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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十六章 真夏の過ごし方
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かき氷



「海~~~~~~」


 両手と片足を上げてY字バランスをしながら叫ぶラライと、足を開き前屈しながら叫ぶアイリーンを放置しながらクロはテキパキと作業を開始しパラソル付きのテーブルをアイテムボックスから取り出し椅子やクーラーボックスも近くに置くと、走り出したキャロットと白亜を呼び止め浮き輪を持たせる。


「あまり深くないらしいが白亜には浮き輪。キャロットも白亜が溺れない様に頼むぞ」


「キュウキュウ~」


「任せるのだ! 海が呼んでいるのだ!」


「グワラさんも泳がないのなら日傘もありますので使って下さい」


「これはご丁寧にありがとうございます」


 日傘を受け取ると走り海へ向かう白亜とキャロットを歩いて追うグワラ。


「クロは泳がないのかしら?」


 仁王立ちで腰に手を当てて声を掛けるビスチェ。真白なビキニにパーカーを羽織る姿にドキリとしながらも平静を装って「後でな」と声にするクロ。すぐに作業の続きへ取り掛かる。


「クロ先輩、私にも浮き輪をお願いします」


「わ、私もよ!」


 ワンピースタイプの水着を着たルビーに頼まれアイテムボックスから浮き輪を取り出しビスチェにも渡すと二人は海へと走り、視線を戻すとエルフェリーンとエルファーレにロザリアがパラソル付きのテーブルに集まり、急ぎ飲み物を用意するメルフェルンの姿があり、シャロンも手伝いフィロフィロを抱いているキュアーゼが笑みを浮かべる。


「わふっ!」


「うふふ、そろそろ海へ行くか日陰に入りませんか?」


 未だにポーズを決めていたラライとアイリーンへ話し掛けるメリリと小雪に、口を尖らせながらも体制を戻す二人。アイリーンは唇を尖らせラライは肩を解してクロの元へと走る。


「クロ! 浮き輪貸して!」


「そこにあるのを好きに持って行っていいからな」


「うん! ありがと!」


 アイリーン特製の白スクミズを着たラライが浮き輪をひとつ取ると海へ走り出し、それを追うメリリは三角ビキニ姿で大きな胸を揺らし走り、遅れてやってきたアイリーンは言いたい事があるのかクロへと声を掛ける。


「ずっとツッコミ待ちだったのに放置とは酷いですね~前回もそうでしたが、クロ先輩がツッコまなかったら私は固まって待つしかないというのに……」


「それよりも海で遊ばないのか?」


 放置した罪悪感があるのか話題を変えるクロにアイリーンは浮き輪を手に取り口を開く。


「美味しいかき氷が食べたいです! シロップだけを掛けたシンプルなものじゃなく、イチゴと練乳がドバドバ掛かった美味しいやつです!」


 そう言葉を残して走り去るアイリーン。クロは作業を終えると頭上に黒いシールドを展開し日陰を設けると、作業台にイチゴと練乳を魔力創造し料理に取り掛かる。


「豪華なかき氷とか作った事がないが、イチゴベースのソースを作ってカットしたイチゴと練乳で飾ればそれっぽくなるか。後は同じようにメロンと宇治金時でも作れば……海の上って走れるんだな……」


 クロの視線の先では浮き輪をしたアイリーンが海面の上を走り、魔化したメリリがラライを肩車し同じように海面を進む姿に驚き声を漏らす。


「あちらの奥に見える孤島の方が深くなっているので、そちらに向かっているのでしょう」


 ダンジョン内へ一緒について来た褐色エルフのひとりの言葉に、クロは浅瀬で遊べばいいのにと思いながらも会釈を返す。


「ここのダンジョンも随分と様変わりしましたね」


「はい、クロさまがダンジョン神さまに掛け合って下さったお陰です。今ではニ十階まで攻略が進みこのダンジョンから様々な恩恵を受けております」


 味噌や醤油に加え肉や魚といった食べ物の他にも魔石や魔物から獲れる素材などダンジョンからの恩恵は多い。


「それは良かったです。前のままだとダンジョンとして機能していなかったと聞きましたし、攻略できない構造では入る事もないですよね」


 そう口にしながらイチゴのヘタを切り適当な大きさにカットするクロ。


「主様、もしよければ手伝いたいです」


 自然と現れたヴァルも海仕様なのか鎧姿ではなく白いワンピースを着て、その姿の方が天使としてイメージに合いそうだと思うクロ。


「それじゃあイチゴのカットを頼む。半分にカットしてこの皿に入れてくれ」


「私たちも手伝わせて下さい」


「ええ、お願いします」


 傍にいた褐色エルフたちも手伝いメロンをカットし、クロはBBQ用のコンロに薪を入れ魔剣に魔力を入れて薪を撫でるようにし火を起こす。カットしたイチゴを鍋に入れ砂糖とレモン汁を加え煮込み簡単なソースを作り、同じようにしてメロンもソースにすると器に入れて冷やし、トッピング用のイチゴとメロンもカットし終え頃には甘い香りに誘われた女性たちの視線が痛いほど集め、これはさっさとかき氷を作った方がいいかとかき氷機をテーブルにセットする。


「うんうん、良い香りだぜ~前にも食べたけど、それはかき氷かな?」


「甘い香りの中に果物の香りも混じっているわね。赤いのはイチゴで緑色したのはメロンよね? 黒いのもあるわ……」


「姉さん、それは餡子という豆を煮たものです。和菓子によく使われるのですが……」


 エルフェリーンがかき氷機を見つめ、キュアーゼが果物を指摘し、シャロンが宇治金時に使う餡子あんこを説明するがかき氷とはイメージが結びつかないのか首を捻る。


「こらっ! 私たちを置いて先に行ったらダメじゃない!」


 そんな声が響き視線を向けると目の前には青い鳥と緑色した鳥が通り過ぎ旋回してかき氷機のハンドル部分にとまり期待した瞳をクロに向け、遅れてやってきたビスチェが声を上げる。


「私の精霊なのにクロに媚びたらダメじゃない! 土の精霊は私と一緒に行動していたのに……むっ、クロが悪い……」


 唇を尖らせ口にするビスチェにそれは躾の仕方が悪いのではと思うクロ。だが、風の精霊と水の精霊が現れたことで他の精霊たちもクロのまわりに集まり、カエルの姿をしたものや蛇の姿に宙に浮く魚などが急に見え始め顔を引きつらせる。


「クロが魔力創造で創り出したからだね~クロは精霊にもモテて僕は嫉妬しちゃうぜ~」


 笑みを浮かべながら話すエルフェリーンは嫉妬していないだろうが、ビスチェは自身の契約精霊に睨みを利かせる。


「ダンジョン内は精霊が少ないがクロのまわりには集まるのだな」


「これも稀有な才能……クロはやっぱり不思議……」


「料理や酒もそうだが甘いものも作れるのだな……」


 一緒について来た海竜たちも精霊が見えるのかクロのまわりに集まる姿に視線を向け、戻って来たキャロットと白亜に遅れてやってきたグワラたちへとかき氷を作るべくハンドルを回し始めるクロ。


「ハンドルを回すと雪が降るのだ!」


「これは面白いね! 前に食べた時はカップに入った物だったけど、目の前で氷が削られるのは綺麗だし楽しいよ!」


「うふふ、先ほどは一生懸命体を動かしましたので三種類を制覇するしかないですねぇ」


 かき氷を見つめ意見を言い合う乙女たち。第一号と第二号はエルフェリーンとエルファーレへイチゴ味を作り同時に受け取り笑顔で席へと戻り、急いでハンドルを回し量産するクロ。褐色エルフたちがリクエストを聞きフルーツを盛りつけシロップを掛け提供する。


「やっぱりメロンが美味しいわね! でもイチゴも美味しそうだわ……」


「それなら一口食べますか?」


 ビスチェとルビーは仲良く一口交換し互いに表情を溶かし、キャロットと白亜はがっついて食べ頭痛に苦悶の表情を浮かべ、リクエストしたアイリーンはラライと共にイチゴ味を食べながらも目の前で三種類のかき氷を交互に食べるメリリに驚きの表情を浮かべる。


「宇治金時も美味しいのじゃ」


 メリリとシャロンにロザリア以外はイチゴとメロンを選び、緑色=葉っぱ=苦いという式が脳内にできており、悩みながらもおかわりに宇治金時を選ぶラライ。


「んっ!? これも美味しい! やっぱりクロを信じて良かった!」


 ラライが一口食べ太陽のような表情を浮かべると褐色エルフや海竜たちも宇治金時を選び、仄かに苦い抹茶の味と香りがこの島で流行るのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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