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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十六章 真夏の過ごし方
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増えるドラゴニュート



「で、急にドラゴニュートが増えたと……これはクロ先輩にも手伝ってもらわないとですね~」


 錬金工房『草原の若葉』では七味たちと協力して大量の餃子を焼き、テーブルには申し訳なさそうに付いたレルゲンとフレシアにプレシアとグワラの姿があり、グワラの膝の上には白亜が座り体を横に揺らし嬉しさを表現するが、その横に座るキャロットは納得がいかないのか珍しく口を尖らせている、


「結構な量を用意しているがドラゴニュートはよく食べるからな。俺の記憶にある近所の餃子と、冷凍食品の餃子どっちがいい?」


 クロの問いに真剣に悩みながらも蓋を開け水気を飛ばすアイリーンは油を入れて皮を香ばしく焼き上げる工程に入る。


「そうですね……近所の中華屋さんの方と比べられると……冷凍でお願いします……」


「なら、七味たちも焼き方を教えるから協力してくれ。まずはアイリーンたちが作った餃子を焼いてからだな」


「ギギギギギ」


 片手を上げ了解したと伝える七味たちは二人一組になり餃子を焼き、糸を使い器用にフライパンを操り皿へと移す。


「うふふ、焼き上がりましたよ~」


 メリリが焼き上がった餃子を運び歓声に包まれるリビング。熱々の餃子を初めて見るドラゴニュートたちはゴタゴタもあってか昼食を取っておらず、そのビジュアルと香りに胃が動き出す。


「うわぁ~美味しそう! アイリーンお姉ちゃんと七味たちが作ったんだよね!」


 テンションを上げるラライにメリリが肯定し、年長者であるエルフェリーンが餃子を自身の皿に取ると一斉に手を出し、あっという間に皿から消える餃子たち。


「次が焼き上がりましたよ~」


 キッチン内の竈と外にある七味たち専用のキッチンもフル稼働し焼き上がる餃子。


「お前たちも手を出しなさい」


「熱いから気を付けるのじゃ」


 キャロライナからの勧めにおずおずと手を出すレルゲン。フレシアとプレシアも初めて見る餃子に戸惑っていたが熱々を口に入れ姉妹揃ってハフハフと熱い息を漏らしながらも表情が溶け、笑みを浮かべるキャロライナとグワラ。


 エルフェリーンからの誘いもありグワラが食事に誘われ、レルゲンたちもドランが強制的に誘い親睦会という形での夕食となったのである。夕食前には土下座してラライに謝罪し、謝罪されたラライはキョトンとしながらも「うん! じゃあ一緒に食べよう!」と笑みを浮かべ、誰もが拍子抜けしたほどである。


「オーガは寛大な者が多いけどラライはその上を行くね~」


「えへへ、一緒に食べるなら楽しい方がいいもん!」


 命を狙われたとは思えない表情を浮かべるラライに、レルゲンたちは深く謝罪し今に至っている。


「白亜さまもお熱いので注意してお食べ下さいね」


「キュウキュウ~」


 餃子を口にする白亜を見ながら目を潤ませるグワラ。


「グワラ、貴女もアイリーン殿の回復魔法で体調が回復したでしょうが、いっぱい食べて体力を取り戻しなさい。白亜さまがここでの暮らしでどのように過ごしていたか心配なのも理解できますが、貴女はまず食べて元気を取り戻しなさい」


「キュウキュウ!」


 キャロライナからの言葉に頷くグワラ。白亜も自身の皿を手に取り分けてある餃子を勧める。


「これでは食べなければ不敬ですね。白亜さまもありがとうございます。」


 箸が使えないこともありフォークで餃子を口にする。カリッとした底面の皮とモチッとした皮から溢れる肉汁と野菜のシャキッとした食感に旨味が口内に広がり尻尾を振るグワラ。

 白亜も同じように尻尾を振り新たな餃子を口に入れ、中に入るチーズに驚きながらも微笑みを浮かべる。


「うふふ、ライスとスープのおかわりもありますからね~」


 メリリの言葉に夢中で食べていたキャロットが手を上げ、レルゲンたちも申し訳なさそうに手を上げる。


「明日からは体力勝負。よく食べ体を休め、確りと働くのだぞ」


「はい、この度の件は深く反省しております……自分ができうる限りの事はさせていただきます」


「母を癒していただいた恩も……」


「こんなに美味しいと手が止まらないよ」


 プレシアはマイペースにライスにワンバンしながら食事を勧め呆れた表情を浮かべるレルゲンとフレシア。


「うんうん、若いうちはいっぱい失敗をするものさ~ドランも僕に喧嘩を売ってボコボコにされてからは優しくなったからね~」


「エルフェリーンさま!? そのことは今後の教育に支障が出るので……」


「レルゲンたちが可愛く見えるほどドランはヤンチャでしたからね……」


 焦るドランにキャロライナが追い打ちをかけるが新たな大皿が登場し歓声が上がる。


「こちらは揚げ餃子と水餃子になります。つけダレも色々用意してありますのでお好きなものをお試し下さい」


 餃子と一緒に現れたつけダレはポン酢やケチャップにゴマベースのタレ、酢コショウや某餃子の名店のタレなどが並び、更にアイリーンオリジナルのニラを刻んだタレも用意され各々が好きなように楽しむべく箸が躍る。


「米も美味いがこっちも試してみろ。これは日本と呼ばれる国が作る酒だ。ワシはゴブリンたちと協力してこの酒を再現しておるのだが、まだ納得がいくものが作れておらん。その手伝いをして欲しいのだ」


 この世界で作った日本酒をカップに注ぎ入れレルゲンたちに勧めるドラン。


「ワインのような色ではないのですね」


「無色透明だけど果実のような香りがします」


「あっ、美味しい……ワインの様な渋みがないです!」


 真っ先に口にしたプレシアが感想をいうと残った二人も口にし味を確かめ、ルビーやエルフェリーンにロザリアはウイスキーを開け炭酸水で割りハイボールを楽しむ。


「グワラも飲んでみてくれよ。ドランがゴブリンと協力して作った酒と、僕がお気に入りのウイスキーと呼ばれる香り高い酒を!」


「これはこれは、エルフェリーンさま、ありがとうございます。透明な酒と琥珀色が美しい酒ですね」


「樽の中で長い時を過ごすと色が付くんだって、クロが言っていたよ」


「ん? そうですね。樽で寝かせると風味が出るそうですよ。これは紫蘇餃子でこっちはキムチ餃子です。薄っすら赤い方がキムチで辛いのが苦手な方は気を付けて下さい」


 大皿を持って現れたクロがエルフェリーンの説明の補足をして新たな餃子をテーブルに置き去って行き、白亜は紫蘇餃子を皿に取るとグワラへと勧めエルフェリーンから受け取ったハイボールと共に口にして笑みを浮かべる。


「はじめて食べる料理ですがこんなにも多くの種類があるのですね。それにお酒の喉で弾ける感じと香りが癖になりそうです。どちらもとても美味で……白亜さまを任されたのも頷けるというものです……」


「キュウキュウ~」


「そうなのだ! クロの料理は凄いのだ! この前食べた骨付き肉も美味しかったのだ!」


「ああ、この前のマンガ肉だね! あれは美味しかったね! お肉なのに伸びるんだぜ~」


「伸びる? そのような肉があるのですか?」


「ふふふ、伸びるのはチーズが入っているからで、肉自体が伸びる訳じゃないわ」


「うむ、あれはあれで面白みもあって美味しかったのじゃ」


「クロにお願いしてくるのだ!」


 立ち上がりクロの元へと走るキャロット。それを応援する白亜。


「本当に楽しい食事ですね。白亜さまがこのように笑顔で声を上げる姿はあまり見たことがありませんでした……やはり、こちらで生活する事で成長した事もあるのですね……」


「そうだぜ~ただ、崇めるだけじゃ成長できないからね~白亜はこっちに来てからは飛ぶ練習もして自由にとは言わないまでも飛べるようになったからね~頑張る姿は僕たちも勇気を貰ったぜ~」


「クロ先輩は涙ぐんでましたよ!」


「それは誇張し過ぎだろ! でも、白亜は頑張ったよな!」


「キュウキュウ~」


 マンガ肉を魔力創造しながら白亜を褒め、褒められた白亜はドヤ顔をしていたが運ばれて来たマンガ肉に目を輝かせキャロットと一緒に大口で齧りつきチーズを伸ばすのであった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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