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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十六章 真夏の過ごし方
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帰宅とクジラ肉の使い道



 予定よりも二日遅れで帰りの支度を整えたクロたち。大きなクジラの魔物を解体しその味に舌鼓を打った一行は、エルファーレやフェンリルに海竜たちと褐色エルフたちに見送られ転移する。


「一週間以上も家を空けたのは久しぶりだね~」


「アルーの様子を見てきますね~枯れてないといいですね~」


 さらりと怖い事をいうアイリーンだが本人も心配なのか糸を飛ばし急いで向かい、クロたちは久しぶりの家の中へと入りやや埃っぽい感じに窓を開け放つ。


「ヴァル、悪いが家中に浄化魔法を頼む」


「はっ! お任せ下さい!」


 クロの前に片膝を付き現れ嬉しそうに翼を広げるヴァルが顔を上げ浄化魔法を唱えると一瞬にして光に包まれる屋敷。埃臭さが一瞬にして消え、クロは労いの言葉を掛けヴァルはそれを受け更に翼を広げて喜びを表す。


「師匠、一息付いたらラライを村に届けますか?」


 ヴァルの忠誠心にむず痒さを感じたクロはキッチンへと向かうがラライが魔力創造するクロへと声を掛ける。


「ううう、もう帰らなきゃダメ?」


「あははは、ラライはまだ帰りたくないのかい?」


「うん、帰りたくないけど……帰ってお母さんの手伝いをしたいのも……ある……」


「もう一週間以上も離れているからナナイさんが心配するかもしれないぞ。予定よりも二日遅れだしさ。それに、ラライが釣った魚やクジラもオーガの村のみんなに食べさせたいだろ?」


「うん! 私が大きな魚を釣ったのも自慢したい! クジラと比べたら小さいけどアイリーンお姉ちゃんやロザリアお姉ちゃんよりも大きなお魚釣ったもん!」


 笑みを浮かべるラライ。釣り上げた大物の魚はタイに似た見た目で、生で食べても問題ないようアイリーンが浄化魔法を掛けクロのアイテムボックスに収納してある。他にも多くの釣り上げた魚やかつお節にクジラ肉などお土産にする予定である。


「うむ、アレは大きかったのじゃ」


「師匠の身長よりも大きかったよな。竹で作った竿が途中で折れたし」


「折れた時はビックリした! バキッて音が鳴って折れたの! 竹じゃなかったら竿ごとさよならだったもん!」


 竹はしなやかさがあり折れづらく、折れても真っ二つになる事がない。ラライが巨大魚と格闘した際にも折れたのだが慌てながらも持つ位置を変え、なんとか釣り上げたのだ。


「あははは、そうだね。ラライが頑張って釣った魚は早くナナイに食べてほしいのかもね」


「うん! 私が焼いて食べさせる! クロも手伝って!」


「ああ、料理なら手伝えるからな。折角だし半身は刺身にして、残りは塩焼きと頭は兜煮で、骨で出汁を取ってオーガたちが作った味噌でお味噌汁にしてもいいな。オーガの村ならキノコがあるだろうし、絶対美味い味噌汁ができるな」


「うん! お母さんもきっと喜ぶ!」


「キュウキュウ~」


「白亜さまも白夜さまに何か食べさせたいと言っているのだ!」


「そうだな……白夜さんが迎えに来る前に白亜も何か料理ができるように覚えるか?」


「キュウ! キュウキュウ~」


 グワラに抱かれていた白亜が立ち上がりやる気を見せ、クロは白亜が作れそうな料理を思案する。


「この際、キャロットさまも料理を覚え、竜王国の姫として修業する良い機会かもしれませんね」


「私は味見担当なのだ! 味見が特技なのだ!」


 グワラの提案に胸を張り堂々と答えるキャロット。まわりからは笑いが起き白亜とラライはケタケタと肩を揺らす。


「はぁ……キャロライナさまがここへキャロットさまを預けている理由が何となくですが理解できました……ですが、竜の巫女たるこのグワラ、キャロットさまを一流の姫にするべく教育させていただきます!」


 エルファーレが管理する島国でのキャロットの行動に思う所があったのかグワラが何やらやる気を見せ、顔を引きつらせるキャロット。数歩後退ると一気にクロの後ろに走り隠れ、尻尾を持ちガタガタと震える。


「グワラはダメなのだ。竜の巫女長として色々厳しいのだ……」


「でも、キャロットの為になるのなら教わればいいだろ?」


 震えるキャロットへ優しく話し掛けるクロ。


「……………………クロが裏切ったのだ……」


 隠れた場所を間違えたキャロットは肩を落とし信じられないという表情を浮かべ、その失意している所をグワラに捕まり悲鳴を上げる。


「まずは礼儀作法から参りましょうか」


 キャロットの肩に手が置かれ優しく声を掛けるグワラ。しかし、キャロットには地獄の使者からの声に聞こえ悲鳴は更に大きくなり逃げ出そうとするが、グワラも竜の巫女としてのプライドとキャロライナへの忠誠もあり普段よりも強い力でキャロットを捕まえ、クロはその場を離れリビングのソファーへと連れ去られるキャロット。


「キャロットはグワラさんと勉強らしいから白亜は邪魔しちゃダメだぞ」


「キュウキュウ……」


 いつもかまってくれるキャロットと竜の巫女であるグワラが離れたことで多少不安を感じたのかクロの足にしがみ付く白亜。そんな白亜を抱き上げたクロはキッチンへと向かい白亜を椅子に座らせるとアイテムボックスを立ち上げリストを確認する。


「半分置いて来ても恐ろしい数のブロック肉だな……」


 褐色エルフが多く住む事もあり海竜たちから送られたクジラの肉を確認する。アイテムボックスのリストは種類ごとに分けられており、下にスクロールするかページをめくる動作をするとその物が映し出され、スクロールしてもクジラの肉が続くリストに顔を引きつらせる。


「ギガアリゲーターよりも大きかったよな……」


「キュウキュウ~」


 白亜は島クジラの肉が気に入ったのか、これから毎日クジラ肉が食卓に登場するだろうと期待して尻尾を振る。


「クジラ肉はヘルシーでマグロや青魚に似た脂だと聞いたことがあるから毎日食べても問題ないだろうけど、飽きるよな……」


「ヘルシーとは素敵な言葉ですね。うふふふふ」


 リストを見ながら呟くクロに笑みを浮かべ声を掛けるメリリ。


「確かにヘルシーですが食べ過ぎれば太るのは必至です。魔化した際も下半身が太く感じましたよ」


 メルフェルンの指摘に愕然とするメリリ。


「あら、メルフェルンの二の腕もプニプニよ。貴女も少しは絞った方がいいわね」


 そう告げたのはサキュバニア王国の第二皇女であるキュアーゼ。クロからそう助言されればキレることもできただろうが、自身が世話する皇女でありながらも完全なボディーを維持するキュアーゼの言葉に愕然としながら「精進します」と頭を下げるメルフェルン。


「そうなるとクジラを使ったヘルシーメニューだよな……」


「うふふ、クロさまが作るのならクジラを使ったカラアゲはきっとヘルシーですよね? ですよね?」


 グイグイと身を寄せてくるメリリにクロは真実を伝えるべく口を開く。


「いえ、カラアゲは、」


「ですよね? ですよね? ですよね?」


 キッチンの端まで追い詰められ助けてと視線を送るが、メルフェルンはニヤニヤと口角を上げキュアーゼは肩を揺らし笑いを堪えており「ヘルシーに食べられるカラアゲを考えます」と口にするクロ。


「うふふ、ありがとうございます~」


 カラアゲを勝ち取ったメリリはクルクルと回転しながらリビングへと去り、クロは頭を悩ませるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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