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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十五章 カヌカ王国
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叱るシャロンといつもの風景



「フィロロロロロ」


 キュアーゼたちが制作したキャットタワーならぬグリフォンタワーの最上段で叫び声を上げるフィロフィロ。それを見上げ優しい笑みを浮かべるシャロンが両手を広げるとフィロフィロは滑空しながら旋回しその胸に飛び込み、優しくキャッチしたシャロンは上手に旋回した事を褒めながら優しく撫でる。


「フィロフィロはもう立派なグリフォンだねぇ」


「フィロロロ」


 喉を鳴らして喜ぶフィロフィロと優しい笑みを浮かべるシャロン。それを見ながら鼻息を荒くするメルフェルン。


「尊い……尊いです……シャロンさまが育て教え産んだフィロフィロを愛でる姿はなんと尊いのでしょう……」


 サキュバニア帝国のサキュバスにおいて、グリフォンの卵に魔力を注ぎ温めることは=その者が産んだと例えられ、より深い関係になれるとされている。

 事実、サキュバニア帝国でグリフォンライダーとしての活躍する貴族や兵士はその生涯をグリフォンと過ごし、人馬一体ならぬ人グリ一体となり戦場を駆けまわり国防に勤めている。


「シャロンさまが空を駆け勇ましく戦う姿を目にできる日も近いのですね……チッ!」


 うっとりとシャロンとフィロフィロのやり取りを見ながら鼻息を荒げるメルフェルンに水を差すよう出現する転移の門。思わず舌打ちをするのは純粋な乙女心なのだろう。


「帰ったよ~」


 エルフェリーンの声がリビングに響き反射的に「お帰りなさい!」と声を掛けるシャロン。続々と姿を現す一同の中にクロを見つけたシャロンはフィロフィロに向けていた物と同じ微笑みを浮かべ、更に加速する舌打ちの連打。


「鳥のモノマネ? それともフィロフィロちゃんを呼ぶ掛け声?」


 アイリーンが勘違いしている前を全力で駆け抜けるルビーは鍛冶場に向かい、これからアイアンアントの甲殻や牙を使って腕を振るうのだろう。


「私も薬草畑の様子を見てくるわ!」


 ビスチェが管理している薬草や葉野菜の菜園へ向かうのか立ち上がり外へ向かい、すれ違うように入って来た妖精たちがアイリーンへ突撃する。


「アイリーン! 大変! 仲間が増えたから手伝って!」


「新しい仲間にもアイリーンが作った服を着せてあげたい!」


「オシャレで涼しい服を作って!」


 頭のまわりをクルクルと飛びお願いする妖精たちに「任せて下さい!」と立ち上がるアイリーンと七味たち。一緒に外へと向かい興味があるのか小雪とロザリアが後を追う。


「キュウ……」


「私も眠いのだ!」


 目を擦る白亜は小さく鳴き声を上げ大きな欠伸をすると抱いていたキャロットもつられて大きな欠伸をするがその尻尾は元気にブンブンと横に振れ、口に出すほど眠気はないのだろうが白亜に合わせお昼をすることが嬉しいのだろう。白亜を抱っこしたまま部屋の隅に設置してあるハンモックに向かい抱いたまま横になる。


「あっという間にいつもの光景だな」


「うふふ、そうですね~私は残った皆さまにお茶を入れて参りますね~」


 クロの独り言に微笑みながらキッチンへ向かうメリリ。クロはソファーに腰を下ろしたエルフェリーンとドランにキュアーゼへアイテムボックスを使いお茶請けを用意する。


「おお、茶請けにはやっぱり最中もなかが一番じゃよ」


「あら、ドライフルーツを入れたチョコのバーも美味しかったわ」


「最中も美味しいけど、僕はイチゴの乗ったケーキが好きだな~」


「ケーキはみんなが戻って来たら一緒に食べましょう。師匠の好きなチョコチップ入りのしっとりしたクッキーもありますから」


「うん、これも美味しいよね~」


「シャロンとメルフェルンさんもどうぞ。何か食べたいお菓子があれば出しますが」


 クロの提案にフィロフィロがシャロンの腕から抜け出し滑空しながら床に降り、走りクロの足元へと辿り着くと鳴き声を上げ抱き上げ膝に乗せる。


「フィロフィロは何か食べたい物でもあるのか?」


「フィロロロロロ~」


 優しく撫でながら声を掛けると甘えた鳴き声を上げるフィロフィロ。


「クロさんに貰ったアレの味が忘れられないのかな?」


「あれはフェンフェンやファンファンも欲しがり少し与えたのですが一心不乱に舐め取っていましたね」


 シャロンとメルフェルンの言葉から思いついた商品をアイテムボックス方取り出すと、フィロフィロの瞳がロックオンし素早く嘴で奪い取りシャロンの元へと離れ呆然とするクロ。


「あはははは、クロはしてやられたね!」


「ぶははは、素早い動きであったのう」


「でも、教育には悪いわね。シャロンとメルフェルンの躾が悪いのかしら?」


 エルフェリーンとドランが笑い、キュアーゼは顎に手を当て冷たい視線をメルフェルンへと向け、視線を受けたメルフェルンは顔を青ざめる。


「めっ! クロさんから奪い取るような事をしちゃダメだよ!」


 鳥用のチューブ型のおやつを奪取したフィロフィロがシャロンの元へ向かうと手を腰に当てて怒るシャロンの姿があり、フィロフィロは怒られていることを理解しているのか嘴に咥えていたそれをポトリと落としで伏せをし、だらりと下がる尻尾。


「あら、ちゃんと怒れるし、フィロフィロも悪いことをしたと実感しているわ。やっぱりシャロンはグリフォンを育てるのに向いているわね」


 冷たい視線を飛ばしていたキュアーゼだったがシャロンが真剣に叱る事と叱られ反省するフィロフィロの姿に笑みを取り戻し、胸を抑えてホッとするメルフェルン。もし、シャロンに起こられても反省せずに勝手に開け食べ始めたら躾がなってないとキュアーゼにメルフェルンが叱られていただろう。


「フィロロ……」


「めっ! クロさんに返してきなさい!」


 怒るシャロンにフィロフィロは落としたそれを咥え直すとクロへ向け歩き、クロの足に縋りつき頬を擦り付ける。


「えっと、どうしたらいいですかね?」


「シャロンが怒っているのだからクロがあげたらダメよ。手に取ってアイテムボックスに入れなさい。あとで隠れてあげてもダメだからね」


 キュアーゼの言葉に心を鬼にしておやつを手にするクロ。フィロフィロはトボトボとシャロンの元へ帰り抱き上げられる。


「フィロフィロも物を取られたら悲しくなるだろ。フィロフィロが悲しくなることを仲間にしちゃ、めっ! だよ。ちゃんとクロさんにおやつを返せたのは偉かったね」


 腕の中でシュンとしているフィロフィロを優しく撫でるシャロン。


「うふふ、シャロンさまが叱り褒める姿は聖母のようですね~」


 お茶を配りながら話すメリリに自慢の弟が褒められた事が嬉しいのかキュアーゼが口を開く。


「幼い頃からシャロンはグリフォンたちに気に入られていたわ。シャロンが転んだ時はまわりにいるグリフォンたちが騒ぎながらも優しく寄り添ったりしたわね。部屋で泣いていた時も窓辺にグリフォンが集まったりした事もあったわ」


「ちょっ!? そんなに小さな頃の話をみんなの前でしないでっ!!」


 子供の頃の可愛い話を暴露されたシャロンが慌てるが、そっちの表情の方がシャロンらしくて落ち着くクロなのであった。






 これにて十五章は終了になります。 次章は夏になり……これから考えますので少し期間が開きますがお読みいただけたら嬉しいです。


 夏らしい話に多少のバトルを入れたいです


 

 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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