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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十五章 カヌカ王国
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天界と召喚の宝珠



「あのバカ娘!!!」


 天界では女神ベステルの叫びが木霊し同席していた愛の女神フウリンと叡智の女神ウィキールがビクリと体を震わせる。


「圧縮した雷を何本もまとめ鉱山に落とす魔術……」


「あんなのを落とされては内部にある鉄が反応してぇ満遍なく高電圧が行き渡りぃアイアンアントは全滅ですぅ」


 鏡を使いエルフェリーンが使った雷の魔術を見ていた三柱はその威力に驚愕しながらも分析しながら口を開く。


「鉱山内の鉱物は鉄や銀にミスリルや魔鉄……今の雷の魔術の影響で磁石へ変わった鉄も多いだろう。それに魔力伝導の高いミスリルが詰まる地……アイアンアントの甲殻にも影響が出るだろう……」


「岩が融解していますぅ。隆起した山なのに火山のように煙を上げぇ、崩れましたねぇ」


「それよりも、ミスリルが埋まる鉱山に高威力の雷魔術を打ち込んだら地中深くにあるマナにも影響がでるじゃない! 私が前もってアイアンアントクイーンに吸収されないよう強固なシールドを張っていたから良かったものの、アレを何発も撃ち込まれたミスリルを通してマナの源流にまで影響が出るわっ! このバカ娘!」


 鏡を前に叫ぶ女神ベステル。愛の女神フウリンと叡智の女神ウィキールは今の説明に顔色を青く染める。


「ベステルさまぁ、もし、結界を通り越してマナの源流にぃ高威力の雷魔術が届いたらぁ」


「大爆発ね……この星の中央から魔力反応が核分裂のごとく広がり、連鎖的に世界各地のマナに伝われば岩盤で密封され、マナの放出口では排出が間に合わなくなりボーーーンと星ごと砕けるわ」


 この星の中央には濃いマナ核と呼ばれる物があり、そのまわりを外殻と呼ばれる液体金重属層が包み込み、更にそのまわりをマントルと呼ばれる層が包み、様々な層で形成されている。

 その中からマナが噴出し地上まで吹き出す道は龍脈と呼ばれ、この鉱山の中に住むアイアンアントクイーンが産卵場として使いマナを得ながら大きく強大な力を得ていたのだが、マナの噴出自体が世界のバグとして神々が制御し、結界を張りこの星を維持している。

 マナ自体はありふれたものでこの世界中に存在しているもので、人体の中にあるマナを使い魔法が使えるのだがその密度は薄く、龍脈を通るマナとは純度が明らかに濃度が異なるのである。

エルフェリーンのような魔力を多く持つ種族に産まれ、更に努力を使用し続けた者には濃い魔力が自然と宿り地脈ほどではないが濃い魔力を持つ者として存在し、一般的な魔力保有者の数十倍から数百倍をその身に宿している。が、マナの本流はそれとは比べ物にはならず、そこへ高威力の魔術が加わればどんなに強固に包もうが大きな魔力反応が起こり大爆発を起こすのである。


「おいおい、また魔力の高まりが!!」


 鏡に映ったエルフェリーンが天魔の杖を掲げ体から魔力が陽炎のように立ち昇り顔を真っ青にする叡智の女神ウィキール。


「あのバカ!!! また、高威力の魔術をぶっ放す気よ!」


「天を割って、これ以上は危険だと伝えた方が!」


「ダメよ! 前にクロへそれをして上から怒られたばかり……近くに神託が受けられる者がいれ、いたわ! ヴァル! 聞きなさい! 今すぐにエルフェリーンの魔術を止めなさい! 言葉で伝えても遅いからヴァルの力を使い相殺して見せなさい!」


 そう声を上げて手を払う仕草をする女神ベステル。すると、鏡に映っていた三等身のゆるキャラが光に包まれ姿を変え、美しい白銀の鎧をまとった天使へと変わり、自身の変化に戸惑いながらも魔力を高めながら天から杖を掲げるエルフェリーンへと全力で向うヴァル。


「あの姿はホーリーナイトというよりもワルキューレ……」


「天使の中でも戦闘に特化した姿ですぅ」


「生半可な力ではあのバカ娘を止めることはできないわ。アレが三発も落ちれば私が強化した結界をも貫くでしょうね……」


 額から大粒の汗が流す女神ベステルは左手に神力を集め、今まさに龍脈へ張った結界に干渉し更なる強化を施している。


「エルフェリーン殿!」


 叫び声を上げたヴァルは高速飛行で一直線にエルフェリーンへと向かい、魔化したドランの鼻先を掠め、キャロットの背の上をすれ違いながらもスピードを落とすことはなく、普段は布製のようなランスも神々しい光を放つ神器へと変わり、それに魔力を集め更なる輝きを放つ。


「あれは天使……ワルキューレが降臨したというのか……」


「変なのがいたのだ!」


 ドランとキャロットが視線を向けた時には高電圧の柱が地上へと降り注ぎ、それを迎い討つヴァル。手にしていたランスから光が溢れ高威力の光の筋が何本も発射され柱のような高電圧の雷を迎え打とう迎撃するが圧倒的なまでの高電圧を前に飲み込まれ、ヴァルは決意し両手を広げ小さく口を開く。


「主さま……」


 エルフェリーンから放たれた雷の魔術はヴァルへと直撃し、それを見ていた女神ベステルは口を開けたまま放心し、愛の女神フウリンは悲鳴を上げ、叡智の女神ウィキールは拳を握り締めて硬く歯を喰いしばる。


 雷の魔術を使用したエルフェリーンは放った後に天使の姿を確認し、大慌てで術をキャンセルしようと試みるが込めた魔力が多く多少威力が下がるも雷の柱は一瞬で降下し、顔を青くしながらやってしまった事に体を震わせる。


「あのワルキューレは僕の魔術を止めにきたのかも……あっ!?」


 落雷の轟音が響き視界が晴れたそこには落下する真っ黒な天使の姿があり、急ぎ救出へ向かうエルフェリーン。


「ドラン!」


「うむ」


 落雷で弾き飛ばされるように落下するヴァルを優しくキャッチしたドランは真っ黒に焦げた天使の姿に顔を歪め、まったく動かない天使を手にゆっくりと降下しながらマグマのように煮えたぎる地面のなかでも安全に着地ができる場所を探して足を付け、空から全力でこちらへ向かって来るエルフェリーンへと視線を向ける。


「アイリーンなら治せるかもしれないのだ!」


 魔化したまま叫ぶキャロットの声にコクリと頷くドラン。キャロットは急ぎアイリーンを探しに村へと翼をはためかせ、エルフェリーンがドランの手に着地をするとアイテムボックスから高位のポーションを取り出し振りかける。が、魔力反応が起こる事はなく黒く焦げた天使を濡らすだけであった。







「えっと、これで魔力を流せば……」


 クロが手にしているのは金と銀の蔦が白く美しい玉に絡みついた宝珠であり、魔化したドランと涙で顔を濡らしたエルフェリーンが村へと戻りクロへと抱きつきながら女神シールドの発動をお願いされ、女神ベステルからの説明とお説教を受けるエルフェリーン。

 そんな中で、以前渡したヴァルの宝珠を使えば、使い魔として復活できると知りアイテムボックス方取り出すと見た目が変わった宝珠に驚きながらも魔力を通すクロ。


「なっ!? ワルキューレが消えた!」


 ドランの手の上で焦げていたヴァルの姿が消え、新たに光に包まれ現れたヴァルは片膝を付きクロの前で頭を下げる。


「主さま、ヴァルはホーリーナイトからワルキューレへと進化を果たしました! 次こそはエルフェリーン殿の魔術だろうと防いで見せます!」


 三頭身から八頭身へバージョンアップした事よりもヴァルの復活にクロは赤くしていた瞳を更に赤く変え涙を流して抱きつき、それを見ていた仲間たちも同じように涙を流すのだが、冒険者や兵士たちは天使がクロに対して膝を付く姿に「使徒さま……」と口を開くのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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