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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第十四章 シャロンの子育て日記
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タンカレーとメルフェルンの嫉妬



 タンカレーを食べながら第一王妃リゼザベールと王女アリルはエルフェリーンへレーシングカートをターベスト王国でも行いたいというお願いを快く引き受けた。


「ああ、でもエルカジールにもカートをあげたからサマムーンのカジノでもレースを行っていると思うぜ~エルカジールの事だからもうサーキットを作り終えカートも増やしているだろうね~」


 姉妹のハイエルフであるエルカジールはメリリの故郷であるサマムーン王国で巨大なカジノを経営しておりギャンブルの目玉としてカートを買い取りたいとエルフェリーンへ頼み込み、カートを受け取りクロも引き抜こうとしたことでエルフェリーンの転移魔法で強制的に送り返されたのだ。


「それではサマムーン王国とターベスト王国でレースを同時開催すれば盛り上がること間違いなしですわね!」


「あはははは、間違いないね! 国同士でレースをすればそれこそ盛り上がるぜ~レースを制すれば新たな英雄の誕生だよ~」


 前向きに捉えたリゼザベールの言葉にエルフェリーンは笑いながら新たな英雄が生まれると先を見る。


「その時は私も白亜さまと参加したいのだ!」


「キュウキュウ~」


 キャロットの宣言にアリル王女は目を輝かせて喜ぶがエルフェリーンとリゼザベール王妃は困り顔を浮かべ、ハミル王女は甘口のカレーにこっそりマヨをかけ口に運び新たなマリアージュの発見に目を見開く。


「私は大発見をしてしまいました! マヨはカレーにかけても美味しいのです!」


「ハミル、それは太るわ。野菜に付けるぐらいにして方が体に良いわよ」


 立ち上がり叫ぶハミル王女へビスチェが助言し専属メイドたちも無言で頷き中辛のカレーを口に入れ表情を溶かす。


「そうなると、こちらで作るのが難しい動力源のギアとタイヤを作り、街の鍛冶屋にフレームや車体を任せてはどうですか? 鍛冶屋なら叔父を紹介しますし、フレームなどは比較的簡単ですから設計図さえ渡せば作ってくれると思います」


「魔力を込めると回転するギアは錬金術を使うからね~向こうでも作ることができるけど魔石は質が良い物を使わないとパワーが出ないからね~」


「料金は私が必ず用意して見せますので何卒宜しくお願い致します」


 ルビーとエルフェリーンに頭を下げる王妃リゼザベール。横に座るアリル王女も頭を下げ第三王妃カミュールも頭を下げつつカレーのおかわりをどうしようか悩み、キャロットが五杯目のおかわりの声を上げ素早く顔を上げると「私も宜しいでしょうか」とクロへ声を掛ける。


「気に入っていただけたのなら良かったです」


「はい、中に入れられているお肉が口の中で蕩けます。このようなお肉は初めてです。朝食で頂いた果実も驚くほどでしたが、こちらのカレー想像をはるかに超える味でとても美味しいです」


「前にもカレーは王宮で頂きましたが、それ以上ですわね」


「あの時はカツカレーをクロが作ってくれました! あれも美味しかったです!」


 カミュールとリゼザベールにアリルがタンカレーの味を絶賛し、クロは喜びながらキャロットとカミュールのおかわりを盛ると運びながらもシャロンがフィロフィロに軟らかく煮たタンを崩しながら与える姿を視界に入れ、運び終えるとそちらへ足を運ぶ。


「代わるぞ。温かいうちに食べてくれ」


「はい、ありがとうございます。フィロフィロはクロさんからでも大丈夫だよね?」


「ピィー」


 ピンセットを受け取ったクロへ鳴き声を上げ大きく口を開くフィロフィロ。軟らかく煮たタンはピンセットで軽く押し当てるだけで解れ、それを摘み口へと運ぶと勢いよく飲み込む。


「フィロフィロはクロさんにも心を許しているようですね」


 カレーを口にし表情を蕩けさせたシャロンはクロとフィロフィロのやり取りを目にしながら口を開く。


「フィロフィロとは昨晩のうちに仲良くなったからな~ほら次だぞ~」


「ピィピィ」


 泣き声を上げ大きく口を開くフィロフィロ。その姿を凝視しながら目を血走らせるメルフェルン。ただ、凝視しながらもスプーンを動かしカレーを口元へと運ぶ。


「コースは土を硬く固めればいいだけだけど、そろそろ雨季に入るから作るにしても水捌けよくしないとダメだぜ~今日はビスチェが風の精霊にお願いして路面を乾かしたけどコースの下に排水させる筒や砂利を入れて水捌けを常によくしておけば管理が楽だからね~」


「その辺りは大丈夫です。王家の馬車を保管する場所などに使われている技術なので土を入れ替えます。それよりも、あのブルーの四角い衝撃吸収材の方が気になって……」


 コースのカーブや直線に設置されているショックアブソーバーを指差す王妃リゼザベール。


「あれはクロが用意したからね~柔らかい素材を置くだけで大丈夫だと思うぜ~カートの故障でブレーキが利かなかったり勢いよくコースアウトしたりした時は危険だからね~」


「確かにあの速さで衝突したら危険ですね……」


 顔色を青く染める王妃カミュール。


「アリルとハミルは音の精霊が守ってくれるわよ。今も二人の上を交互に行き来してるわ」


 ビスチェが二人の上で揺らめきながら行き来している音の精霊を指差すとハミルとアリルも指差す方へ視線を向けるが二人には見ることができず、視線をビスチェへと向ける。


「私も見てみたいです!」


「私も一度でいいから精霊さまを……」


「それは難しいかもしれないわね。精霊を見るには生まれ持った才能と多くの魔力がいるわ。契約していてもその姿を見ることができないのが普通なのよ」


 その言葉にクロが振り返りビスチェへ視線を向け、以前精霊が見えた時の事を思い出し魔力過多になった事や調子が良い時に精霊が見える現状を思案していると、フィロフィロがピンセットに嘴を立て突きクロは「ごめん、ごめん」といいながら解した肉を摘み口元へと運ぶ。


「うふふ、とても美味しいですねぇ。早朝に帰ったリンシャンたちにも食べさせてあげたかったです」


 四杯目のカレーを平らげたメリリはスッと立ち上がりおかわりに向かう。その姿にメルフェルンはリンシャンの分も貴女食べてしまうでしょうに、と思いながらカレーを食べ終えるとクロへ視線を向けて口を開く。


「クロさまも食事がまだでしょう。私が代わりますね」


 手を出しピンセットを寄こせと言わんばかりの視線を向けるメルフェルンにクロはピンセットを素直に渡し、クロは自身のカレーを取りに動く。


「ささ、フィロフィロちゃん、あ~んですよ~」


 優しく声を掛けピンセットで肉を摘まむが、フィロフィロはクロを視線で追いかけて目の前の肉と声を無視しテーブルを走り出す。


「ちょっ!? フィロフィロ!」


 クロが大きな御櫃おひつの置いてある場所へ向かうが鳴きながら追いかけるフィロフィロに気が付き手を差し伸べるとその手に頬ずりをし、食事を与えると代わったメルフェルンは両眉をオーガの如き吊り上げクロを睨みつける。


「ぐぬぬぬぬ、フィロフィロまで私から取り上げるというのですか……」


 歯を喰いしばりながら口にするメルフェルンにクロは申し訳ないと思いながらもフィロフィロを抱き上げ食事を再開させようと戻るが、すぐに寝息が聞こえ抱き締めたまま近くの椅子に腰を下ろす。


「クロさんにも懐いたようで良かったです。僕一人では大変な時が多いので手伝って下さい」


「ああ、俺で良かったら手伝うが、その、メルフェルンさんにも協力してもらおうな」


「あら、私だって手伝うわよ。あむあむ、これ美味しいわね」


 鬼の形相をするメルフェルン。その横でマイペースにタンカレーを口にするキュアーゼ。


「私も微力ながら手伝いますので、いつでも御声がけ下さい」


 平静を装いそう口にするとカレーのおかわりへ向かうメルフェルン。これから焼食いが始まるのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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