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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十六章 真夏の過ごし方
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かつお節を量産する施設を作ろう



 翌日になり朝食を済ませると一斉に動き出す褐色エルフたちと海竜たち。クロもエルファーレとビスチェにロザリアとラライにメリリを連れ移動し、昨晩宿泊した神殿近くへと足を向ける。


「あの海竜たちが協力するとは驚きだよ。長く生きていると面白い事があるね~」


 クロの横を歩きご機嫌なエルファーレ。ラライもスキップしながらフェンリルに囲まれご機嫌で鼻歌を歌いながら歩き目的の場所を目指す。


「バブリーンさんたちが協力してくれればすぐにでも整地できますね」


「うむ、竜種は総じて力が強いのじゃ。午前中にもかつお節を作る作業場ができるじゃろう」


 昨日、かつお節を燻しながらその保管する場所を考えていなかったクロはルビーから予備のクーラーボックスを借り、温度調節ができる冷蔵保管庫が必要だろうと思案し、朝食時に師であるエルフェリーンに相談したのだ。その結果、エルフェリーンは快く引き受けどうせならかつお節を作る場所ごと作ろうという話へ発展し、海竜たちが自ら手伝いを申し出たのである。


「キャロットの姉ちゃんも力強いよ! 昨日ね、大きな岩を裏返してお魚を手掴みにしてた!」


「うふふ、岩の隙間に潜んでいたナマコと呼ばれる不思議生物を捕まえて喜んでおられましたね~」


「ウネウネ動いてネバネバを出してた!」


 楽しそうに昨日の海であった出来事を話すラライとメリリ。ナナイからラライの面倒を任された事もありメリリはラライの専属メイドのように付き行動している。


「ナマコとか高級食材だぞ。持って帰ったか?」


 クロの言葉に首を元気に横に振るラライ。ビスチェは怪訝そうな顔を浮かべ「アレを食べるとか考えられない」と呟く。


「ネバネバを出して驚いたキャロットお姉ちゃんが遠くに投げ飛ばしちゃった」


「美味しいのですか?」


「好みは分かれるだろうけど、俺がいた国では黒いダイヤと呼ばれていたな」


 クロの言葉に目を見開くロザリアとメリリ。この世界でもダイヤは高価であり宝石としての価値や研磨剤として使われている。


「あのネバネバがダイヤ……」


「驚きなのじゃ……」


「うふふ、アレが宝石とは驚きです……」


 ダイヤの価値を知る三名の驚きに、ラライはこっそりナマコを集めてナナイにプレゼントしようと考え、「お母さんが喜ぶといいな~」と心の声が漏れクロは慌てて口を開く。


「ナナイさんには新鮮な魚を、魚をお土産にしような。この世界のナマコが食べられるかどうかもわからないし、初めてナマコを見た時の驚きを思い出してくれ」


「う~ん……私はいらない」


 腕を組み考える仕草をするが二秒ほどで要らないと判断したラライはナマコへの興味が失せたのか横に並ぶ進むフェンリルの背を撫でる。


「見えてきましたね」


 視線の先には巨大な岩を加工して作られた神殿があり多くのフェンリルたちが尻尾を振りエルファーレの到着にテンションを上げ尻尾を振り、まわりにいたフェンリルたちは走り出し再会を喜ぶ。


「あっちの岩も硬くて丈夫だから使って欲しい」


 神殿から少し離れた場所にある岩がゴロゴロと剥き出しになっている場所を指差すエルファーレ。フェンリルたちの遊び場になっているのか岩肌には爪で研いだ跡が多くあるがまわりは削り使うので問題ないだろう。


「あの見えている岩をカットするのでフェンリルたちを下げてください」


 ビスチェもハイエルフという世界に七人しかいない存在に敬意を表しているのか敬語を使い、エルファーレが叫びフェンリルたちを呼ぶと一斉に走り出し毛だまりになり慌ててクロが助けに入ろうとするがフェンリルたちも押し潰さないよう気を付けているのか顔は涎塗れになっているがキャッキャと笑い声を上げる。


「いいな~楽しそう!」


「顔が涎塗れだがな……おしぼり、おしぼり……」


 アイテムボックスからおしぼりを取り出したクロはフェンリルの間を割って入りエルファーレの顔を拭い、今度はクロがフェンリルたちに顔をベロベロと舐められ生臭い吐息に、落ち着いてから毛だまりに入れば良かったと後悔し、それを羨ましそうに見つめるラライ。

 その後ろではビスチェが精霊魔法を使い土の精霊にお願いして大岩を地面から掘り出し、風の精霊にお願いして長方形にカットする。


「いつ見ても精霊魔法は綺麗なのじゃ」


 キラキラと光が舞う精霊魔法を見たロザリアから感嘆の声が上がりビスチェがドヤ顔を浮かべるがクロが見ていないことに口を尖らせ、クロはヴァルを召喚し浄化魔法をお願いするのであった。






 一方、広場近くの森では多くの木を引き抜く作業が行われていた。海竜が二人一組で行動し気を引き抜き、魔化したキャロットも力任せに引き抜き、それらの木の枝をアイリーンが白薔薇の庭園を使い切り落とし、褐色エルフたちは協力して抜いた木や枝を集める。


 この島に自生している木々には竹などもあるが、この辺りは幹が太く背の高い木々が多く根張りもいいのだが人化した海竜と魔化したドラゴニュートの前ではあっさりと引き抜かれ褐色エルフたちは歓声を上げる。


「俺たちじゃ魔法を使っても気を引き抜くまでどれ程時間が掛かるか……」


「それをあっさりと引き抜くとは……」


「海竜さま方も凄い力だ……」


「キュウキュウ~」


「キャロットさまの活躍に皆も喜んでおられますね」


 グワラの膝に乗り作業を眺める白亜は尻尾を振りドラゴンたちの圧倒的な力の行使に喜び、シャロンとキュアーゼにメルフェルンは唖然とそれを見ながら驚いていたが、フィロフィロがシャロンの腕の中で眠った事もあり興味がそちらへと向かう。


「こんなに騒がしいのに眠ったわ。この子は大物になるわね」


「シャロンさまが魔力を注いだグリフォンですから大物になるのは間違いないと思いますが、地響きが鳴る中で眠るのは危機感が足りない気も……」


 キャロットが乱暴に木を引き抜き後ろへと投げるように置き揺れる地面。その都度地面が凹み平らに均すのが大変になるのだがそんなのお構いなしに作業を続け、あっという間に予定していた敷地を確保する。抜いた木々は魔法で乾燥させ保冷庫の小屋や保管する場所に使い、残りは薪に使用する。


「うんうん、こっちの動力部もこれで完成だぜ~あとは地面をならして持ってくる岩のサイズに穴を掘らないとだね~」


「ふぅ……氷属性の魔石を二つ使い威力を上げて凍らせる場所と、冷気が漏れ適度に冷やす場所ができますね。かつお節を作るには凍らせてはダメらしいので出力を調整しないとですね」


 完成した動力部には二つのスノーウルフから取り出した魔石が使用され、保冷庫の上部に取り付け上から冷やす仕組みになっている。地下に岩を切り出した保冷の部屋を作り魔力を注ぎやすいよう工夫し、かつお節や魚の保管庫として使用される予定である。

 似た施設が神殿にもあるのだが神殿には幼いフェンリルを育てるエリアがあるため、燻煙する煙や火を使う事もあり広場近くに新たに建てることになったのである。


「お、クロたちが戻って来たぜ~」


「穴を掘るのだ!」


「キュウキュウ~」


 勢いよく地面に爪を立てるキャロットとそれを応援する白亜。海竜たちも引き抜いた木々に魔法を掛け水分を抜き予定していた大きさに加工する褐色エルフたち。


 一時間後にはかつお節を燻すログハウス風の小屋と保管室が完成し歓声を上げ、午後からは予定通りに海のダンジョンへと向かうのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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