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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十六章 真夏の過ごし方
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ビーチと昼食



 海のダンジョンの一階は広く大きく分け三ヵ所のエリアに分かれている。一つ目は入ってすぐの砂浜エリア。二つ目は大きな岩が並ぶ少し岩礁エリア。三つ目は次の階層へと繋がる階段がある奥の島エリア。島エリアはくるぶしほどの遠浅の海が続きヤシの木のある小さな島があり、そこにポカリと口を開ける開放された入口と階段が設置され二階へと続いている。


「毎回思うが不思議な光景だよな……」


「あの大きな胸ですね……わかります……」


「いや、そうじゃなくてだな。俺がいいたのはダンジョンの階段の事だが……」


 アイリーンの相槌を否定するクロは遠くに見える二階層へと続く階段から目の前の光景へと視線を移す。


「うふふ、行きますよ~」


 メリリがバレーボールを打ち、弓なりに上がったサーブを受けるビスチェ。それを拾いトスするメルフェルン。アタックを打ちに飛び上がるキュアーゼ。


「くっ!? これ見よがしに大きな胸を揺らしてらっしゃりますよ!!」


「変な敬語を使うな……はぁ……」


 砂浜ではアイリーンが提案したビーチバレーが行われており、ポロリを危惧したクロがゼッケン付きの上着を配り舌打ちをしたアイリーンだったが、思いのほか白熱する試合を楽しんでいた。が、ゼッケンを付けていても揺れるものは揺れ、拳を握りないものを悔しがるアイリーン。

 クロは目のやり場に困り昼食の準備は既に終えている事もあり、夕食の下準備をしながら砂浜に背を向けていた。


「キャッ!?」


 小さな悲鳴が響き振り向くと砂浜のコートに仰向けになったラライの姿があり心配そうに近づき体を起こすメリリ。アタックを打ったキュアーゼが心配し声を掛け両手を振って「大丈夫! 次はちゃんと頑張る!」と声に出しやる気を漲らせるラライ。


「ラライちゃんのガッツあるブロックでしたが顔面セーフですよね」


「顔面セーフはドッチボールだろ。やる気はあるが大丈夫そうか?」


「オーガだけあってラライは丈夫だからね~ほら、立ち上がった」


 ケロッとした顔で立ち上がったラライはすぐに身構えビスチェからのサーブに備える。


「それにしてもこれは面白い遊びだね~海竜たちも興味津々で見ているぜ~」


 キラキラとした瞳を向けビーチバレーを見つめるバブリーンたち。本日はお酒を飲まず人化したまま海に潜り魚の取り方をキャロットたちに教えていたが、アイリーンがビーチバレーに皆を誘い興味があるのか獲った魚をクロに渡すとそのままビーチに居付いている。


「海竜さんたちの力を見ましたが、あの力でサーブしたらバレーボールの耐久力が持たないと思いますよ~」


「そこは手加減するしかないね~キャロットやグワラがサーブしても同じだろうしさ。おっ、ラライがボールを拾ったぜ~」


 自身たちが抱えられないほど大きな幹の木を楽々引き抜くことができる怪力を披露した海竜たち。本気でサーブしたらその場で破裂音が鳴り新品であってもバレーボールは粉砕されるだろう。


「くっ! あの揺れ方……」


「あはははは、メリリは特に大きいからね~」


 メリリのトス姿を見て拳を握り締めるアイリーン。エルフェリーンは笑いながら勝負の行方を見つめ、クロはコトコトとすじ肉を煮込む。


「ルビーさん、貧乳同盟として応援していますよ~」


 アイリーンからの応援にギラリと視線を向けるが高く飛び上がりメリリが上げたトスに合わせるべく大きく身を反らせ腕を振り、アタックの姿勢を作る。が、驚くほどの空振りを披露し、フォローするラライが高く上げ相手コートへとボールを返す。


「期待値と行動が伴ってないですね~」


「それはお前が変な掛け声を送るからだろ……」


「あはははは、ラライのフォローは良かったぜ~」


 丁寧にボールを高く上げるメルフェルン。それをキュアーゼが飛び上がり、「日本のバレーボールは飛行禁止でしたっけ?」と視線に移るキュアーゼの姿を声に出すアイリーン。


「うりゃっ!」


 普段は妖艶な笑みを浮かべ高貴な雰囲気を纏うキュアーゼだが、負けず嫌いな性格もあってか翼を使い高く飛び上がり力を入れて腕を振り抜く。


「うふふ、本気には本気で応えないとですねぇ」


 瞬時に魔化したメリリは瞳をぎらつかせほぼ直角に撃ち落されたアタックを蛇の下半身を使い威力を完全に殺して受け、ルビーがそれをトスして上げ、ラライが足元に力を入れ飛び上がる。


「異世界バレー凄いですよ! これは流行るかもしれません!」


 人では不可能なほどのジャンプ力と魔化した姿のインパクトもあり日本で映像化されれば話題にはなるだろう。


「やぁー!!」


 気合を入れ上がったボールを打つラライ。次の瞬間、炸裂したアタックと共に上がる強烈な破裂音。


 結果としてバレーボールを粉砕するのであった。







「これも美味しい~」


 料理を口にして叫ぶラライ。バレーボールを粉砕した時は悲しそうな顔でショックを受けていたが、すぐにクロがフォローに入り魔力創造したバレーボールをコートへと入れ試合を再開させた。その後も何度かバレーボールを粉砕する事態になったがその都度クロが魔力創造しコートへと入れ、バレーボールを粉砕したら相手へ得点が入るルールへと変更された。


「朝食の海鮮丼も美味しかったですが、これも美味しいです」


「サッパリと食べられるのもいいわね!」


 ラライが叫びシャロンが微笑みビスチェが絶賛する昼食。海竜たちは食べ慣れない麺料理に苦戦しているが普段から箸を使う『草原の若葉』たちはツルツルと麺を啜り冷やし中華を楽しむ。数名参加している褐色エルフたちも以前にここへやって来た時に箸の使い方を教え、今では器用に扱い麺を啜っている。


「この魚を使ったサラダも美味いね」


「独特の香りがする魚が深みのある味を出しているな」


「食感が心地いい……」


 レタスや水菜にキュウリなどを使い燻製した白身魚を使ったサラダは海竜たちに好評であっという間に平らげ、クロは追加分を増産しながら「冷やし中華をおかわりなのだ~」と叫ぶキャロットに魔力創造したコンビニの冷やし中華を創造する。


「アイリーンに作り方を教わってくれ」


「ん? さっき食べたのとは違うのだ?」


「ああ、これはこれで美味いからな。ゴミはまとめて袋に入れてくれ」


「わかったのだ!」


 クロが勤めていたコンビニの冷やし中華を持ちアイリーンの元へ駆け寄るキャロット。アイリーンは箸の手を止めパッケージを開け作り方を口にしながら具材を乗せタレをかける。


「クロがいた世界は本当に便利だね~中身の見える入れ物を使っているから文字が読めなくてもその商品がどういった物かわかるし、入っている原材料まできちんと書き込まれているのだろ?」


「この商品だけでもどれほどの労力がいるか想像もできないわ……」


「透明な素材……これで剣や槍を作れば透明な武器が……」


 エルフェリーンはン本のコンビニ商品を普段から見慣れているが細々と書かれている原材料などの記載に目を光らせ、キュアーゼはその小さな文字を手書きだと思い感心し、ルビーは容器を見ながら透明な武器を思案する。


「流石にプラスチックで作った武器では殺傷能力がなさ過ぎて……これって魔力で覆えば強度の問題は解決する?」


 首を捻り口にしたアイリーンにルビーとエルフェリーンが目を輝かせ、その横ではエルファーレが冷やし中華のタレで咽て鼻から麺が飛び出すアクシデントが発生し、完成したコンビニの冷やし中華を口にし味の違いに一気にテンションが下がるキャロット。


「これを使って下さい。ん? クリスタルの花?」


 鼻から麺を出すエルファーレにテッシュを差し出すクロだったが、その視線の先に不思議な光を発する花が入り、テーブルを設置した際にはなかったと思い首をかしげるのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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