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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十五章 カヌカ王国
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謁見とルビーの魔道槌



「この度は深く感謝する……」


 カヌカ王国の謁見の間では国王陛下であるケケルジールが深く頭を下げ隣にいる王妃や王太子とその妻も頭を下げ、多くの貴族たちも例に漏れず頭を下げる。


「うむ、ちとやり過ぎてしまったが、アイアンアントは退治し終えたのう」


「うん、ちょっとだけやり過ぎたけどアイアンアントは退治したからね~」


 謁見の間では深く頭を下げる王族を相手に立ったまま自由に発言をする英雄ドランと、『草原の若葉』のリーダーであるエルフェリーンが苦笑いを浮かべ口を開き、頭を上げる王族と貴族たち。

 このような謁見は異種族という事もあるが、過去にもこの国の鉱山を救った英雄であるドランとその仲間であるエルフェリーンを立てての事であり、良い顔をしない貴族も普通は出るのだが、幼い頃から英雄として語り継がれているドランや『草原の若葉』の栄光を耳にしていることもあり、王族や貴族よりも身分が上であるという例外的な処置なのだろう。


「鉱山内の補強までして頂いたと聞いております」


「そうしないと危険だったからね~最深部まで補強したけど鉄や銀にミスリルが埋まっている場所は気を付けて掘ってくれよ~脆い岩盤もあるからね~それに、まだまだ多くの鉱石が眠っていると土精霊から聞いているから無理せずに採掘するんだぜ~」


「おお、これからも採掘作業に力を入れカヌカ王国の発展と民の為に努力させていただきます……」


「うむ、民あっての国じゃからのう……」


 腕組みをしたドランの姿に薄っすらと涙を流した国王は再度深く頭を下げるのであった。







 一方、クロたちは『揺れる尻尾』と『赤薔薇の騎士』たちを加えて城の中のサロンでお茶をしていた。本来なら一緒になって謁見の間へ招待されていたが、ビスチェが国王相手に「嫌よ!」と返しロザリアも「ドラン殿が出るのならそれで充分じゃろう」と口にし、次々と辞退したのである。

 結果としてドランとエルフェリーンが出席し、クロたちはエイプリル王女と共にサロンで寛いでいる。


「白亜さま、あ~ん」


「キュ~ン」


 エイプリル王女からあ~んの言葉に素直に口を開けチョコ菓子を口に入れる白亜。


「白亜ちゃんは可愛いっすね~」


「あら、ツバキだって可愛いですわ。撫で心地もアズリアといい勝負ですわよ」


 ツバキの隣に座り頭を撫でるエルタニア。右にツバキを座らせ左に妹であるアズリアが座り二人を撫でるエルタニアは多少だらしない顔をしており、それを羨ましそうな瞳で見つめるアイリーン。


「狐っ子と美少女に囲まれているだと……しかも、撫でているエルタニアさんも超が付く美人……クロ先輩! 世の中は不平等だと思いませんか?」


 クロへと不満をぶつけるアイリーンだったが、クロの膝に顔を乗せ撫でられている小雪の姿に「こっちはこっちで楽しんでやがる……」と更に不満を口にする。


「今回は小雪に助けられたからな~」


「わふっ!」


 村に出現したアイアンアントを巨大化した小雪が瞬殺し、多くの兵士や冒険者たちを助けたことを褒めるクロ。小雪は尻尾を優雅に揺らしながら撫でられ心地の良い時間を過ごす。


「アイアンアントを倒したと聞いた時は驚いたが、小雪も戦力として数えられるのじゃな」


「俺よりも遥かに強いと思いますよ」


「私よりもです……あの時はメリリさんに助けられましたし、その後も何度かアイアンアントが村に来ました……小雪ちゃんとメリリさんの助けがなければ危なかったです……」


 撫でられる小雪を見ながら魔道槌を地面にめり込ませ恐怖した事を思い出すルビー。


「うふふ、メイドとして当然のことをしたまでです。いつでも頼って下さいね~」


 微笑みを浮かべるメリリに『赤薔薇の騎士』に所属する元メイドの三名は苦笑いを浮かべる。


「『草原の若葉』の皆さんが謁見の間に招待されるのは理解できるっすけど、自分たちまで呼ばれた理由が……おまけっすよね?」


「そうですわね。アイアンアントやソルジャーを相手に苦戦しているようではあの場に立つ権利はありませんわ。アイアンアントソルジャーを相手にするにはパーティーメンバーで挑まなければ勝てませんし、巣にいるすべてのアイアンアントを倒すにはカヌカ王国のすべての兵士と冒険者を雇わなくては無理というもの……『草原の若葉』さま方が圧倒的に規格外なのですわ」


 エルタニアの言葉に頷く『揺れる尻尾』と『赤薔薇の騎士』たち。


「確かにまともに戦おうと思えば硬い甲殻と鋭い爪は脅威なのじゃ」


「関節を狙えば以外に脆くないですか?」


「うふふ、虫タイプの多くは固い甲殻を持っていますからね~関節に刃を通す技量と、素早くかわす技術を積めばすぐに対応できるようになりますね~」


「………………ですわね」


 それができたら苦労しないと思うエルタニア。クロもエルタニアたちと同意見なのか小雪を撫でる手を止めメリリに視線を向ける。


「一般人からしたら絶望でしかないな……」


 クロの言葉に頷く冒険者たち。


「私も一匹は倒せましたが……」


「最近のルビーは鍛冶ばかりで戦闘の腕が落ちているのよ! 帰ったら私が付きっきりで修行するわよ!」


 善意からの言葉なのだろうがルビーは顔色を青く変え、冒険者たちも暴風のビスチェからのお仕置きはきっと辛いものになるだろうと身を震わせる。


「そ、そこはお手柔らかにお願いします……折角手に入れたアイアンアントの牙や甲殻が打てないのは悲し過ぎます!」


 そっちかーと思う冒険者たち。クロも思わずツッコミを入れそうになるが冒険者たちがいることもあり心の中でツッコミを入れ、再度小雪を撫で始める。


「ルビーさんの戦闘スタイルは一撃必殺の当たれば勝ち作戦ですよね~敵が複数いる時は槌以外の武器の方が使い勝手がいいですよ」


「うう、そうですね……あの魔道槌は込めた魔力だけまわりの石を吸着させ重量を増やすのですが、重くなりすぎると地面までめり込んで……」


「魔力を四散させれば軽くなって引き抜けないのか?」


「はい……軽くなるのですが、吸着した石ごと地面にめり込んでいると槌に石が引っ掛かり抜けなくなります……前の石を飛ばす槌よりも失敗作です……」


 背を丸めて顔を伏せるルビー。イナゴ退治の時に使った魔道槌は自身が開発しバレーボールほどの岩を飛ばす予定だったが、魔力を込めた槌から出た岩はすぐ手前に落ちゴルフのように打ち飛ばすし使ったのだが本人にゴルフの才能がなく、右曲がりに飛び戦闘に使える代物ではなかったのである。


「次の魔道槌に期待だな」


「はい……次のアイディアもあるのですが……」


「それは気になるわね!」


「うむ、我も聞きたいのじゃ」


 ビスチェとロザリアから期待に満ちた視線を送られ顔を上げるルビー。


「槌に水属性を付与して叩いたところに熱々のお湯が降りかかる仕様や、槌の叩く部分に火属性を付与して焼き印のように攻撃したり、風属性を付与して逆の面から風を噴射させ叩く威力を増したり、闇属性を付与して槌のヘッド部分を黒い霧で隠して相手に見えづらくしたり、光属性を付与して良い感じに光って強そうに見せたり……ですかね?」


「最後に疑問を持つような武器はやめてくれ……」


「良い感じに光るだけの槌とか意味があると思えないわね……」


「夜に槌を振るうような事もあるかもしれんが、虫が集まりそうなのじゃ……」


「うふふ、風を噴射させる槌は同じように地面にめり込みそうですね~」


「楽しみですね~次を期待します!」


 ルビーの槌は迷走しているが、次の魔道槌に良い意味でも悪い意味でも期待するアイリーンなのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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