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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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クロの凄さは強さじゃないのだ!



「フィロフィロは可愛いですね」


「そうだね。まだ生まれたばかりでグリフォン上手く飛べないけど、大きくなったら立派なグリフォンになると思うよ」


「ピィー」


 目を覚ましたフィロフィロを愛でるエイプリル王女。シャロンの膝の上で鳴き声を上げる姿にアリル王女とエイプリル王女が体を寄せ合い見つめ、王妃たちはクロがお見上げに持たせたワインを口にしながら近況を話し合っている。


「やはりカヌカ王国では鉄鉱石の採掘が必要なのですね」


「ええ、資源だけは豊富にありますが、逆に言えば資源だけしか……冬場は雪に閉ざされますし、目立った産業などもなく……」


「こちらでは最近、養鶏と呼ばれる方法で鳥を育て鳥肉と玉子を広く販売しようとしていますわ。他にもクロさまから頂いた野菜や果実のタネを試験的に植え育てています」


「葉野菜や根菜は上手く育っているわね。早く桃の木が大きくならないかしら」


「キャベツが歩かないといいがな……」


 王妃たちの会話にビスチェも混じり、クロが驚いたキャベツの逃走を思い出し口にする。


「あれは魔素が多い所で育てたからよ。蜜芋だってアルーに進化したじゃない」


「それにしても規格外だろ……はぁ……」


 蜜芋からアラクネ種として進化したアルーの存在を口にするビスチェ。エルフェリーンもその現象には詳しくはなく詳細は分からずじまいだが、近くに住む妖精たちやキラービーたちとも仲が良くクロの中では庭に住む不思議生物というカテゴリーに収まっている。


「ふぅ……このワインはとても美味しいですわね。赤くないだけでも珍しいのに黄金を思わせる色合いに甘みと香りが最高ですわ」


「白ワインと呼ばれるものですの。クロさまから譲っていただいたものですわ」


 自慢気な口調で第一王妃リゼザベールが説明するとクロへ視線を向けるファラン王妃。


「あの、先ほども少しだけ話に出ましたがダンジョンの単独突破という話は……もしかして死者の迷宮を突破された影の英雄さまですか?」


「はげの英雄? クロはフサフサよ」


 ビスチェの聞き間違いに肩を揺らす王妃たち。クロはそのまま話が流れればと思っているとシャロンが口を開く。


「影の英雄という話は耳にした事がないのであれですが、クロさんは単独で死者のダンジョンを突破した英雄です。オークの国でイナゴが大発生した時も大活躍でしたし、カイザール帝国でも相当な戦火を上げたと耳にしています」


「まあ、それは……カイザール帝国が滅び新たな国が生まれ貴族制度を廃止したと耳にしましたが……クロさまが……影の英雄と呼ばれるだけの事をしておられるのですね……」


 口元に手を当て驚くファラン王妃。クロは頬を引きつらせ、シャロンとビスチェはドヤ顔である。


「クロの凄さは強さじゃないのだ! お肉が美味しく焼けるのだ!」


「キュウキュウ~」


「マヨも忘れてもらっては困ります! マヨを使った料理はクロさまの右に出るものはいません! タルタルにタマゴサンドにサラダはもちろんのこと、パンにのせて焼くだけでも最高の一品に仕上げます! マヨは全てを救うのです! マヨを世界へ広めるべく養鶏を始めたのですから!」


 拳を握り締め語るハミル王女。アリル王女とエイプリル王女は演説が終わると拍手をし、王妃三名は若干引いていた。


「マヨとはどんな食べ物なのです?」


 拍手しながらマヨの存在を知らないエイプリル王女が首を傾げつつ口にし、クロはアイテムボックスからマヨの入ったボトルとタマゴサンドを取り出す。時間停止機能の付いたアイテムボックスが扱えるクロは普段から色々な料理を作り、いざという時の為に大量の料理や食材をストックしている。


「これがマヨなのですか?」


 透明な容器に入った乳白色のマヨを不思議そうに見つめるエイプリル王女。ファラン王妃も近くに寄りマヨを見つめる。


「これがマヨを使ったタマゴサンドです。どうぞご賞味下さい」


 クロがアイテムボックスから取り出したコンビニで売っているタマゴサンドを開封するハミル王女。エイプリル王女はそれを受け取り口は運び、ファラン王妃は手渡しに驚きながらも暗殺の心配は皆無だろうと口に運ぶ。


「美味しいです! すごく美味しいです!」


「本当ね。パンは柔らかいし酸味があるけどまろやかで、玉子を初めて食しましたがこれほど美味しいとは驚きですわ」


「美味しいのだ! でも、肉を入れたのも美味しいのだ!」


 キャロットもタマゴサンドを口にして期待した視線をクロへと向け、クロはアイテムボックスから自身で作ったカツサンドが盛られた皿を取り出す。すると、あちこちから手が伸び半分ほどになり急いで手を出すファラン王妃とエイプリル王女。


「こっちも美味しいです!」


「まだほんのり温かいわね。それにサクサクとした歯応えが楽しいし、味付けも……これは最近ダンジョンの宝箱に入っているウスターソースの味……」


「カヌカ王国にもダンジョンはあったものね。最近になって数多くの調味料がダンジョンから産出されターベスト大国の料理の幅が広がっているわ。屋台などでは揚げ物と呼ばれる料理が登場し、それを目当てに他国からやってくる商人や貴族もいるほどよ」


「ダンジョン内でも料理箱と呼ばれる宝箱が出現し、その場で温かい料理が食べられると冒険者たちが挙って攻略しているとも聞きました。私も一度でいいからダンジョンに入って食べてみたいものです」


 ダンジョン神の計らいでソースやマヨに醤油などの調味料に加え、宝箱がそのまま焼き肉のコンロになる物や鍋を楽しめる物まで作りダンジョンへ冒険者を呼び込む事に成功させ、それらはまだまだ高価に取引されているが価格も落ち着くだろう。


「ウスターソースと呼ばれる物とケチャップと呼ばれる物は献上され食しましたが、それらが使われているのですね」


「はい、本当はマスタードも入れたかったのですが辛いのとマスタードの風味が嫌いな者が多く入れていませんね。ああ、ダンジョンに連れて行くことはできませんが、しゃぶしゃぶの宝箱と焼き肉の宝箱なら手持ちにありますよ」


 その言葉に目を輝かせる三人の王妃たち。中でも第二王妃カミュールは目を輝かせ両手を合わせ喜んでいる。


「本当ですか!?」


「ちょっと待って! 料理箱は外に持ち出せないと聞いた事があるわ! 本当でしょうね!」


 訝し気な視線を向けるファラン王妃。


「はい、これはダンジョン神から味を見てくれと複数渡されていて、これですね。重っ!?」


 アイテムボックスのスキルを使い自身の膝の上に焼き肉の宝箱を出現させるクロ。宝箱というだけあって装飾された箱は重く、慌てて隣に座るビスチェと近くにいた執事がバランスを取り床へと下ろし蓋を開ける。


「ここだと煙がでるので外かバルコニーへ出てからですね」


 クロの言葉に固まるファラン王妃。本物の宝箱が目の前に登場し開封する前から固まっており、ダンジョン神という神から試食を任されたことに驚きフリーズしたのである。


「それならバルコニーへ運んでちょうだい。早く食べてみたいわ!」


 カミュール王妃の言葉に近衛騎士たちが動き出し宝箱を運び、メイドたちもバルコニーへイスやテーブルの用意に忙しく動き始め、王女三名はキャロットと白亜と共にバルコニーへ走るのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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