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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十六章 真夏の過ごし方
531/669

海~~~~



「海~~~~~~」


 大きな声で海だと揃って叫ぶラライとアイリーン。それを不思議そうな顔で見つめる一同。


「ふぅ、やっぱり海に来ると叫びたくなりますね」


「うん! こんなに大きな水溜まりにビックリ! 叫んじゃうよね!」


 テンションを上げるラライとアイリーンにクロは見なかった事にして走り寄って来るフェンリルたちを迎え入れ、小雪も一緒になって寄って来たフェンリルたちと走り回り仲間との合流を喜ぶ。


 ドラゴニュートたちとの親睦会を終えた翌日は二日酔いでダウンしたが、アイリーンのエクスヒールを受け回復したドラゴニュートたちはそのお手軽ヒールに驚くもお礼を言ってドランと共にゴブリンたちの村へと向かった。

 残ったメンバーはエルフェリーンと共にエルファーレが住む南国の島へと転移魔法で移動したのだ。


「うふふ、ラライちゃんも小雪ちゃんも嬉しそうですねぇ」


「そういうメリリも浮足立っていますね。中に水着を着ているのがバレバレですよ」


「はい、もちろんです! これでも泳ぎは得意ですし、脂肪燃焼には水泳が一番だとクロさまから教わりましたので今日は頑張ります!」


 同じメイド仲間のメルフェルンからの言葉にメリリはやる気を漲らせ、それなら私も頑張らなくてはと口に出さず闘志を燃やすメルフェルン。クロが倒れ数日が立ちアイリーンが食事を作るのだがどれも高カロリーでお腹が気になり始め、更にはフィロフィロがメルフェルンの二の腕に頬を擦り付けるようになり、これは乙女のピンチだと悟ったのである。


「海のダンジョンも気になるから行きたいけど、エルファーレさまだわ!」


 フェンリルに乗りこちらへと向かって来るエルファーレの姿を視界に入れ手を振るビスチェ。その後ろには褐色のエルフたちがフェンリルに乗り追い掛ける。


「み~ん~な~よく来たね~」


 フェンリルに乗り叫びながら近づくエルファーレ。それを見たラライがエルフェリーンとエルファーレを何往復も首を左右にして似ている事を不思議に思い、クロが世界に七人いるハイエルフの姉妹だと伝えると大きく手を振りフェンリルから降りたエルファーレを迎い入れる。


「よく来たね! エルフェリーンも少し大きくなった気がするよ!」


「あはははは、僕は変わらないけどエルファーレは少し小さくなったのかもね!」


 二人の棘のある会話にラライが心配しクロの裾を掴むが二人は抱き合ってキャッキャと笑い、遅れてやってきた褐色エルフたちは丁寧に頭を下げクロたちも再会を喜ぶ。


「急に押しかけてしまってすみません」


「いえいえ、エルファーレさまもお喜びになっております。我々はいつでも大歓迎です。それにクロさまには色々と聞きたい事がありまして……」


「聞きたい事ですか? 自分が答えられるものなら答えますが……」


 その言葉にぱっと表情を明るくする褐色エルフたち。クロの袖を掴んでいたラライも手を離しキョロキョロと視線を走らせる。


「実は海のダンジョンより様々な調味料が産出されるようになり、その扱い方、使用の仕方の助言を頂ければと……醤油や味噌といったものは使い方はそれなりに理解できたのですが、ソースやタバスコに黒酢などは扱ったことがなく、他にも薬草なのか野菜なのか判断が付かないものなどもあって……」


「海のダンジョンの話ね! ターベスト王国にある王都のダンジョンにも色々な調味料が産出しているわ!」


「カヌカ王国でもその話題になったのじゃ。クロに任せれば問題ないのじゃ」


 なぜかドヤ顔を披露するビスチェとロザリア。ラライもクロが頼られている事が嬉しいのか笑みを浮かべる。


「自分がダンジョン神さまに色々と提案したのが原因かもしれません……使い方は自分やアイリーンに聞いていただければ答えられると思うので、暇な時に一緒に料理しませんか?」


 その言葉に「宜しくお願い致します」と声を揃える褐色エルフたち。


「それと、初めて来た者もいますので紹介しますね」


 互いに自己紹介をして再会を喜び、ラライは緊張しながらも自己紹介を終えフェンリルの子供たちと戯れ、楽しい時間を過ごすのであった。






「これはニラですね。ニンニクや生姜もあるな。こっちはマイタケにナメコに、松茸もあるだと……」


「立派な松茸ですね~これがダンジョンで採れるとか、日本なら一獲千金じゃないですか!」


「日本ならな……松茸ご飯に土瓶蒸しに七輪で炙って、すき焼きもいいな……」


「マイタケは天ぷらにして、ニンニクと生姜でアヒージョでも作ります?」


「なめこのお味噌汁もいいかもな~」


 褐色エルフたちに相談された食材を前に料理を妄想するクロとアイリーン。料理を担当するマッチョの褐色エルフの男はメモを取りながら食材の名前を覚える姿は向上心の塊なのだろう。


「臭いキノコだと思っていましたが、クロさまたちにはご馳走なのですね」


 褐色エルフの女性が漏らした言葉に、クロは欧米人が松茸の香りは靴の革の臭いだとテレビで言っていた事を思い出し、異世界でもそうなのだろうと一人で納得しているとアイリーンが口を開く。


「松茸は希少価値ですからね~味はシメジやシイタケの方が……エリンギのバターソテーとかも……」


「昔は松茸が安くて椎茸が高級品だったらしいからな。どっちも好みがわかれるのも確かだが……臭いと思われているのなら松茸は使わずにキノコ系は天ぷらとお味噌汁だな。炊き込みご飯にしたら香りが前面に出るし天ぷらも食べた瞬間に臭く感じるからな」


「試しに作ってみて食べられないようなら私が買い取るというのはどうです? 商船との貿易もありますからサキュバニア帝国でも使える金貨とかで買い取りますし、私は松茸大好きです!」


 むふぅ~と鼻息荒く褐色エルフに詰め寄るアイリーン。詰め寄られた女性はコクコクと頭を立てに動かし、クロは昼食の準備に取り掛かる。


「ニンニクは薄くスライスして香りづけに使って、ショウガは摩り下ろして薬味に使って、天つゆは醤油と昆布に少量の砂糖で代用して、バブリーンさま?」


 広場で指示を出しながら手を動かしていたクロの前に青い紙の少女が数名現れ、その手にはロープで縛った多くの魚が握られている。


「クロ! 歓迎する~エルファーレから念話が飛んできたから仲間を連れて魚を集めてきたから、これも料理してくれよ~」


 以前、クロが魔力暴走した際に津波を打ち消し陰で尽力した海竜であるバブリーンが仲間を連れ新鮮な魚を大量に持ち込みクロは快く引き受けつつも、五名いる少女たちがみな人化できる海竜なのかと内心では驚いていた。


「クロの事はバブリーンから散々自慢されたからね。私たちにも頼むよ」


「魚以外にも海で採れる宝石の原石や沈没船から拝借した金や銀もあるからさ」


「足りないならもっと獲ってくるし」


「酒も頼むよ! 美味しいのがあるんだろ!」


 バブリーン以外の少女たちから酒樽からこぼれるほどの金銀財宝を送られ顔を引きつらせるクロ。近くにいたラライやシャロンにメリリは目を見開き驚き、メルフェルンは両目を黄金色に輝かせる。


「大昔に使われていた金貨がありますね。これとかもサキュバニア帝国でも換金が可能ですよ」


「このティアラとかも相当高価な代物よ」


「こっちのブレスレットは聖銀ミスリル製です! これはオリハルコン製の鏡!?」


 シャロンにキュアーゼが宝石入りの金貨やティアラを簡単に説明し、ルビーは製品よりも素材に注目し伝える。


「竜の鱗を使ったアクセサリーもありますね」


「でも食べられないのだ……」


「キュウキュウ……」


 白亜を抱いていたグワラもちゃっかりこの旅に参加しており目に付いたアクセサリーに目を輝かせ、キャロットと白亜は食べられないことが残念なのか肩を落とす。


「流石に貰いすぎな気が……」


 喜ぶ女性たちに申し訳ないと思いながらも大量の宝石を断る口実を考えるクロなのであった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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