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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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グリフォンタワーとサキュバスのスキル



「ピィーピィーピィー」


 教会へ戻り王都を出てから転移魔法で屋敷へ戻るとキャロットと白亜が走り出し、フィロフィロも鳴き声を上げ走り出し、シャロンも慌てて追い掛ける。それを笑顔で見つめながらお帰りの声を掛ける留守番組の三名と妖精たち。


「随分と大きなキャットタワーを作ったな」


 吹き抜けの誕生を見上げながらやって来たアイリーンへと声を掛けるクロ。


「私的には後ろの女神さまを模した盾の方が気になりますけど……」


「少し浮いています……」


 ルビーも興味を持ったのか観察するように見つめ誰も持っていないことに気が付き口を開く。


「これは話せば長くなるが――――」


 天界であった事とこれからの予定を説明するクロ。それを聞きながら目を輝かせるアイリーン。


「じゃあ、本物の武具の女神フランベルジュさまなのですか!?」


「拝みます! 拝んでも良いですよね!!」


 アイリーンは驚きの声を上げ、ルビーはその場に膝を付き両手を合わせる。


(拝むのは構わないわ! さあ、崇めなさい!)


 吹き出しの文字が偉そうな雰囲気を出しているが事実上神なので偉いのだろう。そんな事を思っているとキャットタワーを登る白亜にフィロフィロの姿があり楽しそうでいいなぁ~と現実逃避気味に見つめるクロ。その下ではキャロットを羽交い絞めするキュアーゼの姿があり「体重制限があって、あんたは禁止よ!」と叫んでいる。


「白亜とフィロフィロの遊び場ができて良かったね! 翼があれば落ちる前に滑空で安全に降りる事もできるから良い遊び場になるよ!」


「少し心配ですが卵から孵ってすぐに滑空したフィロフィロなら安全に使えると思います」

エルフェリーンとシャロンからお墨付きが貰えたが、製作者のひとりはキャロットを羽交い絞めにするのに忙しく、もう一人は膝を折り祈り聞いておらず、最後の一人は「今なら白薔薇の庭園で斬り伏せる事も可能かも」と物騒な事を口にしている。


「冗談でも神さまを斬ろうとか口にするなよ。それと盾なのに俺を盾にしないで下さい」


 クロの後ろに回り込む大盾の女神に声を掛け、吹き出しには(アイリーンはやりかねない)と文字が浮かぶ。


「神殺しという称号はカッコイイですよね~」


「そうか? 日本とは違って明確に神さまがいるこの世界だと、それこそ問題にしかならないと思うぞ」


「うっ、確かに……白薔薇の庭園のメンテナンスも受けてもらえないと思うと斬る事はできませんね~」


「はじめから斬る気もなかっただろ」


「そりゃそうですよ。白薔薇の庭園を授けて頂いた恩もありますし、メンテナンスに剣の使い方を教わりましたから……でも、その尻拭いをクロ先輩がするのはちょっと頭に来るといいますか……」


 地脈の管理せずに白薔薇の庭園を作り続けた武具の女神フランベルジュが原因でアイアンアントの巣が規格外に大きくなりアリも巨大化し、それをクロたちが討伐に行く事となった事実にアイリーンは怒っているのだろう。


「それは成り行きだしなぁ……たまたま天界へ行って女神ベステルさまが教えてくれたから判明しただけで、そうでなければそのまま戦いに向かっただけだろうしさ」


「そりゃそうでしょうが、危険ですよね? それとも何か対抗策が……ああ、その為の大楯!」


 大楯を指差し叫ぶアイリーン。


「こらこら、神さまを指差さない。そっちは女神さまの体力に依存するとか言われたから使わないよ。それよりもこれを使えばそれなりに効果があると女神ベステルさまのお墨付きをもらったからさ、安心とは言わないまでも対抗手段はあるからな」


 アイテムボックスから取り出した燻煙殺虫剤を手渡すクロ。


「前もイナゴ相手にスプレータイプを噴射していましたものね~日本企業に感謝ですね~」


「ああ、日本の大企業には何度も異世界で命を救われているよ。コンビニおにぎりで餓死からも免れたしな……」


「東京タワーにも救われましたものね~」


「あったな……あの時はロザリアさんに救われて……」


「うん? 呼んだかの?」


 グリフォンタワーを見上げていたロザリアが振り返り自身の話題に興味を持ったのだろう。


「いえ、呼んだ訳ではなくて……前に助けてもらった話をしていまして」


「ん? クロを助けた? 日々クロに助けられ生きておるのじゃが?」


 首を傾げるロザリアにプッと吹き出すアイリーン。


「毎日のクロ先輩の料理で生きていますからね~」


「いやいや、そうじゃないだろ。巨大イナゴの時ですよ。あのまま放置されたら俺は今頃この場に立ってないだろうし……」


「ああ、あの時は確かに助けたが、助けた内に入らんじゃろ。ああでもしなければ巨大イナゴから逃げることはできても多くの被害が出ておったのじゃ。それに我を頼ってくれたのは嬉しかったのじゃが」


 鼻を高くしながら発する言葉に再度アイリーンが笑い声を上げクロも肩を揺らすクロ。そこへフィロフィロの鳴き声が響きグリフォンタワーを見上げると、目の前には黄色い羽毛があり顔面でそれを受け止める。


「うぷっ……前にもこんな事があったな……」


「ピィー」


「クロさん! 大丈夫ですか!!」


 シャロンの声が響くなかクロは顔を覆うフィロフィロを引きはがすと目を細めて鳴き声を上げ、今度は腹部に衝撃が走り吹き飛ばされそうになりながらも手に持ったフィロフィロを近くへ駆け寄ってくるシャロンへパスして後ろに倒れ、それをフォローしようとアイリーンとロザリアが手を貸し巻き込まれる二人。


「キュウキュウ……」


「白亜さまはごめんと言っているのだ」


 背中にキュアーゼと付けたままクロの元へ走り現れたキャロットの言葉に、それは理解できるなと思うクロはお腹に上で謝る白亜と左右から折り重なっているアイリーンとロザリアに早く退いて欲しいと思いながらも痛みに耐えるのであった。





 アイアンアントの討伐準備に向けクロが燻煙殺虫剤を魔力創造で増産し、参加を希望した者たちが準備を進める。そんな中、参加を希望しなかったシャロンとメルフェルンはクロの背中に手を置き魔力を譲渡している。


「ああやって魔力を送るのは何だか凄い事している気がします~」


「そうかしら? サキュバスであれば幼い子供でも出来る事よ?」


 魔力譲渡を見つめているのはアイリーンとサキュバスのキュアーゼですでに準備を終え、暇を持て余しお茶を飲みながら雑談中である。


「そうだとしても戦闘において魔力供給しながら戦えるじゃないですか」


「それはあるわね。サキュバニア帝国が狙われないのは立地もあるけど、サキュバスという種族が魔力譲渡という特殊な力を持っているからかもしれないわね。元々サキュバスは攻撃魔法が苦手なのだけど身体強化は大得意だもの。グリフォンを神獣と崇め背に乗り空から奇襲し、グリフォンの魔力が尽きそうになったら騎乗する者が魔力を送り飛び続けるられるわ」


「それって騎乗する人が魔力回復役を飲み続ける限りグリフォンは飛び続けられる……

チートじゃないですか!!」


「チートという意味が分からないけど、グリフォンは魔力で飛ぶから良い組み合わせといえるわね。それに接近戦でも魔力が回復できるしね」


「接近戦で魔力が回復?」


 首を捻るアイリーン。


「ほら、手を出してみなさい」


 そういって差し出した手に自身の手を重ねるアイリーン。


「ひゃっ!? 何か吸われました!! 私の大切なものが吸われました!!」


 すぐに手を放して転がるようにソファーから逃げ出すアイリーン。肩を揺らして笑い声を上げるキュアーゼ。


「今のが魔力を吸い取るドレインと呼ばれる魔力譲渡の真逆なスキルよ。これは生まれ持ってサキュバスにあるスキルで、どんなに硬い鎧で守られていても魔力を吸い取ることができる便利な力よ。アイアンアントでも可能だろうし、私がシャロンやメルフェルンの分まで力になるわね」


 ウインクをしながら話すキュアーゼに同じ女性ながらドキリと心音を高めるアイリーン。


「こ、心強い味方の参戦に嬉しく思いますが、私も白薔薇の庭園でアイアンアントだろうが鋼鉄だろうが斬り伏せますので負けませんよ~」


 特にライバルという関係ではないがアイリーンはすぐ後ろに白薔薇の庭園を授けた武具の女神フランベルジュが浮いている事もあってかやる気を見せる。


「頑張るのは良いけど無理はするなよ~アイリーンには回復役をして欲しいからな~」


 二人の会話を聞いていたのか魔力創造しならが口にするクロ。


「それはそれ、これはこれ、です!」


 アイリーンは気合を入れアイアンアントの巣を攻略すべく気持ちを高ぶらせるのであった。




 これにて十四章は終了です。 次章はアイアンと攻略だと思います。少し間が空くかもしれませんがお待ちいただけると嬉しいです。


 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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