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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第三章 ダンジョン採取
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大爆発とポーションの価格



 食事を終えたクロたちは十一階層へと足を進め、朝日が固定されたフィールドエリアで待ち構えていた魔物との戦闘に入る。

 狼型の魔物が三体ほど大きな牙を見せ威嚇する中で先陣を切ったのはアイリーン。魔力で生成した糸を飛ばし一体目を絡み取り、エルフェリーンは天魔の杖を掲げ土属性の魔術を発動させると鋭い錐状の岩が二匹を貫く。


 アイリーンとエルフェリーンの活躍もあり襲ってくる狼型の魔物を蹴散らし魔石と毛皮を集めるクロ。


 狼の遠吠えに十匹ほど追加された狼型の魔物をビスチェが風の魔術で足止めし、風が止むと方だが動けなくなる狼たち。


≪魔糸の効果は抜群だ!≫


 ビスチェの風の魔術に合わせて魔力製の糸を放出したアイリーンはドヤ顔をし、エルフェリーンが土属性の魔術を使い拳大の岩が十匹の狼へと襲い止めとなり、魔石と毛皮が新たに現れクロが拾い集める。


「いまのはチームワークの勝利ね!」


≪冒険者ぽくて楽しかった!≫


「ほらほら、警戒を怠らないようにね」


「魔石を拾うまで頑張れよ……魔石とドロップアイテムは五分で地面に吸収されて無くなるんだからな」


 魔石を先に拾い集め残りの毛皮をアイテムボックスへと入れて行くクロ。


「クロは後ろで見張っていただけでしょ!」


≪ポーターさん、頑張れ!≫


「僕は手伝うからねぇ~あとで美味しいウイスキーを出してもらうんだ~」


 エルフェリーンはクロの横に並び毛皮を拾い、クンクンと獣臭さを確認するとクロへと手渡す。


「ダンジョン内でお酒を飲むとか非常識な事を考えてないですよね?」


 毛皮を手渡してきたエルフェリーンは笑顔で何も話さない。


「私も手伝うからって、もう広い終わっているわね」


≪私はお酒よりもアイスが食べたい。少しお高いカップアイスを希望≫


「これでよしっと、先を急ぎましょうか」


 手伝わなかったビスチェとアイリーンを軽く無視して足を進めるクロにビスチェとアイリーンが走り出し、エルフェリーンは辺りを警戒しながらも風の魔術を使い自身の体を宙へと浮かせる。


「クロ! この先で戦闘をしている子がいるよ! 少し劣勢、」


 エルフェリーンが叫びを上げた所で轟音が響き慌ててシールドを発動するクロ。


「うあわぁぁぁ」


 シールドを轟音と暴風が襲い宙に浮いていたエルフェリーンが後方に飛ばされ、慌ててクロはシールドを飛ばすが暴風に阻まれ明後日の方角へ飛んで行くシールド。


「ふう、死ぬかと思ったぜ~」


 気に引っ掛かり難を逃れたエルフェリーンが顔を上げクロたちへと手を振り、ホッとするクロ。ビスチェとアイリーンは二人で顔を見合わせると原因を確認に動き出す。


「アイリーンは糸で索敵。私は精霊に頼んでみるから!」


≪無理はしないでね。クロは師匠をお願いします≫


 二人が走り出しクロはエルフェリーンが木から降りやすいようにシールドを階段状に設置する。

 背中のリュックがもぞもぞ動き出し顔を出す白亜は辺りをキョロキョロと眺めると大きな欠伸してリュックに頭を沈め二度寝に入り、それをシールドの階段から眺めていたエルフェリーンが笑いながらも視界に入れ、遠目に見える大きなキノコ雲に嫌な予感を覚える。


「いったい何があったのですかね」


「大爆発の魔術はあるにはあるけど……そんな膨大な魔術を使えばマナのざわつきがこっちまで流れてくるはず……魔術じゃなかったとしたら精霊か、ダンジョンの怒り?」


「ビスチェたちが走って行きましたが」


「それは大丈夫だろう。あんな爆発が連続で起こることはないと思うし……僕たちも急ごうか」


「はい!」


 クロとエルフェリーンが走り出し二人を追うと岩がゴロゴロと転がり、大きなクレーターが視界に入り、下半身が吹き飛んだ腰から上のストーンゴーレムがガクガクと痙攣を繰り返しゆっくりと光りの粒子へと変わる。

 その近くではビスチェがポーションの瓶を傾けドバドバと血まみれの少女へと振りかけている姿が見え、アイリーンは辺りを警戒しながらもクロたちに気が付き手招きをする。


≪ドワーフの少女が倒れてた! 血がいっぱいで危険!≫


 アイリーンの魔糸での報告に急いで救護へと向かうクロとエルフェリーン。二人を待ちながらも辺りへの警戒を続けるアイリーンは細い糸を飛ばし索敵を行う。


「大丈夫か!」


「私はまったく問題ないけど、このドワーフの子は少しヤバいかも。中途半端な回復魔法だと逆に命が危ないから上級のポーションか、ポーションで様子を見ながら休ませるかだけど……」


 ビスチェが先ほど使ったポーションはお手頃の下級ポーションである。手には上級のポーションもあるのだがそれを使えば気を失っているドワーフの少女に多額の請求をしなくてはならないのだ。

 ビスチェたちは錬金術師であり無償でポーションを与えてしまうと、他の錬金術師や回復役の冒険者や教会から仕事を取ったと睨まれる事になりかねないのである。


「はぁ……ビスチェが躊躇うのも解るけど……装備を見る限りは駆け出しに毛が生えた程度の冒険者かな……クロ! 血増ポーションと、あっちの中級ポーションを出してくれ」


「おう!」


 アイテムボックスのスキルを使い赤黒いポーションと光りを帯びた中級ポーションを取り出すクロ。それを見たビスチェは「それがあったか!」と表情を明るくする。


「外傷はなくてもあの爆発だったからね。体の内部と骨がバラバラな可能性がある。どう吹き飛ばされたかも解らないし、脳へのダメージがあればそれこそだからね」


 エルフェリーンは口に薄ら輝く中級ポーションを含むとドワーフの少女の口と合わせ強引にポーションを流し込む。すると魔力反応が起き少女の体が薄らと発光し、続けて血増ポーションを口に含むと生臭い香りに眉を顰めるが同じ様に口を合わせ流し込む。


「ク~ロ~、口直しに何か爽やかな味の飲み物をちょうだい!」


 魔力創造でレモンの炭酸水を作り出したクロはキャップを開けてエルフェリーンに手渡すと、顔を歪めたまま口を濯ぐと笑顔を取り戻し、意識を取り戻すドワーフの少女。


「あれ? 私……助かった……ん? 貴女たちは? えっ!? 何この血まみれ……それに生臭~~~い」


「それだけ元気なら問題ないね。下級ポーションと中級ポーションに血増ポーションを使ったから……銀貨で百と二枚でいいや。下級ポーション代はおまけにしておくよ」


 頬笑みながら治療代を請求するエルフェリーンに上半身を起こしたドワーフの少女は顔を青くする。


「そ、そんなに高い料金は払え……キュウー」


 無理して起き上がった為か、それともあまりの料金の高さの為か、体を横に倒しながら気を失うドワーフの少女。慌ててクロが体を支えると手にはドロットした血がつき、クロも顔色を青く変えながらもシールドを発生させそこへ横たわらせる。


「呼吸も落ち着いているから問題なさそうだね。ふぅ~」


「それにしても中級ポーションで助かるとは本当に運がいいわね。見つけたのが私たちじゃなかったら膨大な借金を背負っていたわよ。この子……」


≪中級ポーション? あれは上級では?≫


 アイリーンの魔糸にエルフェリーンが口を開く。


「あれは特別な中級ポーションなんだよ。クロの女神シールドを使ったアイテムボックスで生成したポーションで、元は中級ポーションなんだけど効果は上級ポーション並みだね。ある意味反則ポーションだよ」


≪凄い……やっぱりクロ先輩はチート持ち≫


「チートいうなよ……」


 がっくりと肩を落としながらもシールドに乗せたドワーフの少女を落とさない様に移動し、安全な場所へと運ぶ『草原の若葉』たちだった。





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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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[気になる点] アイリーンは何故急にクロを先輩呼びしだしたんでしょう?
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