手に入る素材ではない魔精水晶や精霊水というもはや伝説的な素材であり、それを目にした事のある者は限られているだろう。


「他にもこれを同じ処理をした武器は多く持っているよ。よかったら何かひとつ譲ろうか?」


 簡単に口にするエルフェリーンに絶句するルビー。

 魔力付与された武器を持つ事は冒険者の中でもトップの集団ぐらいであり、運よくダンジョンから見つける者もいるが大半はそれを売り冒険者を引退するか、貴族のお抱えになるものが殆どだろう。

冒険者に取って魔力付与された武器は冒険の終わりと取るものが多く、生涯賃金を軽く凌ぐほどの額で売れる事も原因だろう。小さな炎を生み出す短剣でさえ金貨数百枚で取引され、自然修復や属性付与に斬撃増加などの付与されたショートソードなどがオークションにかけられれば国が動くほどである。


 ちなみにエルフェリーンがいま使っている短剣がオークションにかけられれば金貨の家が立つほどの金貨が飛び交う事だろう。


「これとかはハンマー形のもので、魔力を通して叩けば衝撃が真っ直ぐ通って岩蟹だろうがゴーレムだろうが、叩いた所は粉砕できるぜ~」


「ハンマーサイズの穴が開くのよね~前に棚を作る時に重宝した記憶があるわ。後ろのピッケル部分で軽く叩くと釘穴を簡単に作れたのよ」


 作業しながらアイテムボックスから片手で扱える魔力付与されたハンマーを取り出しビスチェに渡すエルフェリーン。その補足をするビスチェに日曜大工で魔槌を使うなと思うクロ。


「ほら、持って見るといいわ」


 柄の方を向け手渡すと、それをマジマジと見ながら口を開け瞬きも忘れ視線を這わせるルビー。


「この青い線が魔力を通す為のもので、この魔石が属性石? 素材は赤く黒い……烈火鋼でしょうか……握り部分に使っている革も良いものというか……手に吸いついて来るような……」


「それは革ではなく炎帝の洞窟に住む大蛇の筋を加工したものだよ。丈夫でよく伸びるからね。そろそろ背が届かないからクロ、抱っこ!」


≪私が警戒しますね≫


「ああ、助かる。師匠、持ち上げますからね」


 クロがエルフェリーンを抱き上げ上部の溝に刃を入れて行くと、ズズズと地鳴りのような音にパラパラと溝に嵌っていた土がこぼれ始め、慌ててその場から離れる一同。


 手前に倒れてくる石のドアに焦りながらもエルフェリーンを抱えたまま離れたクロは、ゆっくりと降ろすと暗い中へと視線を向ける。


「ライト!」


 ビスチェが力ある言葉を解放すると拳大の光球が現れ、それを前に飛ばし暗い内部へと向かい多くの本棚に囲まれた一室が照らし出された。


「魔物の気配はないようだね……」


 エルフェリーンが短剣をアイテムボックスに放り込み中を覗き込みながら足を進めると、十畳ほどのスペースの両脇には本棚で埋め尽くされ、奥にはテーブルとその持ち主だろう白骨化した研究者が椅子に座り天を仰いでいた。


「リッチとかじゃないわよね……」


 ビスチェの呟きにビクリと肩を震わせるクロとアイリーンにルビー。クロとアイリーンにとっては、つい先日リッチやネクロマンサーなどと戦った事もありタイムリーな話題に驚くのは無理もないだろう。


「アンデット化はしていないね。それよりも研究資料がいっぱいだよ! それにここにある本はどれも古い物だね……」


 中に入り白骨化した研究者の横にあるテーブルを漁り羊用紙に目を走らせる。


「うわぁ~懐かしい。この薬学大全の初版本とか実家で見た事があるわ! こっちには魔物図鑑よ! 聖剣について書かれているものやダンジョン攻略方だって! 面白い本がいっぱいね!」


「鉱物について書かれている物はありますか?」


「あるわよ。ほら」


 ビスチェが一冊を取るとルビーに投げて渡し、慌てながらもキャッチしそこね額で受けしゃがみ込むルビー。


「痛っ!? もっと優しく投げて下さいよ~」


「わわわ、ごめん、ごめん! うわ~コブになりそうね」


 多少なり反省をしているのかアイテムボックスからポーションを取り出し額に降り掛け、半分ほど残したそれをルビーに口に突っ込むビスチェ。


「うごご、うごご……ぷはぁっ!? こ、殺す気ですか!!!」


「治療よ、治療! 痛みはどう? 気持ち悪いとかない?」


「えっと……痛くないです。でもでも、ひと言あると助かるというか、急にポーションを振りかけ口に突っ込むのは誰だって驚きますよ!」


 顔を真っ赤にしながら叫ぶルビーに頭を傾げるビスチェ。


「それよりも少し静かにする! ここはダンジョンの中で魔物が近くにいれば寄って来るだろ!」


「クロの言う通りだよ~静かにしないと強制的に黙らせるからね~何々、ダンジョンについての研究結果……ふむふむ……おおお、これは凄いよ! 紫水晶はダンジョンに干渉される事がなく、吸収や修復に加え、ダンジョンが少しずつ広がっていたとしても天然の紫水晶の生成された場所には干渉できないと書いてあるよ! さっき僕が投げた紫水晶と同じ現象を二百年も前に発見した凄い学者さんだよ!」


 エルフェリーンが研究者の研究を大声で叫び、「一番煩いのはお前だろ」というツッコミを入れるか迷うクロだった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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