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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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アリ退治案と大楯女神



「フィロフィロちゃんは可愛いですねぇ~」


「本当に愛らしい……フェンリルも可愛く感じたがグリフォンも子がこんなにも愛らしいとは……驚きだ……」


 シャロンから駆け出したフィロフィロは手招きする愛の女神フウリンに抱き上げられ叡智の女神ウィキールも近くへと寄りその可愛らしさにやられ、天界はほんわかとした空気に包まれる。

ちなみに天界のこの場には王妃や王女は参加しておらず、教会に頻繁に通ったという事実があると貴族たちから勘繰られるという理由で泣く泣く参加を諦め、カヌカ王と話してアイアンアントの討伐はエルフェリーンが受け、三日後には転移魔法を使いカヌカ王国雪が決定した。


「それにしてもイナゴの次はアリ退治なのね」


「鉱山に巣食ったアイアンアントを退治するのは二度目だからね~ドランも呼んで楽に退治するよ~もしかしたらミスリルアントやアマダンアントもいるかもしれないね~前の時は実際にミスリルアントがいたし、レアな鉱山をいっぱい入手できたぜ~」


「あれは鉱山の深くにある地脈からの影響もあってクイーンアントが巨大化したからよ。今回は……」


 エルフェリーンと話をしながらお茶を飲む女神ベステルは目を閉じて口を閉ざす。


「今回は?」


「あははははは、今回の方が危険かもしれないわね。あなた達はどうしてこうも変な事に首を突っ込むのかしら……はぁ……アリたちが地脈にちょっかいを掛けているわ。巣に地脈のエネルギーを通してアイアンアントは魔鉄のような性質に変わっているわね。魔鉄アント? まあ、魔術を使うようなアリではないからそこは問題ないけど、クイーンやソルジャーアントは危険かもしれないわね」


 女神ベステルの言葉にビスチェやロザリアが眉を顰め、クロは殺虫剤が効けばいいが、と思案しながら魔力創造を使い記憶にあるアリ退治グッツを創造する。


「そんなに小さい殺虫剤や置き型のよりも煙が出る奴にしなさい。多少は効果があるし、爆発の危険がないわよ」


 指差しながら指摘する女神ベステルにクロは燻煙駆除剤を創造するとうんうんと頷く。


「入口を塞いで中で大量に使用すれば煙が行き渡るわ。二時間後に塞いだ場所に穴を開けて風の精霊にでもお願いして換気すれば一網打尽にできるかもしれないわね」


 女神ベステルからの助言に胸を撫で下ろすクロ。


「あの地脈の管轄は武具の女神フランベルジュに任せていたはずだけど……」


「フランには新しい白薔薇の庭園を自慢されたばかりですが、ふふ、この手触りは病みつきになるな」


 フィロフィロの背中を優しく撫でる叡智の女神ウィキール。愛の女神フウリンも慈愛に満ちた表情で喉を撫で続けている。


「はぁ……まったく、フランベルジュは……どんな罰を与えようかしら……」


 腕組みをして考え込む女神ベステルに顔を引き攣らせるクロ。ビスチェとロザリアはクロが出した殺虫剤を手に持ち読めない説明と睨めっこし、シャロンとメルフェルンはエルフェリーンとスナック菓子を口にしながらお茶を飲み、キャロットと白亜は料理の女神ソルティーラがお茶請けに持って来たアップルパイを口にしている。


「アイリーンは来ていないのかしら!?」


 タイミングが良いのか悪いのか、ドアを開け現れた武具の女神フランベルジュ。やってきた者たちをキョロキョロと確認しその場に膝を付き、ゆっくりと顔を上げクロへと視線を向ける。


「クロ、次は必ずアイリーンを連れてくるのですわ! 私と趣味が合うのはアイリーンぐらいなんだからねっ!」


 その言葉に、確かにツンデレ口調とかアイリーンが喜びそうだと思うクロ。


「白薔薇の庭園だって、もう三十本目の真白薔薇の庭園Fまで作り私室に飾って自慢したいのですわ!」


「へぇ~、随分と忙しそうにしていたけど、もう三十本も打ったのね……」


「もちろんですわ! 白薔薇の庭園改から更なる進化を遂げ、自立歩行機能も搭載し、もう剣というよりも剣士ですわ!」


 それはもう日本刀ではないのでは? と思うクロ。他の者たちはあまり興味がないのか、それとも女神ベステルの額に青筋が立っていることに気が付き見なかった事にしているのか、各自でお茶を飲みながら見ないふりをする一同。


「それでは少し聞かせて貰ってもいいかしら。カヌカ王国辺りの地脈の流れについてなのだけど」


 立ち上がり腕組みをする女神ベステルの言葉に顔色を変える武具の女神フランベルジュ。


「な、何かありまし……て?」


「何かあるのよ……」


 絞り出した言葉に眉を吊り上げる女神ベステルが口を開いて手を払う仕草をすると武具の女神フランベルジュはポンッと煙と共にその姿を変化させ一枚の大楯が出現する。


「これって……」


 クロが呟き女神ベステルが口角をニヤリと上げ口を開く。


「武具の女神フランベルジュの大楯といった所かしら。防御力はフランベルジュの体力に依存するわ。これを使っていいからアリ退治を頑張りなさい」


 そう口にすると手を払う仕草をし、クロの前に音もなく移動する盾となったフランベルジュ。その姿はクロが使う女神シールドを模しているのか等身大のフランベルジュの凹凸のある姿で、口をパクパクさせ吹き出しでは謝罪の言葉を繰り返している。


「使いたくないのですが……」


 クロの本音であった……


「でも、その盾は優秀よ。浮遊機能付きで重さを感じないし、武具の女神フランベルジュの効果範囲なら刃物に限り自動修復されるわよ。ぽっきり折れたら無理かもしれないけど刃こぼれぐらいなら治るわね。他にも錆防止や鍛冶が上達するアドバイスも付いてくるわよ」


「あの、本当にいらないです……神さまで攻撃を受けるとか不敬ですよ……」


「あら、それだと私の自画像で受けるのは不敬にあたらないのねぇ~へぇ~そうなのねぇ~死者の迷宮ではゾンビ相手に私の顔を飛ばし、スケルトン相手に私の顔で殴り、レイス相手に顔面を擦り付けていたのにねぇ~」


「その節はすみませんでした」


 場所も女神ベステルの私室であり床が畳なこともあってか、素早く土下座するクロ。


「と、クロへ説教してもしょうがないわね。それよりもアリ退治はこちらからもお願いするわ。報酬はその駄女神でもいいけど要らないと言われたし……」


 腕組みをして考え込む女神ベステル。


「それなら師匠が受け取りやすい物をお願いします。自分は欲しい物とかあまりないですし、自分で創造できますから」


「ん? 僕が欲しい物? う~ん………………」


 こちらもこちらで腕組みをして考え込み親子揃って同じポーズを取る姿に、顔を上げたクロは思わず微笑みを浮かべる。


「また今度考える事にするわね」


「僕も思いつかないよ~欲しい物って考えると思いつかないものだよね~あっ!? 七味たちが作ったハンモックをもうひとつ設置して欲しい!」


「それは七味たちに言って下さい。師匠が頼めばすぐにでも作ってくれると思いますよ」


「そうだね! シャロンとフィロフィロが寝ている姿を見ると羨ましく見えてね~クロも一緒に寝るかい?」


 悪戯っ子な顔で口にするエルフェリーンだったが、


「………………どう考えても一種に床へ頭をぶつける未来しか見えないです………………」


 一瞬固まったクロがそう答えると引きつった笑いを浮かべ、女神ベステルはお腹を抱えて笑い始め、ビスチェは口を尖らせ、シャロンは頬を染めながらも帰って来たフィロフィロを迎い受け優しく撫でる。


「じゃあ、そろそろ戻ろうか」


「そうですね。遠征の準備もありますし、早めに家に帰って夕食にしましょう」


 エルフェリーンも母親に笑われ早くこの場から離れたかったのだろう。提案しながら立ち上がりクロもそれに続き、他の者たちも席を立つ。キャロットはアップルパイを乗せた皿を持ち立ち上がり「ルビーに持って帰るのだ!」と叫び、クロがその場で魔力創造したケーキ用の箱へと移していると料理の女神ソルティーラと天使たちが後ろから現れ、その手には多くのケーキが乗った皿があり歓声を上げる乙女たち。


 料理の女神ソルティーラ特製のケーキを大量に受け取ったクロたちは地上へと戻るのであった。


 ただ、後ろから自動追尾してくる大楯も……





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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