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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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十四階層とアイリーンの遠距離攻撃



 階段を下りると夜空には三日月が浮かび薄ぼんやりと光る岩場がと奥に見えるが、そのまわりには時折黒い影が踊る。

 風はないがぐっと気温が下がり息は白くなるほどではないが体を震わせるビスチェ。


「ここは相変わらず冷えるわね。ルビーは何か上着あるかしら? ないなら貸すわよ」


「ありがとうございます。大丈夫です」


「大丈夫じゃなくてあるかを聞いたの。ないなら素直に借りなさい」


 そういいながらアイテムボックスから厚手のコートを取り出して装備するビスチェ。もう一着をルビーに渡すとお礼をいって袖を通す。


「採取は安全を確認してから行うから時間が掛かるわ。それに大きな音を立てると遠くの魔物も引き寄せる事になるから注意が必要ね」


「ここいらはアイアンゴーレムの他にも岩蟹や岩蛇と呼ばれる固い甲殻を持つ魔物が多い。音もなく近づいて来る梟系の魔物は西側に多い。これから向かうのは東側だからそういった魔物は少ないけど夜空には注意だからね。

 それと光に集まる蛾には毒を持つものもいるから発見したら近づかれる前に僕かビスチェで倒す方がいいかな。アイリーンは糸を張って蛾を押さえてくれると嬉しいな」


 クロもアイテムボックスから鉄板入りのコートを取り出して袖を通しシールドを発動する。


「俺の後ろにいれば安全だと思う。急に岩を叩いて採取とかするなよ」


「はい、十三階層で理解した心算です。気をつけます!」


 先ほどのミスを挽回する心算で気合を入れるルビーに、クロも気合を入れ腰に装備するダガ―を一度抜き刃こぼれの有無を確かめ戻す。


≪近づかれる前に消す。蜘蛛の戦い方を見せてやります!≫


 アイリーンも気合が入っているのか普段は閉じている目を見開き先頭に立つと、細いセンサーの役割を持つ糸を飛ばし索敵を開始する。


「僕は蛾かこっちに来ない様に強めな光を遠くに放つね」


 天魔の杖を翳すとバスケットボール大の光玉が三つほど浮かび、エルフェリーンの杖から数百メートル離れた所に向かいはじめると草原がざわざわと音を立て一斉に飛び上がる。


 すぐ近くで草原だと思っていたものは蛾だったようで、黒い霧のように飛び立ち光玉を追いかける姿に顔を青くするルビーとクロ。


「あれだけいるのなら少し間引いておいた方が安全かもしれないね」


≪私がやりたいです!≫


 月明かりに光るアイリーンの糸文字にエルフェリーンは「それならお願いね」と軽く返すと、ビスチェとルビーは興味があるのか遠くの光りに群がる蛾を見つめる。


≪打ちますから私より前に出ないで下さいね≫


 宙に文字が浮かびアイリーンが目を見開き両手を前にすると、月に輝き視認できる魔力で生成した糸が一本のロープの様に絡み合い集まり、振り上げると力いっぱい振り下ろし鞭のように撓らせ戻す。


 パンッ!


 空気が弾ける音が響くと霧のように集まっていた蛾か四散し、続けざまに何度も打ち込み破裂音が響き渡るさまに、ビスチェとルビーは驚きの視線を向ける。


「風が破裂しているわ……」


「凄いですね……爆発しているように見えます……」


「あれは衝撃波が生まれているんだっけか、音速を超えるほど早く空気中を移動すると衝撃波が生まれて、鞭でも同じ事ができるけど……威力が段違いだな……」


 クロがいう通りに、鞭を振り、戻す瞬間には鞭の先は音速を超える衝撃波を放つ。これは鞭だけではなく音速ジェット機にも起こす事ができ、音速を超えた瞬間に衝撃波が生まれ大きな音が響き渡るのだ。


 光球を避けながら振り下ろされる魔糸の鞭に蛾は数を減らして行き、黒い綺麗が晴れると地面の岩場には多くの蛾が転がり光りの粒子へと四散し、鞭を器用に使い岩場に転がすと鞭のまわりには多くの魔石がくっつき、粘着液でも分泌しているかのように回収される。


≪強度や粘着力は蜘蛛の糸と同じ。魔力を四散させればこの通り≫


 魔石の付いた鞭はアイリーンの頭上で鞭を解除した事もあり降り注ぎ、頭を手で押さえて直撃を避けるが多くがその身に当たり情けない姿と顔を晒す。


「凄かったけど最後が締まらないな」


「でもでも、これは闇の魔石だね。純度はそれほど高くはないが受付嬢は喜ぶと思うよ。よくやったねアイリーン」


≪照れる!≫


 頭に直撃した事もあり手で摩りながらも魔糸で文字を浮かべるアイリーン。


「これってドロップアイテムだわ。口吻こうふんと呼ばれる物で蛾のくちばしね」


 黒く艶のあるストローのような物を数個拾い集めるビスチェ。エルフェリーンも拾い集めると十五本ほど集まりホクホク顔を浮かべる。


「この口吻は大型の魔物を狩る際の槍に括り付け毒を注入するのに便利なんだよ。他にも危険な薬物を入れておく入れ物に加工したり、吹き矢にも使われたりするね」


 三十センチほどの筒状の口吻は月明かりに照らされ黒い光沢が浮かび上がり綺麗なのだが、蛾の口と聞かされたクロは顔を顰める。対してルビーは興味があるのかひとつを受け取ると色々な角度から観察し口を開く。


「これを加工して指輪や腕輪にできたら黒が映えると……叩いて細くできたら煙草を吸うパイプに……金を入れて装飾すれば貴族に受けそうな物が作れ……」


「それはいい考えだね! あまり使い所のないドロップアイテムだけど新しい価値が生まれるね! 作ったら買わせてほしいな」


 笑顔を向けてくるエルフェリーンに「もちろんです!」と応えるルビー。


 そんな二人を見ながらもビスチェとアイリーンは警戒を続け、クロは女神のシールドを展開するとやや胸を盛った肖像画にした事で輝きを増し、行く先を白い光が照らす。


「この光は聖属性があるから魔物は嫌がるし、アンデット類には絶大な威力を発揮する優れ物ね。」


≪クロさんのチートと利便性が高くて羨ましいです≫


「さっきの攻撃を見ているこっちとしては逆だがな。アンデットに対しては強気にでれるが、ゴーレムとか俺一人で倒せると思わんし……」


「女神シールドでゴーレムを叩いてみたらどうかしら?」


「それこそ不敬じゃないか? シールドは俺から離れると強度は低くなるし、聖属性が弱点なゴーレムでもいれば勝てるがな……俺がゴーレムと戦うなら相手を転ばしてから」


「から?」


「逃げる! ゴーレムを転ばしたとしても仰向けに転ばない限り止めをさせる気がしない」


 苦笑いを浮かべるクロにビスチェが笑顔で口を開く。


「クロがゴーレムを倒せる秘策があるわ! フォークボアの時みたいにシールドを張って風の精霊に後押ししてもらえばいいのよ! 弓の様に飛んで行って体当たりね!」


 ドヤ顔をするビスチェにクロは一歩後退し、アイリーンは口に手を当て笑い出し、ルビーは呆れた顔を浮かべ、エルフェリーンはうんうんと頷く。


「怖いこといってないで先を急ごう。あっちの薄ら光っている所がヒカリゴケの群生地だからな。ルビーは足元に注意しろよ。岩蟹のハサミは強力だから足首ぐらいチョキンだからな」


「は、はい、気をつけます!」


 女神シールドを展開して先に歩きはじめるクロ。その後をルビーが進みビスチェとアイリーンが後に続き、最後尾をエルフェリーンが警戒しながら足を進める。


 目的地はすぐそこである。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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