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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十五章 カヌカ王国
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ドワーフの国へ



 翌日、ターベスト王国の国王とカヌカ王国の王太子からの頼みもありドワーフたちの国であるドワナプラ王国へと転移魔法で向った一行。

 カヌカ王国と山を挟み隣接するドワナプラ王国はドワーフが住む事もあり鉄を叩く音が街の外にも聞こえ賑やかな雰囲気で包まれている。


「私もドワーフですけど……煩い街ですね……」


 入国はスムーズに進み街の中へ入った途端に鉄を打つ音が木霊し騒音という単語がぴったりだなと思うクロ。ルビーはターベスト王国で生まれたこともあってか騒音の凄さに驚きつつも、自由に鉄を打つ音に自身でも鍛冶がしたくなりうずうずと手を開いたり閉じたりと落ち着きがなくなる。


「この辺りは鍛冶工房が集中しておるのじゃ。鉄の受け渡しや武具の輸出には門が近い方が便利じゃろ」


 ここで作られた武器や防具は他国に輸出されることが多く、商人たちがすぐに買い取りに行ける街の入り口近くに鍛冶場が集中している。高い城壁で鉄を打つ音が反響しているが人が住むエリアには別の城壁があり、三重構造の城壁に囲まれ中心にはドワナプラ城が聳えているのだが城壁の高さもあってかまだ視界には入っていない。


「鍛冶エリアや商業エリアが一番外側で、内側に民が住む住居エリア、更に内側には城や貴族が住むエリアがあるのじゃ。貴族が住むエリアには許可証が必要になるが、アレンジールとケケルジールさまから紹介状を書いてもらっておるから通ることもできるじゃろう」


 ロザリアは話しながら王印が押された紹介状をヒラヒラと皆に見せる。


「頼まれた事を早く済ませて帰ろうぜ~」


「そうですね。アイテムボックスに入れっぱなしですし、怒っていないといいのですが……」


 城へと続く中央通りを進み住居エリアへ入ると先ほどまでの鉄を打つ音が小さくなり、これなら昼寝もできるだろうと思うクロ。

 石造りの街並みは美しく家によっては外壁に彫刻を施した家などもあり観光地にもなるだろう。


「やっとお城が見えましたよ~」


「うむ、我が知る限り最も美しく巨大でありながらも繊細な細工が施された城なのじゃ」


 まだ遠くに見える城を視界に入れロザリアが自慢するように語るドワナプラ城。まだ円錐型の監視塔と正殿の上部しか見えていないのだが、その大きさが予想できターベスト城やカヌカ城よりも大きく色合いも美しく、早く全貌を見たくなったアイリーンが糸を空に向け跳び上がる。


「うひゃ~凄いですね~お城もそうですが中庭に大きな池がありますよ~」


 糸を使い宙に浮きながら壮大なドワナプラ城を眺めるアイリーン。


「キュウキュウ!」


「白亜さまも観たいといっているのだ! ここは白亜さまの為に魔化して」


「やめような。街中にドラゴンが現れたらそれこそパニックになるからな」


 キャロットの肩を両手で掴み諭すクロ。


「そうだぞ。それをやってワシは酷く怒られたからのう」


「あったね~ドワーフたちは逃げまどい、城からは多くの兵士がやってきて大変だったからね~」


 懐かしむように話すエルフェリーンとドランに呆れた表情を見せる一同。キャロットだけは目を輝かせているが、クロから「魔化したらおやつ抜きだからな」と釘を刺され尻尾をだらりと下げ、アイリーンも地面に着地すると次の門を目指して足を進める。


「少し坂道になっていますね」


「そうだぜ~この街は山だったんだぜ~お城の池から定期的に水を流し、街の地下を走る下水を流しているんだ。この街の南にはスライムが多く湧く池があって、そこで下水を処理しているんだぜ~」


「うちの下水処理システムと同じ仕組みね」


「そうだぜ~この国を参考にしているからね~」


「だからあまり臭く感じないのですね」


「騒音と煙臭さはあるのじゃが、街独特の臭さはないのじゃ。トイレをくみ取る必要がないお陰なのじゃ」


 錬金工房『草原の若葉』も同じような下水処理を行っておりスライムが住む池へと下水が地下を流れている。他の町でもこういった方法が取られているが古くからある街ではそういった処理を行えず、魔法を使い定期的に臭いを飛ばしたりトイレをくみ取る専門の業者がいたりと対策を講じているが、街中には嫌な臭いが消えることはなく国の難題のひとつになっている。


「あの門を抜ければお城が見えるぜ~」


 高い壁には閉ざされている大きな門がありそこで警備するドワーフの兵士たちから訝し気な視線を向けられる一同。


「身成は良い様だが、許可証がない者は通すことはできん」


「ん? おい、もしかしてローゼタニアのロザリアさまでは?」


 数名で警備していた中年の兵士からロザリアの名が出て顔を青ざめる警告した兵士。


「うむ、その通りじゃが、ほれ、これを見るがよいのじゃ」


 プラプラしていた紹介状を渡すロザリアから両手で丁寧に受け取る中年兵士。


「カヌカ王の王印……確かに確認致しました。ここから先は貴族街になりますので不審な行動はなさらぬようお願い致します」


「うむ、不審な行動は先ほど止めたのじゃが、する心算もないのじゃ」


 キャロットの魔化を阻止したこともあり詳細は省いて口にするロザリア。アイリーンとビスチェが肩を揺らす。


「ああ、それとドズールに手早く会えるよう知らせて欲しいんだけど」


 エルフェリーンの言葉に眉間に深い皺を作るベテラン兵士。自分たちの国王に対して友達に会いに来たかのような物言いに嫌悪するのも仕方のないことだろう。


「手早くですか?」


「うん、ついこの前、ターベスト城で一緒に飲んだ仲だからね~ルーデシスとアレンジールから頼まれたんだ~」


 一緒に飲んだという話とターベスト王国の国王とカヌカ王の王太子の名を出し困惑するベテラン兵士。


「あの、要件を先に窺っても宜しいでしょうか?」


「ん? 話してもいい事なのかな?」


 エルフェリーンが後ろに佇むクロやロザリアへ視線を向ける。


「大丈夫だと思いますよ。大々的に伝えないとアレでしょうし、今出しますね」


「うむ、我も問題ないと思うのじゃ。どうせすぐに国中に広まる事なのじゃ」


 クロはアイテムボックスを立ち上げロザリアも騒動になる事を覚悟しながらも口を開く。


(私の出番ですわね! クロ! 真白薔薇の庭園Fを出しなさ……アイアンアントはどこですの?)


 武具の女神フランベルジュの大楯をアイテムボックスから取り出し、吹き出しに浮かぶ文字を読んだクロはカヌカ王国に来る前からアイテムボックスに入れていた事を思い出し簡単な説明をする。


(わ、私の活躍の場が……いえ、無事に済んだと喜べばいいのかしら?)


「盾の耐久値は体力に依存するとか聞いてしまうと、使う事はできないですよ……はぁ……」


 大きなため息を吐くクロに頷く一行。

 兵士たちは武具の女神フランベルジュの大楯を見つめ口をあんぐりと開け神聖な輝きを前にフリーズし、キャロットと白亜はまだ遠くに見えるお城を門の鉄格子が付いている窓から眺め三十秒ほどで飽きたのか「おやつが食べたいのだ!」とクロにお願いし、門番の兵士たちはまだしばらくフリーズしたままだろうとアイテムボックスの機能を再度立ち上げるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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