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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十五章 カヌカ王国
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クロのお陰



「す、凄いっす! アイアンアントが縦に斬られたっす!」


 ツバキたち『揺れる尻尾』はエルフェリーンたちに続きアイアンアントのまだ分家したばかりの巣の攻略に参加していた。参加といっても最後尾で警戒しながらエルフェリーンたちの活躍を見学しているのだがその戦い方は参考になるというレベルではなく、只々、無双という単語がぴったりの蹂躙であった。


「硬いアイアンアントの関節ではなく甲殻を力と魔力任せにぶった切るとか……」


「力の強いオーガやミノタウロスでも出来ることじゃねーよ……」


「うむ、高密度な魔力をあのバスターソードに流し纏わせておるのじゃ。魔力を得たことで黄金のような輝きを纏った一閃は眩しいのじゃ」


「あれは師匠の取って置きの一振りで斬れないものはないと豪語しているわ。刀身には多くのミスリルが使われ魔力伝導を効率化させ、ルーン文字で更に硬度や切れ味を増しているわ。あれならアマダンタイトや龍の鱗だって切り裂けるわよ」


 エルフェリーンの戦い方に驚愕する『揺れる尻尾』と非常識なエルフェリーンの戦い方を説明するロザリアとビスチェ。分家ということもありアイアンアントの姿も少なく戦闘自体はすぐに終わり、バスターソードの魔剣をアイテムボックスに入れ魔力回復ポーションを口にするエルフェリーン。


「ぷはぁ~少しは参考になったかな?」


 魔力回復ポーションを腰に手を当て飲み干したエルフェリーンにツバキは首を横に振り、ビスチェとロザリアは肩を揺らす。


「凄過ぎて何がどうなっているのかわからないっす!」


 リーダーの言葉に『揺れる尻尾』のパーティーメンバーたちが首を縦に振り困った顔をするエルフェリーン。


「師匠のアレは魔力で強引に切り裂いているから戦闘技術といったものじゃないわ」


「うむ、先ほどビスチェが見せた精霊魔法も同じなのじゃが……我も似たようなものなのじゃ……」


「ロザリアの影魔法はヴァンパイアが独自に進化させた魔術だからね~これならアイリーンやキュアーゼも連れて来て戦い方を見せた方が良かったかな~」


「アイリーンもキュアーゼも戦い方は個性的過ぎてダメね。糸を使った戦闘とドレインを使った接近戦はそれこそ種族固有なものね」


「アイリーンの戦い方は芸術的なのじゃ。あれを参考にするとなると魔力で糸を再現する事から覚えねばならんのじゃ。それに湾曲した剣の」


「白薔薇の庭園ね!」


「うむ、あれは独特の振り方をせねばならん。個性の塊なのじゃ」


「う~ん、そうなるとクロかルビーの戦い方になるけど……」


 腕組みをして首を捻るエルフェリーン。


「クロさんはどんな戦い方をするっすか?」


 目を輝かせながら疑問を口にするツバキ。


「クロの戦い方はシールドを使った防御と料理ね!」


 仁王立ちでドヤ顔を浮かべるビスチェ。


「シールドはわかるけど料理っすか? 確かに美味しかったっすけど……」


「クロの料理は神々さえも虜にするのよ! クロの本気の料理を口にすれば肉や魚が驚くほど美味しいの! お肉は口に入れると蕩けるし、お魚も消えちゃうの!」


「お寿司だね! あれは美味しかったね~」


「我は和牛を使ったステーキやローストビーフが食べたいのじゃ!」


 三名のその味を思い出しだらしない表情を浮かべるなかツバキが手を上げる。


「あ、あの、クロさんは死者のダンジョンを単独突破したクロさんっすか? それとも名前だけ一緒っすか?」


「クロは死者のダンジョンを単独で突破したのは僕が保証するぜ~それにクロはダンジョン神とも仲が良くて色々と相談され、醤油や味噌に料理箱といった宝をダンジョンから産出するように助言したんだぜ~この世界に新たな味が広まるきっかけを作った料理の英雄だぜ~」


 エルフェリーンは間違ったことは言っていないが、後半は今考えたことで、影の英雄と呼ばれているクロをあまり良く思わないエルフェリーンなりの気遣いだったのだろう。


「料理の英雄……クロさんにピッタリっす!」


「神々を虜にする料理の英雄……クロさんらしいな……」


「今朝の料理も美味しかったよな!」


「アタシらが手伝っても美味しいとか驚いたからね」


 エルフェリーンが今付けた料理の英雄という称号に納得の『揺れる尻尾』たち。


「私はアンデッド殺しとかクロに合うと思うけど……」


 ビスチェの呟きにアイリーンが口を開く。


「アンデッドはもう死んでおるのじゃが……」


「でもでも、ターベスト王国でネクロミノコンが使われた時のクロは大活躍だったよ! 王都の空を覆いつくすほどのレイスをほぼ一人で討伐したし、ネクロマンサーに止めを刺したのもクロだからね~あの時のクロは英雄そのものだったぜ~」


 満足そうな笑みを浮かべるエルフェリーン。


「聞いたことあるっす! ターベスト大国に大量のアンデットが襲撃したけどすぐに撃退しされたっす! エルフェリーンさまの活躍だと聞いていたっす!」


「僕だって活躍したぜ~でも、クロが一番活躍したね~女神シールドの前ではアンデットはすぐに浄化されるからね~」


「多くのレイス達が女神シールドに集まり浄化されるのは恐ろしくも暖かい光に包まれて幻想的だったわね! あんな光景を絵にして飾ればもっと教会に人が多く来るはずよ!」


「噂には聞いておったが、それほどまでなのじゃな……我はイナゴ退治の時のアレに驚いたのじゃ。アレほど驚くことは今後ないのじゃろう……」


 エルフェリーンとビスチェはターベスト王国でネクロマンサーが国家転覆を謀ったアンデット事件を思い出し、ロザリアはイナゴ退治の際に東京〇ワーを魔力召喚した時の事を思い出し、頭上に天高くそびえるそれを一生忘れないだろうと口にする。


「クロさんは凄いっすね!」


「そうだぜ~クロは凄いんだぜ~」


「クロの凄さといえばアイテムボックスも凄いわよね! いつでも温かい料理をたくさん入れているし、前に大きな商船を収納しちゃったわ! あれだけの収納サイズはクロぐらいね!」


「温かな料理をいつも出してくれるのは嬉しいのじゃ。前にターベスト王国の王都のダンジョン内で食べた温かい料理も美味しかったのじゃ」


「ダンジョン内で料理をしたっすか!?」


 驚きの声を上げるツバキ。ダンジョン内のセーフティーエリアといえども火を使った料理をする冒険者などはおらず、干し肉や硬いパンを齧るぐらいだろう。それなのに火を使い料理をして酒まで振舞い、翌日の朝にはお風呂まで提供したクロは、今までのダンジョン探索の常識を破天荒に破った者といえるだろう。


「シールドを使ってお風呂も入れてくれたわ! お湯は私が用意したけどね!」


「我もダンジョンで風呂に入った事は今でも忘れないのじゃ。クロの前ではダンジョンだろうが快適に過ごせるのじゃ」


「今回の討伐もそうっすね……食事が美味しいだけで頑張れるっす!」


「うんうん、そうだね~毎日の食事はクロが用意してくれているからね~僕たちが元気でいられるのはクロのお陰だぜ~」


「それはあるわね。クロのお陰だわ……」


「うむ、クロのお陰なのじゃ……ん? そういえば狩り勝負はどうなったのじゃ?」


 鉱山が崩壊し有耶無耶になっていた狩り勝負の事を思い出したロザリア。エルフェリーンとビスチェが目を見開き二人同時に「あっ!?」と口にすると、急ぎ自分が倒したアイアンアントの討伐部位の剥ぎ取りに掛る。


「ここでもクロの効果が出ておるのじゃな……」


 アイアンアントの討伐部位を回収し終えた一行はクロの下に向かい、誰が勝者か問い詰めるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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